カラクレナイ#5 血をウニョウニョ動かすからほぼ図画工作
「この魔界の常識として吸血鬼には3つの戦い方があるとされておる。」
ナイトメアはそう言うとホワイトボードに三つの丸を描いた。
「まずひとつ、体術。ふたつ、血術。みっつ、魔式じゃ。この中でも体術と血術を使う吸血鬼がほとんどじゃな。理由はまぁ、単純に魔式が難しいからじゃが……お主には魔式まで覚えて習うつもりじゃから覚悟せい。」
そう言いながら、ナイトメアは三つ目の丸を指差す。散々魔式について言われるがその内容が強い必殺技ということしか知らないのだ。(たった今難しいという情報が増えたが)だからそこまで実感が湧かないのが少し残念である。早く魔式について教えてもらいたいものだ。
「そして今からお主に習得してもらうのは血術じゃ。これは魔力操作の基本であり最初に習うもの、と言ったが…ま、普通なら生まれた時から使えるものじゃな。お主は特殊な生まれじゃからしょうがない。」
「えっ、吸血鬼って血を吸って増えてくんじゃないのか?」
「いや、普通に母親から生まれるぞ。血を吸って増やしておるのはわしぐらいじゃ。これは真祖だけに許された特権みたいなものじゃ。」
なんでこいつらの種族名は吸血鬼なんだよ。今のところ吸血要素が最初のところしかないぞ。
「つまり今のお前は生まれたばかりの赤ん坊以下、ということじゃな。そう言う自覚を持って修行するんじゃぞ。」
……今の俺は赤ん坊以下だったのか。あの異常な再生力や怪力を持ってちょっと勘違いをしていたらしい。血術を生まれながらにして使えるとは今の俺が首を垂れるレベルだ。さっさと学んで逆に頭を下げさせねばならん。……何を言ってるんだ?俺は。
「と、いうことで今からお前には1日で血術を覚えてもらう。そしたら明日から魔式の習得に移れるからの。」
「血術を1日って…俺はまだ魔力もちゃんと視認できないんだぞ。そんなことできんのか?」
「もちろん。だって赤ん坊が生まれながらにして使えるほど使用が簡単なんじゃ、お前が使えないわけないじゃろ。それと朝確認した通りお主はもう吸血鬼の体になっておる。じゃから目を凝らせばおそらく今わしの周りに漂っておる魔力が見えるはずじゃぞ。ほーれ、目を細めてちゃんと見てみろ。」
そう言われたので、俺は目を細めじーっとナイトメアを見つめる。すると微かにナイトメアの周りを透明なモヤモヤが覆っていることがわかった。これが魔力?
「見えたかの。それじゃ、それを自分の体で感じてみろ。自分の魔力を知覚すればあとは簡単じゃ。」
うーん、自分のを感じろか。俺は目を閉じて体の内部に感覚を集中させる。吸血鬼になっているからか、体の内部の臓器の形まで感じられるぐらい感覚が鋭くなっている。その感覚を活かし全身に駆け巡る魔力のモヤを見つける。どうやら血の流れと同じように魔力も体を駆け巡っているらしい。
「どうやら見つけられたようじゃな。そうじゃお前の予想通り、魔力は血と一緒に体を駆け巡っておる。じゃから血術の使い方としては、血と一緒に魔力を動かすだけで良い。コツはそうじゃのう、魔力で新しい血管を作ってあげるイメージでやるんじゃ。」
新しい血管を作るイメージ。魔力をどう動かすか?は教わってないのだが、右手を流れる魔力に集中する。腕の脈を感じながら、毛細血管を流れる魔力まで動かそうとする。感覚としては絞り出すイメージで魔力を外に出す。そこに血液を流し込む。そうして空中に血を浮かせることに成功した。これで血術が使えるということでいいか?
「よし、血を動かすことはできるな。ではこれから血術の基本の技というものを教える。」
そういいナイトメアはホワイトボードに書き込んでいく。
「まずは血のビームを放つ、血槍。そして血の壁を作る、血壁。で最後は、これは上級者編と思ってくれれば良いが、血器創造と言って、血で作られた武具を作るというものもあるの。」
血術に技なんてあったのか。言ってることは簡単そうだが……やればわかるか。まぁお手本を見せたあとナイトメアは用事があると言って裂け目を通って別の場所に行ってしまったのだが……1人で黙々と練習したら案外すぐ血槍と血壁は使えるようになった。再生力を活かして、腕に力を込めていれば、自然と血が湧き出てくるのでそれを魔力で成形して体外に押し出すと言った感じで血術は使えた。いかんせん流れている血を使うだけでは量が足りなかったのだが、血をどんどん作って押し出していくことで、一応ビームと言えるほどの血槍と壁と言えるほどの血壁が使えた。元のやつじゃせいぜいマッチの火ぐらいしか消せない。で血槍は精度と威力に、血壁は大きさと硬さに問題があるがまぁいいだろう。これから直していけばいい。……少なくとも今のままではあの血腫には勝て無さそうだ。
血器創造は少し特殊で他のと違いもっと繊細な操作が必要でナイフを作ろうとしても刃の部分が切れ味が悪い状態のまま作られてしまい苦戦している。
それでも鎧や鈍器のようなものは作れた。まぁ耐久性に難があるという問題(ちょっと高いところから落とすと割れる)があって使い物にならないが……
ここまで出来れば流石に赤ん坊に頭を下げなくてもいいのではないのだろう。ようやく赤ん坊と対等になった…いやそれではダメだろう。せめて俺の方が頭が上の位置にないと。
そんな具合でナイトメアが戻るのを待っていると戻ってきた彼女に偶然自分の血術を見られた。
「おー1日とはいえ案外様になっておるではないか。これならば明日には魔式を教えられる。良かった、よかった。」
そういい、ハハッと彼女は笑った。それにしても思ったよりも魔力の操作というものが直感的に、さらにいえば四肢を操るぐらい簡単で助かった。そりゃ生まれたばかりの赤ん坊だってできるだろう。
結局そのあと屋敷に帰えることになりご飯を食べようと思ったが、体の吸血鬼化が進んでいるのかそこまでお腹が減らなかったので、さっさと寝ることにした。明日は魔式を教わるわけだが……こう、とんとん拍子で物事が進むと少し不安だな。何かここら辺で一回躓きそうなものだが……ま、そうなったらそうなったでその時の俺がなんとかするだろ。さっさと寝よう。
血を吸わないのに吸血鬼という種族名で呼ばれている理由はあります。結構重要な謎。




