カラクレナイ#35 気まずい空気なのだが
謎の大男に連れられ城の中に入る。文字面だけ見るとなんというか……すごい含みがある文章だがやってることは至って健全である。
まぁまだ未成年である俺が言うことじゃないだろう。それよりもだ。この大男、従者を必要としていたと言っていった。それに城に顔パスで入っていた。つまりここから弾き出せる答えはただ一つ。
この大男は四聖の1人である。それも周りのざわめきから察するに噂のライノと言う四聖だろう。
俺が顔を知らない四聖はこの城の所有者の王様とライノだけだが、王様が通る時にわざわざメイドたちが騒ぐわけがない。そりゃそうだ。普段から出くわしてるだろうになんで驚く必要がある?
ということで消去法でこいつがライノということになる。はぁ……よりにもよって一番面倒くさそうなのに捕まった。これだったらこの城の衛兵に捕まったほうがマシだった。師匠から聞くに相当碌でもない奴なんだろうが……大丈夫かなぁ。
今は互いに無言の中、ただ黙々と廊下を歩いている。うーん、話すこともないからなぁ。無理に話して地雷を踏んでもいやだし……この気まずい雰囲気をどうするか……
というか、改めて見てもすごいガタイだ。2mは余裕で越してるだろう。2m50cmぐらいはあるんじゃないか?そのせいで威圧感が半端ない。
着てる服も毛皮で作られており、ファーもついた服で結構ゴツい。極め付けは背中に背負ってる身長も超える大きさの何か。
おそらく武器なのだろうが……布でぐるぐるまきにされてあって武器種はわからない。血器創造がある中で自身の武器を持っていると言うのはなかなか珍しいな。いやまだ血器創造ではないとは言えないがわざわざ出しておく意味もない。相当な業物なんだろうか?
「ところで……貴様は何故四聖を一目見ようと見物しにきたのだ?あのような連中、好きで見るわけではあるまい。」
「え?そうですねぇ……」
ぐ、まずい!早く何か考えろ!
「あっ、強くなるためですよ。四聖の方々は魔界で最も強い吸血鬼じゃないですか。だから見るだけで参考になりそうだなぁって……」
「ふむ……?」
静かになって気まずいな……この理由で大丈夫だったか?何も情報がないから対策しようがないぞ……
「まぁいい。だがあやつらは参考にはならんと思うぞ。何せ自ら率先して戦おうとしないからな。」
「え?」
こいつ四聖だよな?急に身内をディスり始めたぞ。確かに俺も知ってる四聖であるナイトメアや燈魔さんが戦ってる姿をあまり見た記憶がないが……
「奴らは自らの手を汚さない。四聖には魔界を守る責務があると言うのに……王は城に籠り、あの忌まわしい混血のゴミは下々に任せ現場に出ようとしない。最も嘆かわしいのはナイトメアとか言う老害だ!!最も強いと言われておきながらいつもどこにいるかもわからない!!」
「は、はぁ……」
ヘイトスピーチにも程があるだろ。話の中に出てきた混血のゴミは……燈魔さんか?混血っていうのは純血の対義語だろうが……こいつ、グローが言ってた純血至上主義者か。気をつけないと俺も差別されるな。
というか四聖の魔界を守る責務なんて個々の解釈があるだろう。それに他人が口出しする権利はない。
ナイトメアに関してはまぁ……老害ってなんだよ。どこにいるかわからないと言うのはその通りだが……
「四聖たるもの、圧倒的な武力で血腫を駆逐し、民にその姿を見せることで安心感を与え世を安定させるべきだ!貴様もそうとは思わないか?」
う、声がでかい……まぁどう考えるかはさっき言った通り個人の自由だからいいと思うが……圧倒的な武力で捩じ伏せるタイプの思想は圧倒的なカリスマ性もないと成り立たないと言うのが俺の考えだ。今んところこいつにカリスマ性を一ミリも感じないのでこいつには無理だと思う。
「ハハ……そう言われるとそうかもしれないですねぇ……」
「ふん……まぁ理解してもらわなくてもいい。吾輩は吾輩の道を進むだけだ。」
空返事なのがバレたか。流石に自分へのヘイトがわからないほど鈍感ではないか。
「道と言えば……この廊下はどこまで続いてるんですか?もうかれこれ5分かそこらは直進し続けてますよ?」
「む?それは……知らん」
えぇ……?じゃあいつになったら集会をする部屋に着くんだよ……この気まずい2人きりの空間を早く脱したい……




