5.意外とあっさり
険しい山道を越える覚悟を決めていた私たちだったけど――。
「……あれ?トンネルあるよ」
「ンモォ(めっちゃ整備されてる!)」
拍子抜けするくらい立派な石造りのトンネルを抜けると、そこには夢のような景色が広がっていた。
白壁にパステルカラーの屋根をのせた小さな家々。
花畑に囲まれた石畳の道を、ぬいぐるみみたいに可愛い服を着た村人たちが行き交っている。
なんだここ……異世界シルバニアタウン??
「え、えぇぇぇ……!?山越えたらファンシーワールド!?ギャップがすごすぎるんですけど!?」
「ンモォ(尊い……!私ここ住みたい!!)」
司祭は手を組み、真剣な顔でぽつりと呟いた。
「……可愛い……尊い……これは……信仰……」
柚木「(あ、また新しい扉開いた)」
そんな街の奥、静かな森に佇む白い石造りの家。
扉をノックすると――。
「あら、どうしたの?」
柔らかな声とともに現れたのは、長い黒髪を背に流した美しい女性。
二十代半ばくらいの若々しい見た目なのに、まとう雰囲気は落ち着きそのもの。
「あの……私たち、異世界から迷い込んで……この牛も本当は人間なんです!助けてください!」
必死に説明する私を、彼女は驚きもせず、ただ静かに微笑んだ。
「ふふ……そう。やっぱりあなたたちも“こちら側”なのね。ようこそ」
司祭「……っ(神々しい……!)」
夢愛「ンモォ(推せる……!)」
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応接室
案内された応接室は、白い壁に木の家具が映えるシンプルで清楚な空間だった。
余計な装飾はなく、まるで現役の聖女が住んでいるかのような凛とした気配。
「落ち着いて。ここなら安全よ」
湯気の立つハーブティーを差し出す仕草まで優雅で、司祭はすでに信者の目で彼女を見ている。
私はドキドキしながら切り出した。
「あの……私たち、日本から来たんです」
「やっぱり。私もそうなの」
「えっ!」
そこで一気に盛り上がる三人。
「私たち推し活してて!ライブ帰りに事故に巻き込まれて!」
「ふふ……私は会社でバリバリ働いてたの。でも――」
凛は少し恥ずかしそうに目を伏せ、けれど柔らかく笑った。
「……密かにシルバニアを集めるのが大好きだったの」
柚木「え、えぇぇぇぇ!?ギャップ!!」
夢愛「ンモォォ!(尊い!!)」
司祭「……(“可愛い”はやはり神の祝福……尊い……)」
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趣味部屋
「よかったら、見てくれる?」
凛が奥の扉を開くと――そこはファンシーの極致だった。
棚一面にミニチュアハウスと人形、ぬいぐるみ、花柄の布や小物がぎっしり。
窓辺には小さなティーセットが飾られ、まるで童話の世界。
「…………」
柚木「(言葉が出ない……!)」
夢愛「ンモォォ!(住みたい!ここに住みたい!!)」
司祭「……っ(“可愛い”は……尊い……やはり尊い……!)」
凛は少し照れながら肩をすくめる。
「前は人に見せられなかったの。でも今は、胸を張って“好き”って言える。同志なら、わかってくれるでしょう?」
私はガバッと身を乗り出して、両手を握った。
「わかります!!推す気持ちと一緒です!!」
夢愛「ンモモモ!(尊い推し活仲間!!)」
凛はくすっと笑い、穏やかに言った。
「……ようこそ、私の街へ」
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こうして私たちは――元聖女・凛と出会い、同志として絆を結んだ。
そしてここから、私たちの“拠点づくり”が始まっていくのだった。




