4.この世界、聖女がいるらしい。
「……これは、神の試練に違いありません」
真実の鏡を見終えた司祭は、しばし沈黙ののち、静かに口を開いた。
「ですが、お二人を放ってはおけない。元の姿に戻す手助けをさせてください」
「……司祭様……!」
思わず私は声を詰まらせた。隣で夢愛が「ンモォ(ありがと)」と鼻を鳴らす。
司祭は真剣な目で続ける。
「とはいえ、私の力だけでは限界があります。この世界に“元聖女”と呼ばれる方がおられるのです」
「元聖女……?」
「はい。すでに後継を育て上げ、役目を退かれた方。今は山の奥で静かに暮らしておられると聞きます。ですがその方は、ただの聖女ではありません――“異界から来た人”だとも噂されているのです」
私は思わず息を呑んだ。
「……え、それって……私たちみたいに?」
司祭は頷いた。
「その方なら、牛に姿を変えられた彼女を元に戻す術や知恵をお持ちかもしれません。一緒に訪ねに行きましょう」
夢愛の牛耳がぴくりと動く。
(……やっぱり、この世界にも私たちと同じ“迷い込んだ人”がいるんだね)
「うん……そうみたい。なら、その人に会わなきゃ」
司祭はまっすぐに私たちを見つめて言った。
「この身を賭しても、必ずお二人を支えます」
「……司祭様、真面目すぎるってば」
苦笑しながらも、私はちょっと安心した。
(この人、たぶん天然だ。でも悪い人じゃない)
こうして私たちは――司祭を新たな仲間に加え、
“元聖女”が暮らす山を目指すことになった。




