カラクレナイ#73 心臓破りの戦い
跳ねる心臓と共に魔式を使った大ジャンプで爆速でヘルメースさんが立っている真横に大胆な着陸(不時着)をする。頭から突っ込んで何回か転がって泥まみれになったがすぐに立ち上がってヘルメースさんの方を向く。
彼は現在起きている戦いを全体から俯瞰して見ているようだ。いや手伝いに行けよ。俯瞰してるだけじゃなくて。
「すまないヘルメースさん!ちょっと遅れた!」
「遅いですよ。何に手こずってたんですか?」
「あんたなぁ……どうせわかってて言ってんだろ。」
「フフッ、随分と空元気がお上手なんですね?」
「やかましいなぁ!!」
あぁそうさ。空元気だよこれ!本当は全身が痛くて痛くてたまんないんだ!特に頭!心臓の鼓動の音があーもう響くわ響く。ついでに血管が脳を圧迫したり暑さでぼーっとしたり踏んだり蹴ったりだ!でもまぁ……この苦行+魔式、決して悪いことばっかりではない。まず第一に身体能力がこれでもかってぐらい強化されてる。ただの瞬とは速さもパワーも違う。今ならただ地面を蹴っただけで宇宙まで飛んでいけそうだ。そして次に……
「ついに攻撃に炎が纏えるようになっちまったよ!」
炎属性の追加。血流が良くなって冷え性が治るどころの騒ぎじゃないがとにかく暑すぎて燃えるようになった。これは…このヌシに対してはまだ効果がないが、単純に属性が増えたってのは嬉しいところだ。特に俺は魔術とか使えないからな。裏技だし荒技だからそこまで使い所がなさそうというは置いといて貴重な属性攻撃だ。
まぁ、今のところ全然デメリットの方が上回ってるな。頭がぼーっとしているのに攻撃を避けれてるのは身体能力がいつもより強くなったから。そう考えると五分五分かと思ったが別にそんなことはない。破とか斬とかを打てるほど頭の余裕がないってだけで大幅弱体化だ。
まぁまずは結界をぶっ壊すことが1番大事だ。結界を壊さないとそれらの攻撃も通らないからな。だとすると人員の確保のために呼び出された触手を引っ込ませたいが……ヌシがそれを許しちゃくれねぇ。本体はアテネさんが抑えているが…溢れた弾幕が俺を進ませまいと邪魔してくる……っ!こいつ俺しか結界が破れないことをわかっててやってるのか?
「ふむ、どうやらお困りのようですね?」
「見りゃわかるだろ!?あんたもなんかしてくれよ!」
「人に物事を頼むときはきちんとした言葉遣いで。」
「はぁ……お願いしますから助けてください。」
「……まぁいいでしょう。手助けしてあげます。庵様はそのまま触手の下へお急ぎください。」
「頼んだからな!」
ヘルメースさんの助けがどれほどのものかはわからないが……今は触手の下に急ごう。溢れた弾幕はヘルメースさんが血術で相殺してくれている。これであれば簡単に近づける。あっという間に一本目、カリンちゃんが戦っている場所へと辿り着く。カリンちゃんは今までの連戦ですでにボロボロで息を切らしていた。
「ん、鎧くん生きてたんだ。私はもうへとへと。」
「おいおい、冗談じゃないぞ。あれを倒すにはカリンちゃんの力が必要なんだ。もうちょっとだけ堪えてくれよ。」
「酷いこと言うね。今日は働き詰めだよ。」
そう言いつつ、カリンちゃんはしっかりとハンマーの柄を握りしめ目の前で激しく地面を叩く触手を見据える。ふむ、近くで見るとなかなかの大きさだ。全身に不気味な目玉がついており禍々しい赤黒い色をしている……普段そこらへんの巣で見るものとは違うな。本体の魔力出力に比例しているからなのだろうか。それにあの触手が地面を叩いただけで地面に深い亀裂が走っている。どうやらパワーもそれに比例して強くなっているようだ。見るとカリンちゃんの周りには砕かれたハンマーがいくつも転がっていた。どうやらずーっと防戦一方のようだな。まぁ結界がある以上そうなるのは普通なのだが……大丈夫か?
「じゃあ私が引き付けておくから、鎧くんはさっさと結界を決壊させて。」
「ダジャレを言う暇があるんだったら大丈夫そうだな!」
勢いよく前に飛び出して行ったカリンちゃんは触手を挑発するようにその周りを回る。触手は地面に倒れ込みそのまま体を振り回して辺りを薙ぎ払う。カリンちゃんは空中に飛んでそれを避けたが、触手についている目からビームが乱射され撃ち落とされてしまった。
チッ、出遅れた!これじゃカリンちゃんを助けにもいけないし結界を壊しにもいけない。ったくもうちょっと頭がスッキリしていたらこれぐらい余裕なんだが……いかんせん今は体の感覚も違えば頭の中で渦巻く不快感が集中を妨げている。このレーザービームを避けれるほど余裕はない。うーんどうすれば……
「どうやらお困りのようですね。」
「ヘルメースさん!?あんた、あの弾幕を処理してたんじゃ……」
「あの程度なら術式を自動で動かせば事足りますよ。なので……あなたの世話を焼きに来ただけですよ。」
「世話って……まぁいいや。じゃあ手伝ってくれよ。俺があの触手の元まで辿り着くの。と言うかヌシに辿り着くまでずっと。頼む!」
「ふむ、先ほどよりも砕けた印象を受けますが……もとより王に仕った命令はあなたを助けることですからね。意地悪をする意味もないですし、さぁ、さっさと向かいましょうか?ヌシのお膝元へ。」




