カラクレナイ#64 赤の三段構え
「ねぇ!考えなしに突撃してるけどぉこれってなんか作戦とかあるー?」
「いや、全く。」
「ぶっつけ本番ってことぉ?冗談でしょー?」
「悪かったな。作戦も何もなくて。」
102名の大軍勢がヌシに向かって突撃していく。その大軍勢はヌシの腕を掻い潜り肉薄すると、銃を乱射し始める。銃弾は血術で次々と作られ自動で装填されるため切れることがない。かと言って先ほどのように弾はヌシの厚く硬い皮膚に弾かれダメージを与えられない。唯一至近距離でのロケットランチャーによる爆破はダメージを与えられているがそれも薄皮が剥ける程度のもので、すぐに再生されてしまう。
そんな中、センドウのオリジナルは100人いる自らの分身の中に紛れ機会を窺っていた。センドウが言う通りなら現在のところヌシに苦戦している状況を打破できるというこの弾、センドウが吸血鬼になった時から所持しており、そこから100年、ずっと魔力を込め続けたマグナム弾である。
現状一部の例外(魔式による補正のかかったグローの打撃)を除いて唯一ヌシを絶命させられるであろう手段を持っているセンドウだが、その弾を撃たないののは訳がある。その例外であるグローの打撃をヌシが喰らっても再生するどころか、再生した部分がさらに固くなったのである。
センドウは今自分が仕留められなかった場合、もう自分たちの力では倒せない相手になることを危惧していた。そのためすでにヌシの意識から外れていて、どこからでも撃てる状況にあるにも関わらず殺意を向けられずにいるのである。そんなところにさりげなくグローが近づいてきて小声で話しかけてくる。
「ねぇ、早く撃ってよぉ。もう僕たちの火力じゃ太刀打ちできないよ。ちょっとだけ効いてた狙撃や爆破も効かなくなってきちゃった。僕のバッドだっていつまで通るかわかんないんだよぉ?」
「待ってくれ。確かに攻撃が通らなくなるかもしれない。だが俺の弾丸でこいつが絶命する可能性は?もっと確証がないと……とにかくまだだ。もうちょっと耐えてくれ」
「はぁ、つまんないなぁ。会った時のいおりんぐらいつまんないよ。さっさと撃たないと俺が君を殴るよ?」
「はぁ、それでもいい。その場合俺は100人の中から次の俺を探すだけだ。」
そういうセンドウだが、今ヌシのヘイトを買っているのがグローだったため、パッとグローの横から離れていく。その直後グロー目掛けてヌシが腕を振り下ろしてくる。センドウはもちろんその場から離れていたためことなきを得たが、離れる時に飛び上がって空中に浮いてしまい目立ってしまいヌシに見つかってしまう。そしてヌシは先ほどまで集団の中に紛れていたことにより気づけなかったその懐にあるとてつもない魔力量を持つ何かに気づいてしまう。
「……グウウゥゥ……オマえ、だナ?ホンだイはァァァ“!!!」
「チッ、バレたか……!」
「あちゃー、これ俺の所為かなぁ。」
ヌシは目標をグローからセンドウに変えて、先程よりもさらに荒々しく攻撃し始めた。センドウは周りに沢山いる分身の中に紛れるが、一度あの魔力を見たヌシにとってそれを追うのは容易いことであり、一直線でセンドウの元へ突進してきている。
センドウは必死にヌシから離れているが、速度でヌシに負けているのと味方からの援護が全く援護になっていないことからすでに追いつかれそうになっている。このままだと追いつかれるのは時間の問題だがここでセンドウがヌシに向き直る。
「しょうがない……!撃つしか……」
「はぁ……しょうがないないなぁ。君は僕がいないとなんもできないんだからぁ。
「うるさいなぁ。つべこべ言わずに手伝え。」
「……フッ、そういうことか。なかなか面白いこと考えるねぇ。センドウくん?」
「……いいからさっさと手伝えよ!」
ヌシに向き直ったセンドウの側にグローがやってくる。グローはセンドウと話し何かを察したのかニヤケづらでヌシの前に立ち塞がる。そしてグローは魔術で改造された血器創造で作られたものではない実物のリボルバーを腰から取り出し赤い弾を装填、ヌシを標準に合わせる。
「これでも……喰らえっ!!」
リボルバーから発射された弾丸は緋色の弾道を描きヌシの頭を貫く。だがその一撃はダメージを与えることはできたもののすぐに再生されるレベルのものであり、絶命に至らせることなどできないようなものだった。ヌシは嗤った。「これでもう自分を脅かせるものはいない。あとはただ暴れるだけだ」と。
彼はこの後には燈魔が控えていることを忘れているということは置いておき、まだセンドウの企みは終わっていない。ヌシが嗤っている時、その背後から銃を構えるセンドウがいた。そのセンドウも赤い弾丸を装填しており、何も言わずに引き金を引く。
バーン
激しい破裂音と同時にヌシの頭が半壊する。即座に振り向き、腕を叩き下ろすが避けられる。ヌシの頭はゆっくりながらも再生し、禍々しい角が顔半分を覆うように生えてきた。今、ヌシの心情は怒りで満ちていた。勝てないと鷹を括っていた相手が、自分を危機に晒しているからである。そのため、さらに凶暴になり、あたりを考えずに暴れ出した。
「グブルッァアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛」
「はははっ!!いいねぇ!これどうすんのさ。センドー?」
「……簡単だ。」
オリジナルのセンドウは遠目からヌシを確認し無表情で、しかし勝ちを確信したようにヌシを見下し、銃を構える。その銃も今までの実物のリボルバーとは違い、段違いの魔術による改造に加え物理的にも改造が加わっており、ただのリボルバーという銃単体が持っている圧としては規格外のものだった。そしてその銃に1発、赤い銃弾が装填される。そして暴れているヌシのボディを標準に合わせセンドウが引き金に手をかける。
「楽にしてやればいい。」
センドウが引き金を引くと銃口の先に何重にも魔法陣が展開され魔力が収束して球体になっていく。そして魔力がバランスボール大程度の球になった時センドウがボソッと呟く。
「正義執行」
呟いた直後、銃口から特大のビームが照射されヌシの胴体を貫く。ビームの照射は約10秒続きヌシを焼き続けた。照射が終わった後、センドウは煙をあげる銃口に息を吹きつけ腰に戻す。そして一息ついた後、静かにこう言った。
「……やったか?」
あかんでその言葉は




