第6話 放課後クロスオーバー その6
小学五年生の頃、ホームルームで校内美化活動の当番を決めることになった。
議事進行は美化委員の長田由美。
快活で女子グループのリーダー格だった。
しかし、男子たちはこの当番制度に真っ向から反対する。
美化委員だけがやればいい、オレたちはやらねえ、と。
それはひどいと騒ぐ女子に対しても“だったら女だけでやればいい”と。
収拾の付かないホームルームをまとめるため、担任が提案した。
じゃあとりあえず採決を取ろう、と。
男女の数はそれぞれ十八人ずつ。
結果は十七対十九で男子軍が敗れ、クラス全員が当番に参加することとなった。
男子軍の裏切り者はすぐに判明した。
珪斗だった。
とはいえ、珪斗自身は女子に配慮したわけではない、長田由美に配慮したわけでもない。
「児童会の活動なんだから全員でやるのが当たり前だろ。それを自分たちがめんどくさいからといって怒鳴り散らして逃げるのはおかしくね?」
そんな当たり前の理由だが、小学男子に通用するわけもなかった。
それどころか珪斗の正論は“珪斗から長田由美に対する好意の表れ”と曲解され、その日以降、ふたりは冷やかしの対象になった。
いつもなら男子軍に対して一枚岩の女子軍だったが、色恋沙汰となると事情は変わる。
同性間の仲間意識よりも好奇心が勝つのはこの年頃においては責められることではない。
そのため、長田由美は女子からも孤立するはめになった。
そして、数日後、それまでずっと冷やかしを無視してきた長田由美がついにぶち切れた。
切れた相手はもちろん男子軍のみならず女子軍までも――ではなく、珪斗ただひとりに対して、だった。
長田由美は泣きながら珪斗を詰った。
「あの日のホームルームで珪斗が私の味方をしたことがすべての発端だった。あんたが余計なことをしなければ私がこんなイヤな思いをすることもなかったのに」
というわけで、珪斗は“どういう形であれ自分が女子と絡むのは相手に迷惑をかける行為なのだ”ということをこの一件から学んだ。
そんな珪斗である。
軽い気持ちでしたためたノートが珊瑚を傷つけたと言われても否定する自信などあろうはずもない。
珪斗はぼんやりと魔法陣に浮かぶ光の玉――真珠の意識――を見ながら長田由美の泣き顔を思い出す。
珪斗にしてみればまさか自分の行動で長田由美が傷つくとは夢にも思わなかった。
だから、同じように珪斗の意思とは無関係に珊瑚が傷ついたとしても、それはありうる話なのだ。
ましてや、珊瑚と近しい立場の真珠がそう言っているのだからなおさらだ。
「理解したようだな。もういいか?」
帰りたがっているような真珠の意識に虎目が答える。
「ああ、ありがとう」
虎目が答えると光が消えた。
「さて、珊瑚の方だが……どうしたものか」
砂地の魔法陣をざっざっと撫でて消しながらつぶやく虎目に珪斗が告げる。
「謝りますよ、もちろん。今すぐに。許してくれないかもしれないけれど」




