カラクレナイ#33 いつかの戦いの記憶
四角い世界に閉じ込められてたぜ
ナイトメアが合図を言った直後、頭にとてつもない頭痛と耳鳴りが響く。その代わり脳内で誰かが戦っている光景がまるで当事者のように鮮明に感じられる。これが……ナイトメアの記憶?
ナイトメアが拳を振るたび自分も拳を振ったような疲れを感じ、ナイトメアが魔式を展開すると身体にとてつもないエネルギーが駆け巡っている感じがする。
そのどれもが今の俺の力量じゃ到達し得ないパワーであり、物量である。そのせいか今の俺じゃ許容できない力が身体中を駆け巡って全身が痛い……まぁこのくらいならまだ何とか……
そうして一通り記憶が過ぎ去った頃には頭痛と耳鳴りも無くなり、ナイトメアの拳の振り方や魔力の扱い、魔式の使い方が身体にインプットされてきていた。その代わりに身体中に筋肉痛広がってしばらくはまともに動けなさそうだ……せっかく覚えた技術が使えないなんて残念だな。
それでいうとこれらの覚えた技術たちは驚異的だ。これまでの俺の戦い全てが素人同然のレベルに思えてくるような練度の戦闘技術……これならもっと精度の良いパンチも魔式も使えるようになるだろう。いやはや、物凄い体験をさせてもらった。
でナイトメアの記憶をある程度見てそろそろ終わりかな……と思っていた時だった。
また頭にとてつもない頭痛と耳鳴りが響いたのだ。それもさっきとは比にならないレベルの。
一体何が?と思ったが答えは簡単。新しいナイトメアの記憶が届いたのだ。だが目の前に広がったナイトメアの記憶はこれまでのものとは比べ物にもならない激しさだった。
その戦闘の中でナイトメアは七色の光を纏い、まるで獣のように戦場を飛び回っていた。左手には雷の槍、右手には炎の拳。左足には旋風、右足には津波。四つの元素はそれぞれ地形を目に見える形で変えていく。地面は抉れ、空は割れる。
その記憶の中で俺は今までにみた記憶とは桁違いの計り知れない痛みを経験した。そもそも俺如きが覗き見て良い記憶じゃないんだろう。今までのはギリギリ俺が見れるレベルだったが……これが渡ってきたのは多分ナイトメアの手違いだ。そもそも耐えられる器ができていないんだ。そのせいで理解できないまま零れ落ちた情報が痛みになって身体に現れているのだろう。まぁ要するにさっきまでの筋肉痛が何十倍になったってことだ。もはや筋肉以外、骨とかも痛くなってきた。新手の拷問か?
まぁ唯一、その記憶の中で俺が感じ取れたもので心地よいと思ったものがある。それは何かはわからないが体を包み込む圧倒的な多幸感。おそらくナイトメアがその時感じていたものなのだろうが……何かもっと大きい世界と繋がっているような安心感があった。決して戦闘が楽しいからではないだろう……いや、あいつのことだしそれもありえるか。
とにかく、その記憶が過ぎ去った頃には俺は床に突っ伏して体が全く動かない状態になっていた。かろうじて呼吸はできたが声も出ないし腕も動かせない。目は焦点が定まらないままだ。
「む?ようやく起きたか?……言わんこっちゃない。やはり体が動かんくなったか。無茶するでないと言ったのに……」
無茶させたのはあんただろ。と言いたくなったが、生憎今は声が出ない。なんとか瞼をぱちくりさせてコミュニケーションを取ろうとする。
「んぁ?そんなウィンクしても黄色い声は出ないぞ。お前にときめく要素がないんじゃ。お主にときめくぐらいならこっちの恋愛漫画の恋のライバルの方がトキメキ甲斐があるわい。」
気が利かないやつだな。ちょっとはこの体勢を変えてくれても良いじゃないか。なんで地面に向かってへの字で突っ伏さなきゃいけないのだ。いやそれよりも、読んでた漫画恋愛漫画だったのかよ。てっきりアクション多めの漫画を読んでるのかと。
「……じゃあ動けるようになったらまた来るぞ。その頃にはライノも見つかっておるじゃろうしの。」
と言いナイトメアは手を振りながら裂け目に入っていった。あいつ……この状態の弟子を置いてくのかよ……全く薄情な師匠なもんだ。というか後どれくらいこの姿勢でいなきゃいけないんだ俺は……
何処ぞの呪術で戦う世界の雷神のゲーミングバージョンが本気ナイトメアです




