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カラクレナイ#66 起きはしない誘拐未遂

燈魔チームが庵の緊迫した状況に気づいた頃、ライノは退屈していた。彼はこの四つの巣の中で一番規模が小さく戦況が比較的優勢な方面に派遣されたからである。とは言え、彼がいなければ徐々に戦力が削られここもすぐに落とされていたであろうから必要かどうかでいえば、必須なのだが……それを本人がよしとするわけなく、現場に着くや否や怒りに任せヌシを一撃で粉砕した後、残った血腫に八つ当たりをして殆どを蹴散らしてしまった。今は自分が作った死体の山で胡座をかいて頬杖をつき、自分が取り逃がした残党を処理している兵士やフォンを眺めている。怒りは一旦収まったようで、肩に大剣を乗せ、目を閉じて何やら深く考え込んでいるようだ。

と、ここで閉じていた目を開けおもむろに立ち上がると、大剣を死体の山に突き刺し、遠くの方で血腫を追いかけているフォンに向かって大声で呼びかけ始める。


「おい!フォン!!吾輩は暇になったのでなぁ!!別の場所に加勢に行くぞぉ!!お前はここで大人しく残党を狩っておけ!!」


「えぇ!?そんなぁ!?私もお供させてくださいよぉ!!」


「ええい喧しい!!お前はその気になればいつでもその忌々しい魔式を使って駆けつけられようが!!そもそも貴様のことを吾輩は従者とは思ってない!!そこで雑兵と同じように雑魚と戯れておくのだなぁ!!」


そう言い残し、ライノは大剣を背中に納め、赤い雷を全身に纏って死体の山から天高くまで跳躍した。その衝撃で死体の山が潰れて崩れ、そこから激しい血飛沫が吹き出しあたりに降り注いだ。跳躍したライノはすぐに見えなくなってしまったが誰の目から見ても目立つ赤雷がてっぺんの高さが約150mもある城を飛び越えて行ったのは明らかであった。もちろん城を飛び越えた先は燈魔がいる西方面である。

上空ではライノが魔力探知をして燈魔を探していた。ここまで跳躍するとかなりの対空時間になるため時間には余裕があったが、ナイトメアの下へ急いでいる燈魔を探すのに少し手こずり、見つけた時にはもうすぐで着地する時になっていた。

がギリギリで軌道を修正して、燈魔のチームが走っているそのすぐ後ろに崖が崩れ落ちるような轟音と小規模の隕石が降ったようなクレーターを伴い、ライノが着地した。


「チッ、ウッソやろ……!?こんな時にライノが絡んでくんのかいな……!」


「アラカワァ……存外早くヌシの討伐は終わったようだが……一体どこに行こうというのだ?」


「お前に関係あらへんわ!さっさと帰ってくれ!」


「吾輩は暇なのだ!!付き合え!!」


「駄々こねる赤ん坊かいな……面倒臭いわぁ……まぁ、なんやってええ。今は強い奴が欲しいとこやったし……おい、ライノ!!なんも言わずについてこい!!」


「む?どこに行くのだ?教えろ!!」


燈魔はその言葉を無視してさらにその速度を上げた。ライノもドギマギしながらではあるものの燈魔の後をついていく。着地した地点からスタートを切るとあっという間に燈魔を追い越すと再び先程の質問を繰り返す。


「おい、アラカワよ。結局のところお前らはどこに向かっているのだ?」


「はぁ……またその話かいな……全く、一度しか言わへんぞ。さっきうちのグローが庵の未来を見たんや。それで……あいつが何者かに“誘拐”されることがわかったんや。だから今未来の結果を変えるため四聖を集めて庵のとこに向かってるっちゅうわけや。わかったか?」


「……つまり、あのナイトメアの弟子の混血を救うため、あいつの下にこんな走ってるわけなのか?」


「いや、今俺らが向かってるのは南、ナイトメアの姉貴が戦っとる方角や。」


「チッ、何かと思えば……そんなくだらんことに奔走していたとは……まぁいい。どうせやることも無いしな。乗ってやる。」


「はっ、そう言って…本当は姉貴が怖いだけなんやろ。よくそんな威張れるなぁ。」


そう言って燈魔はニヤけながら呆れたようにライノを見る。ライノはすぐに眉間に皺を寄せたがライノの言葉を無視し前に走り続けた。燈魔はそれを見て面白く無いと感じたのか少しの間ライノを見つめた後、また前を向いた。


「……そう言えば…お前、まさかとは思うがその速度、素で出してへんよな?」


「何をいう出すかと思えば……もちろん素に決まっておろう。」


「……えぇ?やっぱ俺とは違うんやな……」


「馬鹿な阿呆だ。混血のくせに純血の身体能力に勝てるわけないだろう。」


燈魔とライノが絡んでいる後ろでライノと同じく純血であるグローが小声で呟く。


「……俺も勝てないけどなあ。」


そんな燈魔一行だが軽口を叩き合っているうちにナイトメアがいる南に辿り着く。あたり一面が恐ろしいほど焼き尽くされた大地の中央に大型の血腫の死骸を幾重にも積み重ねたライノが作ったものとは比べ物にもならない死体の山が聳え立っている。肝心のナイトメアは死体の山の頂点に立ち、やむことのない血の雨を浴びて赤く染まっていた。

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