カラクレナイ#60 文字通りのアームストロング砲
「……間に合ったも何もまだ始まってないから安心して。それで?何でそんな変なフォームで飛んできたの?さっきまで血腫たちに囲まれてたよね?」
「俺だって意図してぶっ飛んだわけじゃないわ。単純に力加減をミスったんだよ。」
まさかこんな勢いで宙を舞うとは……ちょっと飛ぶぐらいだろうと思ったらアホみたいな高さまで飛んだぞ?さすがに全力を全部足に集中させるのはやり過ぎだったか……これをすんのは余程切羽詰まった時の緊急離脱用だけだな。
さて、地面に激突してしまったから今沼にめり込んでるわけだが……一旦立ち上がってっと。ふぅ……体が泥だらけになっちまった。下半身は鎧があるからまだいいが……上半身はもうベトベトだ。
まぁいい。まずはヌシだ。さっきから魔力だけビンビンに感じてるのに姿が全く見えない。取り巻きの血腫どもと同じように沼に潜って隠れてるのだろうか?だとすると奴のホームグラウンドの上にいる今の俺たちはかなりまずい状態なのかもしれない。カリンちゃんは……そういえばカリンちゃんは何でここで立ち止まってたんだ?
「一応聞くが……ヌシは見つかったのか?」
「いや、全く。でも魔力はこの真下から感じる。だからここで止まった。」
「ん?ってことはこの下にヌシがいるんじゃないのか?」
「そうだろうね。でも私にはあんな深く、そうこの沼の底まで届く攻撃手段は無いから……」
あぁ……そう言うことか。確かに意識して魔力を感じるとこの下にいるような気もしなくはない。俺はまだ魔力の逆探知的なことは苦手だからな。そして俺と違ってそう言ったことができるカリンちゃんはヌシの存在に気付いたわけだ。でもヌシがいるのはこの沼の底。カリンちゃんのハンマーや魔式の火の鳥じゃ届かない、と。
ふむ……今のところヌシが自ら浮上してくる気配はないし、攻撃あてないと上がってこないだろうなぁ。うーん、これどんくらい深いんだ?距離がわかれば俺が何とかできそうだが……さっきも言ったがまだ逆探知の精度がよろしくないからな。
「ちなみに聞くがこの沼、どんくらい深いんだ?」
「さぁ?私も詳しくはわかんない。でも元々ここにあった湖の深さは大体100m。多分同じだよ。」
「100、ねぇ……いけっかなぁ?」
いや、ただクレナイのエネルギーを100m放つだけなら簡単だ。現に斬の飛距離は頑張れば200m弱は届く。ただ今やらないといけないのは100mの泥を貫ぬくほどの攻撃を放つと言うこと。ただ何もない空間に放つのとは訳が違う。ったく、何で湖をそんな深く掘ったんだ。王様の庭園だか何だか知らないがふざけんじゃねぇ。
って言ってもしょうがない。とりあえずクレナイのエネルギーを今度は足ではなく右腕に集中させる。今回はやり過ぎもない。的は血腫だ。遠慮せず全力でぶっ放そう。
「鎧くんなんかにできるの?今は鎧もないノー鎧くんなのに。」
「ノー鎧くんってなんだよ……まぁ、なんだかんだ言ってできるんじゃないか?多分。俺だったら攻撃を当てられる。」
自信満々に言ってるができなかったらはずかしいぞ。まぁやる前から失敗するなんて考えるとよくない。ふぅ……足の時と同じように、鎧を右腕に集中させ負荷を減らす。砲でもここまでエネルギーを集めないからどんな威力になるかはわからないが……必ず当ててやる。
っと、周りが騒がしくなってきやがった。しばらく同じ場所に留まってたから血腫が集まってきたか。だが……俺は今エネルギーをチャージしてるせいで迂闊に動けない。しょうがないからカリンちゃんに任せよう。あの子なら大丈夫だろ。とは言っても多分俺より年上だろうから心配するのも野暮というもんだ。
「カリンちゃん!俺は今エネルギーチャージで動けないから一人で血腫の処理を頼む!」
「わかった。確かに鎧くんだったらまだしも、ノー鎧くんにはできないだろうね。まかせときなさい。」
「鎧があってもなくても変わんねぇよ!そのドヤ顔をやめろ!」
「よく吠えるね。1発殴られたいの?」
「あぁ、わかったから俺に向かってハンマーを構えんな!」
ったく、調子がいいやつだ。くっ、エネルギー溜めすぎて痛んできた。これ以上チャージしたら腕がもたない……いやまだだ。鎧を重ねてもっとキャパを増やせば……ハッ、もうこれじゃ籠手なんて言えないなぁ。これじゃ……これじゃまるで大砲、いやもっと恐ろしいものだ。これだったらナイトメアにも届きそうな圧を感じる。
「ちょっと!まだなのー?どんどん数が多くなってるんだけどー?」
「多分ヌシが狙われてることに気づいてんじゃねぇか?安心しとけ、あともう直ぐだ!あと30秒で終わる!……多分!」
「確証持ってよノー鎧……うーん、今の姿じゃ不格好鎧くんだね。ま、いいや。頑張ってー」
ふぅ、あだ名の語呂が悪いのはさておき、カリンちゃんが俺に血腫を近づかせないよう頑張ってくれてるが……もうちょっとで限界が来そうだ。うかうかしてられない。こっちもこっちでもうキャパオーバー寸前だ。これ以上鎧を……まぁ今となっちゃ大砲って言ったほうが正しいが、大砲を盛るのは場所の関係上難しい。いいぜ。ぶっ放してやる。ちょうど溜まってたんだ……最大火力を更新する時だ!!
「魔式!!「クレナイ」!!「砲」!!!!」
「腕」についた「強い」大「砲」つまりアームストロング砲




