カラクレナイ#17 急襲
本気を出せって言ったって……実のところ、最近本気を出していないのである。だっていつもの仕事に本気を出してると過剰火力すぎて逆にコスパ悪いし(というか反動で自傷する)修行してる時は必要な時が無いんだよなぁ。うーん、改めて考えると半年以上本気を出してない気がする。そう思うと結構100%で戦って無いな。久しぶりだが大丈夫だろうか?
「ハァ……本気を出せるかどうかは知らないが……全力は出してやるよ。……そういえばあんたの名前を聞いてなかった。」
「ん?俺の名前か?あぁそういえば自己紹介もせずにここまできたなぁ。俺は魔界の四聖でありこの大魔連合の盟主、荒川燈魔や。よければ燈魔さんって呼んでくれ。よし自己紹介も終わったしさっさとやろうや。」
そう言った後、睨み合いが数秒間続き沈黙が広がる。先に動いたのは荒川……燈魔さんの方だった。大きく踏み込んで俺の懐に入り拳を打ち込んでくる。さっきの戦いでもそうだったが、この人の戦い方はボクシングと拳法を合わせたハイブリッド拳法だ。あまり格闘技分野の知識はないがボクシングは素早いパンチで翻弄し、拳法は相手の攻撃を受け流しその力を利用し攻撃するはずだ。確か。
でこの人はさっき言った戦い方ドンピシャである。俺の攻撃は受け流されるが攻撃の手は止まない。なんなら一定距離離れると血術で遠距離攻撃してくる。と言うかなんでこの人は今俺が出せる全力の瞬についてこられてるんだ?ものすごく早いと思うんだが。
「はっ、速いだけじゃ俺を倒せへんで!さぁどうする?」
「チッ、どうすれば……」
今のところ戦況は五分、いや攻撃を当てれてない時点で俺が若干不利な状況だな。掴めば攻撃は当てられそうだけど絶対反撃を喰らうだろうし……
ここまではまともな一撃を貰わずガードし切れてるが、この人まだフェイントやディレイをあまり使ってない。だからどっちかと言うとまだ避けやすい方だ。ここから絶対被弾は多くなっていく。戦いの経験で負けてる以上技量で勝つことは不可能。だったらこっちは魔式の性能差を利用しドデカいのを当てて一発KOを狙う。
「なんや、避けてるだけやんか。単純な殴り合いじゃ俺に勝てへんってことかぁ?」
「別に……ただの殴り合い……程度ッ……でぇっ!!余裕だっての!!」
「ハハッその虚勢もいつまで持つかな?」
ってあれは……長ドス?血器創造で作ったっぽいな。拳以外もあったのかよ!いやいやいや、冗談じゃない……!これまで攻撃は避けると言うよりかガードしてまともに喰らわないようにしてきた。だけど刃物ってなると完全に避けないと……これまででもう大変なのに……速度も上回られてる以上避けるのは難しいぞ。
「こんなもんかぁ?姉貴の弟子っちゅうもんは。これじゃそこらの吸血鬼の方がマシやで。」
「言っとけ!!」
あぁもう!!刃物を持ち始めてから厄介さとすばしっこさが跳ね上がった!こいつ、徒手空拳はおまけ程度でドスの方が本業かよ!今んところ厄介な動きは死角からの突きだが……これは慣れた。と言うか何本か刺さったが吸血鬼の再生力でなんとかなる。なんと言うか……血器創造で作った武器はそこまで切れ味が良くない。普通の刃物であれば骨まで届いているであろう切り方だが案外浅い傷で止まっている。体が硬いのもあるだろうが……どうなんだろうか?
「ったく、なんやしぶといなぁ。ナイトメアの姉貴は耐久戦を教えるようなしゃばいお方じゃないと思っとったがな。」
「あぁ?何が言いたいんだ?」
「俺の負けや。」
……え?聞き間違いか?明らかに俺が不利だったが……一体どう言う風の吹き回しだ?
「このままやってもお前に耐久負けしとったしなぁ。お前の速度を超えるためにアホみたいな魔力を消費して身体強化しとるのに……お前は魔式で効率のいい身体強化をしている……こんなん勝てるわけないやん。」
「ん?それだったらあんたも魔式を使えばいいだろ。あんたぐらいの実力者だったら当然魔式を習得してると思っていたが……」
「アホか。こんなお遊びの戦いで、しかも相手は吸血鬼になりたてのガキやで?そんなんに本気だしとったら俺のメンツ丸潰れや。そりゃ俺が本気出せば一瞬でお前を倒せるけどな。」
えぇ??そ、そう言うものか?まだガキだから大人の事情はわからないなぁ。……あぁそうだった。当初の手紙を渡すっていう目的を忘れてた。
「じゃあお望みの戦いも終わったし、そろそろ手紙を受け取ってもらえるか?」
「ん?あぁそういう話やったなぁ。それやったら受け取らせてもらうで。……どうせやったら一緒に読まないか?俺の予想やったらお前のことが書かれているはずや。」
そういうと燈魔さんは受け取った手紙を掲げた。まぁ、確かに中身は気になるが……俺のことが書かれてるってのはどういうことだ?不甲斐ない弟子なので手加減してくださいとかか?
「内容は気になるが……その手紙、確かものすごい解読がむずそうな魔術がかかってるぞ?解除できんのか?」
「あぁ、それか。それがな、姉貴が送ってくる手紙は本文がその魔術なんや。これがものすごい神業でな?普通、魔術はこんな適当な文章で構築できんわ。しかも長文になればなるほどその魔術は自動的に強くなる。」
魔術が本文?つまりあいつは適当に喋っただけで火を出せたりするってことか?それって……いいのか?
「例えるなら、魔術はパソコンのプログラムみたいなもんや。C言語やJavaとかの決まった言語を使わんとあかんのに、姉貴は自分の言葉でプログラムできる。どんくらいすごいか分かったか?」
「まぁ……一応は?」
正直、レベルが違いすぎて実感が湧かないが……というか俺は魔術使えないんだった。ナイトメア、そんなすごいんだったら俺にも魔術を教えてくれればよかったのに……
あとなんで燈魔さんはプログラムについて知ってるんだ。って思ったがエレベーターがある世界だ。プログラムぐらいあるだろう。言語が同じなのは気になるが。
「まぁここの理解はしなくてもええ。どうせ俺には無理な話や。さて、話を戻すとこのシステムを知らない奴が頑張って魔術を解除しても文章は消え、残るのは僅かな喪失感と白紙の紙だけ……考えれば考えるほど良くできたシステムやろ?」
「そうだな。で?あんたはその知ってる方の人間なんだろ?さっさと読んでくれよ。」
「まぁまぁ、そんな焦んな。読むには……こう、ちょちょいのちょいや。」
そういいあいつは指をクイっと動かす。すると手紙を包んでいた呪文の束が宙に並びあいつのいう通り文章になっていく。えー俺は魔界の語学を通ってないのだが……なんて読むんだこれ?
「ふむふむ、なんやって?あー近いうちに大魔連合本部に血腫による襲撃が起こるぅ!?わしは出れんから代理としてそこの庵を自由に使ってくれ。だぁ?ったく姉貴、なんちゅうとんでも情報を……」
あいつ、勝手に俺のことを使っていいって言いやがって……で?血腫による襲撃?俺の知る限り血腫は巣の中でしか群れないはずだが……一体どういうことだ?
いろいろ考えてふと燈魔さんの方を見ると目を閉じ魔力探知をしているようだった。すると急に目を見開き驚いたような表情を浮かべる。一体どうしたんだ?
「あかん……これはまずいで……!!おい、庵やったか?今すぐ外に出て迎撃しに行け。俺は他の奴ら呼んでくる。」
「おい、急に何言ってんだ?外っつったって何もないぞ?」
「目じゃなくて魔力で感じろ。ただ俺から言えんのは、姉貴は伝えんのが少し遅かったってことや。つまり……」
「もう襲撃は始まっとる!!」
ナイトメアさんは「あ」と言っただけで隕石が落とせます。すごい!!(小並感)




