カラクレナイ#10 害虫駆除と同じ
あれから数日経った後、ついに血腫狩りに行く日がやってきた。どうやら元々ナイトメアが受けるはずだった仕事を回してくれたらしい。ナイトメアが受ける仕事ってことは難しいんじゃ……とは思ったが、何も考えていないようで何も考えていなそうなあの人のことだし大丈夫だろ……どこも大丈夫じゃないな。すごく心配になってきた。
で今はナイトメアの裂け目に投げ込まれ目的地に着いたところだ。どうやらここが今回の仕事で倒すべき血腫がいる所らしい。魔界に来てから修練場かナイトメアの屋敷にしか居なかったからこれが初めての外出だ。うーむ。空が赤いのは知っていたが地面もこんな赤いとは……生えてる植物も何だか禍々しいし……いや、どちらもよく見ると肉のような質感だ。まさか魔界は肉で覆われてるのか?
「なわけないじゃろ。ここは血腫どもが群がって形作られた奴らの巣じゃよ。奴らのめんどくさいとこでもある。ここは血腫どもが増殖しやすい環境になっておる。どこから生えてくるかもわからんから注意を怠るな。」
「だぁっ急に喋りかけてくんな!ん?って言うか何でお前の声が聞こえんだ?お前今屋敷にいるんじゃないのか?」
「ふふん。お前が寝てる時に勝手に魔力を繋いでおいた。魔力を通じてわしの意思を伝えておるんじゃ。まぁ平たく言えばテレパシーじゃな。ついでに言えばお前の思考を覗くことだってできるぞ。お前はできんがな。」
「はぁ?俺のプライバシーは?安寧を返せー!!」
「黙れ。今のお前は戦地の真っ只中にいるんじゃぞ。お前の脳内は後で覗いてやるから、集中しろ。ほれお前の目の前に来客じゃぞ。構えろ。」
「覗かれることは確定してんのかよ……」
俺のプライバシーは死んだとして、ナイトメアの言う通り気づけば目の前に一体の血腫が立っていた。あの時出会った血腫と同じようにただの肉塊にしか見えないが……血が滴る右腕の刃に背中から伸びた触手……思い出すだけで寒気がする。だがあの時とは違う。俺は対抗する力を得た。頼れる(?)師匠もいる。俺はもう昔の俺じゃない。一歩ずつその血腫に歩みを進める。歩く間に魔式を展開。そしてオーラ状態に……ナイトメアから聞いたがこれの技名は「瞬」と言うらしい。瞬になって戦闘準備は万全。と思った時ナイトメアから呆れた声が出た。
「お前……“どこから生えてくるかわからない”ってわし言ったじゃろ。もうちょっと目を凝らせ。」
「あぁ?どこからって言ってもあれ以外……ん?」
そう言われるとあの血腫以外にも後ろに……1、2、3、……え?
「いや、一体何体いるんだ?!」
頭にじゃから言ったのに……と言う声が聞こえてくるが一旦状況を整理すると、一体だと思っていた敵が10体、いや数え切れないぐらいいた。と言う状況だ。
控えめに言ってやばい。さっきまで必死に勝てるイメージをしてたのにもう全部ぶっ壊された。行けっかなぁ俺
……いや奥の手はある。本気を出せば余裕だろうが……
「一応言っとくが、血腫どもはこの領域内では際限なく増える。それを止めるにはこの領域の核を壊さないといけない。基本的に中央に核はあるが……絶対に核の周りにはその領域の主がいる。そいつを倒し核を壊すのが今回の仕事内容じゃ。わかったか?」
「そう言う大事なこと先に言ってくれないかなぁ!?」
はぁ……つまりヌシ倒して核壊せばいいのか。そうするまで雑魚が無限に湧くと。今の俺は雑魚にビビってるわけだが、果たして主まで辿り着けるのか?そんなことを思っていると血腫たちが奇妙な叫び声を上げながらこちらに突撃してきた。あーもーどうにでもなれだ!!全部ぶっ飛ぶしてやるよ!!
「まずは1発!!」
魔式を用いたパンチによる攻撃。ナイトメアによるとこれの技名は魔式「破」らしい。これを走ってきた血腫の腹に喰らわせる。すると予想よりも遥かにぶっ飛び後方にいる奴らも巻き込んで一掃できてしまった。結構数がいたような気がするが動いてるやつは一体もいない。本気を出していない状態でこれ……もしかして俺って強い?
「まだまだくるぞ。気を緩めるでない。」
「あぁっ無限湧きだもんな。ったくこれが初めてだってのに……」
追加で注文が入ったらしい。ここのヌシの奢りだ。俺はこんなの頼んでねぇしいらねぇぞ。あーさっさと倒して核壊しに行こう。うんそうしよう。そうと決まれば前進あるのみ、また血腫たちが群がってきてもさっきのようにぶっ飛ばせばいい。はぁ、気乗りはしないけど頑張るか。
「おーらよっとっ」
また直ぐに血腫が湧いて出たので応戦しながら進んでいく。肉の塊を殴る感覚は人とは違ってちょっと不快だなぁ。こう……ぐにゃっとしてて手応えがイヤな感じだ。しかも血腫たちは中心に向かえば向かうほど量が増えてきている。掃討自体は簡単だからいいものの四方八方から湧いて出てうざったい。後がむしゃらに走ってるだけだからこっちに核があるかもわからない。確実に処理する量は増えてるけど……
「ってナイトメアぁ?聞いてんだろ?だったらせめてナビゲートぐらいしてくれないかぁ?」
「ナビゲート?あー知らんがそんまま直進。」
「もっと真面目にやってくれ」
ったく。ま、大体中心の守りたい場所に行くほど敵って増えてくだろうし一応進むべき方向は合ってんのかな。多分。そしてあれこれ考えてる間にもどんどん禍々しくなる周りの景色にも気づかず俺はただ夢中で中心へと走っていった。




