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カラクレナイ#76 千載一遇のチャンス

「はああぁっ!!!」


アテネさんが大剣でヌシを空中に吹っ飛ばす。さらに追撃を加えようと空中に打ち上がったヌシを追いかけそれを地面に叩きつける。入る間がないな…この中に割って入ったら簡単に潰れて死んじゃいそうだ。とはいえどっかのタイミングで入らないと…と言ったところでヘルメースさんが肩に手をかける。


「アテネ様!!カリンが起きましたよ!!これから拘束に入ります!!どうかそれまで耐えてください!!」


「朗報じゃあないかっ!!そのまま頑張ってくれよぉっ!!」


疲れを一切感じさせないハツラツとした声でこちらに答えヌシを動かさないように笑顔で結界の上からタコ殴りにする姿はどこか狂気じみてるが……今はヌシの拘束だ。ヘルメースさんとカリンちゃんと一緒にアテネさんに合流したとはいえ今のあいつにカリンちゃんの灰の鎖を巻き付けても硬く拘束できるとは到底思えない。誰かが大きな隙を作ってくれればいいのだが……

そう思った矢先、ヌシがアテネさんを弾き飛ばし自由になる。となるともちろん狙われるのはこの中で最も弱い俺であって……


「うっそだろぉっ!!……ッ!!」


チッ、ちょっと休めるかなーって魔式の展開をやめた俺が悪かった!ちょっとサボってたせいで忘れていたが今の俺は心臓、ひいては血管に多大な負荷をかけないと魔式を展開できないんだった。ぐぅっ、頭がぼーっとしてきた……って!危ない危ない!ここで速度落としたら押し潰される……っ!


「交代だ!庵くん!!」


「ありがとうございます!!」


アテネさんが突進を繰り返しては上空に逃げるヌシを撃ち落とし、大剣をヌシに向かって投げ飛ばし地面に突き刺して魔力を爆発させた。すると爆煙から出てきた大剣は変形しており純白だった刀身が黒ずみ、両刃だった刃が片刃だけになって鍔がなくなっていた。これは…どういう?


「魔式「獣化(ビーステッド)一朝之忿(ニーズヘッグ)!」


アテネさんが魔式の名前を叫ぶと大剣から黒い稲妻が走りヌシを襲う。結界に阻まれ攻撃は届かないが絶対不可侵であるはずのコアの結界に少しだがヒビを入れたのだ。

本人はその結果に不満なのか少し眉間を顰めていたが本来なら絶対に傷つかないであろうコアの結界が少しだが割れたのだ。ヌシとしては早いだけの俺じゃなくて結界を割ったアテネさんを狙わざるを得ない。一応ヘイトは元に戻ったか……あ、危ねぇ。


「ふーむ、彼女が魔式を切るとは……余程のことですね。」


「あの魔式…なんでコアの結界を割れたんだ……?あの黒い雷は……」


「あれは…術式を乱せる雷ですよ。だから結界も少し割れたわけですね。ただ彼女の魔式はもっと多くの……」


「ヘルメース!!それ以上言ったら3枚おろしにするぞ!!」


「おや、乙女の顰蹙を買ってしまったようですね。少し黙っていましょう。」


今までずっと気にしていなかったが他人に自分の魔式の内容を暴露されるのって確かにかなり気分が悪くなるよな。けどヘルメースさんのこの態度を見ていると3枚おろしにされたほうが良さそうだ

さてと話を戻すとなんかのタイミングで隙を作ってその瞬間にカリンちゃんが八咫烏で拘束。俺が結界を破って全員で袋叩きにする。これが大体の作戦な訳だがまず誰かがヌシの隙を作らないといけない。

今のところそれができそうなのはミネルヴァさんかアテネさんだが、アテネさんは攻撃を受け持つのに忙しいだろう。幻の第三の選択肢、ヘルメースさんがいるが…本人が言っていた「鎖はすぐ解かれる」が本当にすぐなのか数秒の猶予があるのかどうか……確実にやりたいしこれはないか。

だとするとミネルヴァさんの禁術による不意打ち。これはどうだろうか?弾かれるにしても少しの間ミネルヴァさんにヘイトが向いて無抵抗になるはず、そこを叩けるか?


「なあ、これってミネルヴァさんがどこにいるかわからないのか?」


「それは難しいですね。消えている際は魔力探知にも引っかかりませんし……ふっ、攻撃は彼女のタイミングに任せるしかありません。我々にできることといえば、いつチャンスが来ても1秒で作戦を実行させられるように刃を研いでおくことだけですよ。」


「なるほどなあ……聞いたか?カリンちゃん?」


「もちろん、それで言うんだったらこの中でその準備とやらをしているのは私だけみたいだけど。」


「心外だなぁ。俺だってちゃんと……心の準備をしてるから。」


「そんなもの豚にでも食わせたほうがマシ。」


「俺の心のことなんだと思ってんだよ。」


俺の心は豚の餌扱いかよ。全く、相変わらず当たりが強いぜ。まぁ、確かに準備は何もしていないがな。がはは

それと比べ、カリンちゃんは灰の鎖を出すためにちゃんと千鳥を出して八咫烏の領域をポンポン作っている。準備をしててえらいなー。俺は準備したら心臓が爆散して死んじゃうからやはりしないがな。がはは


「チッ、ニーズヘッグが効かないとは……無駄に固い術式を使ってやがるな?だったら……」


ひゅーどーんっと言う大きい音が鳴り響き、少し気が緩んだ俺の目の前に急にアテネさんが着地したかと思えば、急にその左腕がトカゲのようになった。そうして驚く暇もなくアテネさんはその大きなトカゲの腕を振り、紫色の爪痕のような斬撃を飛ばす。するとヌシの結界が大きく裂けて中にいるヌシを切り裂いたのである。マジか!?じゃあもう俺必要ないじゃん!アテネさんつえー!!と思ったのも束の間、すぐに結界は再生し、ヌシに与えたダメージも回復されてしまった。しかもさっき撃った斬撃は連続で飛ばせない模様。アテネさんは今すごく疲弊している。そんなところにさらに激昂したヌシの突進が来る。不味い!このままだと前線が崩壊して……!


「隙ありぃぃぃ!!!!!」


と思った矢先、ヌシの背後から冷気を纏ったミネルヴァさんが現れ、ヘルメースさんの言った通り、結界をすり抜け勢いよく突進しようとするヌシの背中にナイフを突き立てた。ヌシはナイフで刺されたと同時に意識そのものが傷ついたかのように背中から噴出していた魔力が止まり地面に激突する。

ぴくりとも動かないヌシの前に一歩ずつカリンちゃんが近づき、ハンマーを掲げて「八咫烏!!」と叫ぶと全方位から黒く汚れた灰の鎖がヌシに巻きつきそれを拘束した。


「いつでも動けるようにしておいてよかった。それじゃ、あとは頼んだよ。鎧くん」


「任された!!」

アテネさんの剣はイメージとしてはラダーンの剣

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