カラクレナイ#53 厄介ファン
ライノ氏って……あいつ、そんな呼ばれ方もするんだな……慕われてるってことなのかもしれないが……ライノに同調するってことは高確率で純血至上主義だ。さっきは服装で適当に判断したが本当に純血至上主義だった場合、また廊下とかの道端で殺されかけん。やなかんじ。
で……ちょうどいいタイミングでライノがあの従者を連れてきたから……次の試合はセンドウ対あの白い奴でいいのか?
センドウって奴は……燈魔さんの後ろにいる黒いコートを着た奴でいいのか?こりゃまた……今度はそのスジのものではないが明らかに裏社会のエージェントみたいな奴だな。逆にもうちょっと捻りが欲しいぐらいだ。フードを被っているから顔が見えないが……何故かこちらをじっとみているような気がする。……怖くなってきた。
えぇっと?あの白い奴は……名前が分からなければどこの所属なのかも分からない。強いて言えば着ている鎧の肩当てや小手などにどっかの紋章が着いている。どっかの騎士かなんかなのか?
「あー……ライノ、すまないが連れてきた従者の方は一体何者なんだ?紹介してくれると助かるんだが……」
そう言われたライノは従者に目配せをしまるで自分から言えと言わんばかりに腕を組んで動かなかった。そんな従者だがライノの目配せに気づき一歩前に出てから話し始める。
「おほん、私はフォン・ディストリア。ディストリア一族の6代目当主にしてライノ・クロウザル氏の弟子でございます。以後、お見知り置きを。」
そう言った後、胸に手を当て深々とお辞儀をした。フォン・ディストリア……名前はわかったが、ディストリア一族の6代当主ぅ……?何だか凄そうな予感がする。有名な名家なのか?どちらにしろ貴族、というか位の高い人なのは確定したな。とここでライノが割り込んでくる。
「一つ修正するならば、こいつは別に吾輩の弟子でもない。俺の行くとこ全てについてくるストーカーだ。」
「やだなぁ。ライノ氏ぃ。私とあなた様の仲じゃないですかぁ?」
「擦り寄ってくるな、この蛆虫が。吾輩は混血はもちろん、権力者とも関わりたくはないのだ。今回貴様を呼んだのはやむを経ずで……」
う、口論が始まった。やかましい間柄だなぁ。何を言われてもフォンがずーっと笑顔なのは気になるが……要するに厄介ファンってことか。そりゃライノもお気の毒に。
するとその口論を止めるように王様の声が響く。
「第3試合!!出場者は前へ!!」
ふぅ……そろそろか。リングの中にセンドウとフォンが入っていく。一瞬こちらを見たフォンの視線が凍えるぐらいに冷たかったのは気のせいだろうか……?流石に一瞬だったしな。見間違いの可能性も……まぁまだライノの支持者全員が純血至上主義者とは限らないしな。めちゃくちゃ怪しいけど。
互いに向き合ったところで王様の宣言が響く。これでもう3試合目だ。時間が経つのは早いねぇ。
「第3試合!!センドウ対フォン!!開始ぃっ!!」
今回も最初は向き合って睨み合っている。センドウはまだ武器を展開していないが……フォンは武器を出している。あれは……レイピア?確かに貴族っぽい武器だ。構えてはいないが体のフォームはいつでも動けるようにフェンシングで見るような体勢になっていた。センドウは……ノーガードで隙だらけだな。そんなので大丈夫なのか?
少し経ち、フォンがレイピアを構えセンドウに向け始めた。そして数秒睨み合いフォンが話しだす。
「一応聞いておこうか。もうわかったようなものだが……君は混血か?」
え?今そんなことを聞くってことは……やっぱり純血至上主義者か。前言撤回、ライノの支持者は全員混血差別をするような奴だ。ぶっ飛ばしたくなってきた。
「……今それは必要な情報か?」
「もちろんだとも。これの結果によって……」
「君の死に方を変わってくるだろうからね。」
ん?……今死に方って言ったか?おいおい、この試合はただのスパーリングだろ?ちゃんとルール理解してんのか?それ以前にスパーリングを殺し合いかなんかだと思ってる時点ですでに社会的な常識が抜け落ちてると言わざるを得ないが……
「……混血だ。何か問題でも?」
「ハッ、やはりそうかぁ。汚い血の匂いがすると思ったが……それにしてもここは穢れた混血どもが多いな……後で全員掃除しておかなければ……」
う、こいつよくこんなこと言えるな。ただでさえ四聖が集まっている場だぞ?普通そんなバカみたいなこと堂々と言えないぞ……前にいるナイトメアの後ろ姿がどんどん恐ろしくなっているような……あぁ……向かいにいる燈魔さんはどうだぁ?えーと、うっすら笑ってるな……仏像みたいなアルカイックスマイルだ。多分、心中は仏とは真反対の感情なんだろうが……この試合が終わった後あの白い奴が無事に生きていられるか逆に心配になってきた。
「何故、混血を嫌う?」
「混血を嫌うのに理由なんて要りませんよ。あなた達の汚く穢れた血が本来吸血鬼が持つべき私たちの純粋な血を汚すのが気に食わないのです。」
「そうか。ならば……」
センドウの方が動く。フードを脱ぎ白くて少し跳ねた髪にドクロの仮面をつけた素顔があらわになる。そしてフォンの方に近づきながら手を胸の前でクロスさせる。するとその両手に銃のような物が形作られてく。
ついに銃火器を使う吸血鬼が出てきたか。残念ながら俺はあまりミリタリー方面に明るくないのであれが何のカテゴリーに属する銃なのかは分からないが……見たところ片方はリボルバーのような形だな。あのクルクル回るあの部品っぽいのが見える。もう一個の方は……わかんね何だあれ。
そしてセンドウはリボルバーの方をフォンに向けて呟いた。
「正義、執行」
その瞬間、大きな銃声が鳴り響いた。
吸血鬼界隈で6代目と言うのはかなりの名家です。大体100年程度で代替わりをするので6代目というのは600年の歴史ということですね。なんで600年程度で名家なのかというと、ある戦争で昔の吸血鬼がゴニョゴニョ。




