カラクレナイ#74 ハートビートに乗って
自動化って……そんなこともできるのか。いやっ、そんなことより今はカリンちゃんだ。ここでヘルメースさんがきてくれたのは本当に幸運だった!今カリンちゃんは……少し離れているがまだ生きてるな。ただ、ビームを最低限避けるため動き回ってるな。まぁそれぐらいなら簡単だ。触手に近づく前に救出して……そのまま結界をぶっ壊して触手を撃破!よーし、完璧なプランだな。
「ちなみに…忘れているようなので言っておきますがこの後にもう一本の触手とヌシも倒さないといけませんよ?」
「うっ、思い出したくもないことを……」
「まぁまぁ、とにかく今やるべきことはカリンの救出でしょう?このレーザービームにどう対処するのですか?」
それなんだよなぁ。あの触手がぐるぐる回ってるせいであたりがビームで照らされてライブハウスかってぐらいに明るくなっている。あれを避けるのは無茶だ。だとするとあれを防ぐ方向にシフトするのが妥当。けど……俺の魔式ではあれは防げない。クレナイで産んだエネルギーは常に流動的だからシールドみたいな運用はできないんだ。だとすると……
「私の出番、と言うことですね?」
「まだ何も言ってないだろ。実際その通りだけどよ……」
「ハハッ、少し考えればわかりますよ。庵様の魔式ではあれは防げぬモノです。ですが、私の血術であれば…ね?」
さっきから前を見続けているにも関わらずこの何もかも見透かしたような態度…師匠のことを思い出すなぁ。そう言えばあいつは今どうしているのだろう。1番激しいって言われてた南側に派遣されてたっけ。案外もう終わらせてこっちにきてるかもな。
っといけないいけない。今は自分のことを考えよう。ヘルメースさんの血術であのビームを防ぎ、カリンちゃんの元まで行って救出、触手をそのままぶっ倒す…あー、あのぐるぐる回ってる触手をどう止める?あの巨体は流石に……止めようとする前にミンチになる。あぁっ!考えても無駄だ!今はカリンちゃん優先!
「よーし、そんじゃあまぁ行きますか!じゃああんたに防御は任せるからな!」
「えぇ、では……」
ヘルメースさんが右腕を横に振ると、何もないところから短い錫杖のようなものが浮かび上がってきた。杖は赤銅色で赤黒い光を帯び、黒蛇が何体も絡み合っている。その先には一対の黒い翼が生えていて時々羽ばたいているように見える。どっかで見たような見た目だな…どこだっけ?まぁいいや。大した問題じゃないしな。で?これでどうやってビームを防ぐんだ?
「ついてきてください。焦らないで、決してそばを離れないように。」
「お、おう。」
あれ?何か特別なことをしたようには見えないが…ここは信じてついていくしか……いや、もうすぐでビームに当たっちゃうぞ!本当に守ってくれるんだよな?普通に当たったら体が焼き切れそうだ。なんだか怖くなってきた……あぁもう来るっ!目つぶろ!
っと…大丈夫、だな?見るとヘルメースさんから半径2mぐらいの領域ができていて周りを水銀で囲まれておりそこから先にビームを通さないようにしている。これは…杖の力か?
「存外大したことはないですね。これであればただの血術で十分でした。杖を出したのは悪手でしたね……」
「……その杖はどういうものなんだ?」
「これですか?大したものではありませんよ。血さえあればそれを他の物質に変換できるという面白みのない杖です。血術の方が使い勝手が良いですね。」
なんでもないように言ってるがそれってものすごい能力じゃ……それなのにこの言い方、この人の血術ってそれに勝る性能だっていうのか?控えめにいって化け物じゃあ……?
「さて、カリンのもとへはもうすぐですよ。介抱の準備を。」
「わかってるよ!」
ビームが飛び交う中でその場に倒れているカリンちゃんを背負いヘルメースさんの安全地帯に運び込む。ビームをギリギリで避け続けたのか、服がところどころ焼け焦げてしまい火傷で皮膚が少しただれている。傷の治りは遅いがまだ息はあるな。よかったーひとまずは一安心だ。けど…こっからどうあの触手を倒す?
「ここでカリンに無茶をさせるべきではありませんね……ここは私があの触手を止めます。あなたはその隙に結界を破壊してください。あとは私が……」
「どうやってあの触手を止めるんだ?めっちゃぐるぐる回ってるけど。」
「簡単ですよ。あんなもの……こうして仕舞えばいいのです。」
そう言った直後、ヘルメースさんの背中から人間ほどの太さの血の鎖が6本飛び出してきて触手に絡みつこうとする。ぐるぐると回転している触手は鎖に捉えられその場に固定される。その時点で目から出ていたビームは消え禍々しい赤黒いオーラは無くなった。ヘルメースさんは6本の鎖を止める楔として踏ん張っているようだ。
「さぁ、早く結界を!」
「任されました!」
よーし!魔力を注入するだけの簡単なお仕事だ!今の俺にもこれくらいだったらできる。ジタバタと暴れ回る触手に近づき手をかざす。そして結界に一気に魔力を流し込む。すると思っていたよりもあっけなく結界が砕かれた。苦行をやってるからか?魔力出力が上がっていたようだ。
「素晴らしい、上出来です!ではここからは……久しぶりの掃除ですかね。汚い蛸足を生ゴミにしてあげましょう。」
そういうとヘルメースさんは背中に繋がった鎖を変形させ触手に突き刺す。すると程なくしてのたうち回っていた触手が静かになり中から大きい血の結晶が生えてきた。はぁ…これでようやく一本目かあ……あとどんくらいかかるんだ?




