表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【中編】そうです、私が元女王です  作者: 紺青


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/16

【番外編】見ぃーつけた。 side バーナード

注:ホラーではありません。いや、ちょっとホラーかも?

バーナードの回想。時間軸は本編と同じ。ちょっと長めです。


一話完結。

見つけた。

エレノーラ、今度は逃がさない。

大事に大事に囲って、愛して幸せにするから。

だから、僕から離れることは許さない。


「アボットが好きなの!!」

胸ぐらをつかんでそう言い切った瞬間に、君の虜になった。

前世で僕の心臓をつかまえてしまった君が悪いんだよ。


◇◇


前世恋人だったルーチェに気づいたのは、彼女が三歳の時だ。

まさかこんなすぐ傍にいたなんてね。

出世のための人脈作りのために渋々出席した城の文官の懇親会で見つけた。


当時は財務部に配属されていて、上司に順に挨拶して回っていた。

家族揃って参加しているルーチェの父に挨拶に行ったところ、ルーチェの双子の兄が飛び出して行った。

ルーチェを抱っこしていた彼は、「ごめん、バーナード君、ちょっとルーチェを頼む!」挨拶に来た僕にルーチェを託して兄の方を追いかけていった。


子供に慣れていない僕は、一瞬戸惑ったが仕方なくルーチェを抱っこした。

父親から知らない人間に抱っこする人が代わっても、嫌がることはなくてほっとする。

「あらー、ごめんなさいね、あの人ったら。重たかったら降ろしてくださいね」

おっとりした様子で夫人が告げる。

ルーチェを見ると、猫のような真ん丸な瞳でこちらをじーっと見ていて、目が合うとにっこり笑った。

子供は苦手だったけど、意外とかわいいかもしれない。

ふわふわとしていて、甘い花の香りがする。

なんだろう? 胸がどこか切ないような締め付けられるような感触がある。


その次の瞬間、ルーチェのうなじの下の辺りに見覚えのある花の形をした痣を見つけた。

ちょうど、服で隠れるか隠れないかの微妙な場所に。


「あの、この子、ルーチェは何歳ですか?」

「三歳になったばかりなの。もう赤ちゃんでもないのに、女の子だからって甘やかして抱っこばっかりしてるから、降りようとしないでしょ? ごめんなさいね」

ルーチェの花の形をした痣を指でなぞると、くすぐったかったのかルーチェがきゃっきゃと声を上げて笑い声をあげた。


エレノーラが僕の目の前で処刑されてから四年。

この子は三歳。

もしかしたら?

甘やかな期待が湧いてくる。そして、よぎる不安。


ルーチェやその家族に不信に思われてもいけないので、ルーチェの兄を脇に抱えるようにして帰ってきたルーチェの父親にルーチェを返した。目にしっかりとルーチェとその痣を目に焼き付けて。


それから懇親会を適当なところで切り上げて、城の書庫に直行して、貴族の家系図を調べる。

ルーチェの生家の侯爵家に、妖精の血は入っていないはず。


ならば、ルーチェにあるあの痣はなんだ?

バーナードの前世の恋人にも、あれとそっくりな痣がまったく同じ場所にあった。

魂に付随するものなのか?

妖精の力を持っている証なのか?

それとも、偶然なのか?


やっと、エレノーラの生まれ変わりに出会えたかもしれないのに、喜びより不安で心が騒めいた。

もう二度と彼女を失いたくない。

あんな思いをするのは二度とごめんだ。


◇◇


僕は、エレノーラが処刑されようとする瞬間に前世を思い出した。

当時は騎士団に所属していて、女王が処刑される処刑場で警備をしていた。

自分がかつて愛していて、置いて行ってしまった女性がボロボロの姿になって首を落とされようとしている。


なんだ?

どういうことだ?

なにが起こっているんだ?

頭に前世の記憶が巡った次の瞬間、「やれ」宰相の声が聞こえた。


「エレノーラ―――!!!」

たまらなくなって、声の限りに叫ぶ。

職務を放り出して駆け出すけど、興奮した群衆に押しやられる。

彼女の名を叫んだけど、次の瞬間に彼女は骸になっていた。


「嘘だろう……」

僕はなんのために生まれてきたんだ?

前回は愛する人を残して、今回は愛する人が殺されるのを見て。

なんでこんな……。

残酷な巡り合わせなんだ……。

がっくりとして、膝をつく。


これは何かの罰なのか?

そんなに僕とエレノーラのしたことは罪深いことなのか?

恋に落ちてはいけなかったのか?


前世の自分は職務を放棄し、恋に溺れた愚か者だ。

確かに自分の力を過信し、驕っていた。

自分は優秀な騎士だから、なんとかなると思っていたんだ。

自分を捕獲しに来たのは、逃亡に手を貸してくれるといっていた親友の騎士だった。

そして、エレノーラが娘を生んでいる間に、僕はあっけなく処刑された。


前世の記憶と前世の恋人の処刑を見て、僕の心は闇に沈んだ。

女王処刑とその後の混乱に乗じて騎士の仕事を休んで、酒に溺れた。


でも、酒に溺れているうちに、心の奥からフツフツと怒りが湧いてきた。

上等だよ。

この世に神なんていないんだろう。

そして、僕とエレノーラは結ばれない運命なんだろう。

でも、そんな運命なんてぶっ壊してやるよ。


僕はエレノーラが娘を生んだ時にひっそりと処刑された。

そして、同じ世界に生まれ変わっている。

ならば、エレノーラだって、同じ世界に生まれてくるかもしれない。

そうしたら、やることは一つだろう。


力が必要だ。

あの自分の利益しか考えていない宰相みたいな。

革命を起こして玉座についた国王陛下のような。

誰にも口出しされないような権力が必要だ。


騎士を辞めて、文官になった。

もう二度と自分や自分の愛する人が殺されないように。


◇◇


そんな邪な思いを胸に抱いて、文官になったかいがあった。

ルーチェにも出会えたし、こうして調べ事をすることもできる。

僕はひっそりとほくそ笑んだ。

今はまだ財務部の一文官だが、もっと中枢へのし上がってやる。


僕はルーチェに出会ってから、仕事の合間をぬってに城を探索した。

前世、女王の護衛騎士をしていたので城の内部には詳しい。

あるはずだ。

妖精や歴代女王について書かれた書物が。


「なにをしている?」

きっとここにあるはずだと当たりをつけた東の塔の片隅にある倉庫で、突然後ろから声をかけられた。


「……」

とっさにいくつも言い訳が頭をよぎるが、言葉が出てこない。

そこにいたのは、国王陛下だった。

格が違う。久々に背筋にピリッとした緊張が走る。

女王制度を廃止し、時の権力者であった自分の父の処刑を厭わず、その後も国を安定させるために奔走したという。

逆光のせいで、その表情は伺えない。


『職と名を言え』

「財務部、文官、バーナード・ペンフォード」

国王陛下の言葉は不思議な圧があって、口から勝手に言葉が出てくる。


『なにをしている?』

「妖精や歴代女王について書かれた書物を探している」


『なんのために?』

「ルーチェに花の痣がある。それがなんなのか知りたい」


『ルーチェとは誰だ?』

「ワトソン侯爵家の長女だ」


『お前との関係性は?』

「彼女は前世で女王だった。前世でエレノーラは僕の恋人だった」


『お前の前世の名前は?』

「アボット・ハイド」


「女王陛下の……」

せめて罰は僕だけでルーチェを巻き込みたくないのに、言葉が勝手に出てきてしまう。

不思議な王の力に逆らうことなどできなかった。

しばらく沈黙が流れる。


今世でも間違えたか?

自分の力を驕ったか?

ルーチェを、エレノーラの生まれ変わりを巻き込んでしまったのか?

頭の中が後悔で埋め尽くされた。


「ついて来い。お前の見立てはあっている。かつてここには妖精の蔵書があった。女王陛下の処刑後全て、賢者と燃やした。だからない」

国王陛下の表情のない目を見る。


昔使われていた農作業の道具の収められている倉庫の奥の棚を国王陛下が触ると、通路が現れた。

手招きされて、黙ってそれに従う。

その先にはただぽっかりと空いた洞窟のような空間があるだけだ。

土臭くて狭苦しい。


「ここでの会話は誰にも漏れない。ペンフォード、なにが知りたい?」

「ルーチェに花の形をした痣がありました……前世のエレノーラと同じ場所に。あれが妖精の印なのかが知りたかったのです」

「フェリシアの体にもある。確かに妖精の血筋の女児だけその痣を体のどこかに刻んで生まれてくるようだ。その痣が血だけではなく魂に紐づくものなのかはわからない」

「ルーチェは、前世の苦しみを再現するために生まれてきたんじゃない。彼女に妖精の力があったらと思うと怖くなって……」

僕は丁寧な言葉を使うことも忘れて自分の思いを吐き出してしまった。


「妖精の力は血によるものみたいだが、生まれ変わりとなると力を持っていても不思議ではない。事例がない。文献にもなかった。だが、二度と妖精の力を悪用しないと誓う。目を光らせておこう」

「ありがとうございます」

僕の不遜な態度も気にせず、言い切る国王陛下に深く頭を下げた。


「お前のためじゃない。女王陛下には借りがあるんだ。ここでの会話は他言無用だ。あと、いくら前世の恋人だからって関係を強いるなよ。もし、そうなら王命で介入する」

「やけに肩入れしますね……」


「……先に謝っておく。女王陛下の処刑を止めなかった。彼女の意思だ。そして、国とフェリシアを任された。彼女には幸せになる権利がある」

「……歴史的に見ても必要だったことは理解しています。私が望むのも彼女の幸せですよ。あと強いるだなんてそんなことしませんよ。見守るだけです」


「……フェリシアにもかかわるなよ」

「御意。すべては王のお心のままに」

もう一度深く頭を下げて、上げた時には城の中庭に一人ぽつんと立っていた。

でも、あれは夢ではない。

そんな確信に近い思いがあった。


国王陛下との不思議な邂逅の後、すぐに財務部から宰相付き政策室へ移動になった。

実力主義になったとはいえ、異例の早さの出世だった。

願ったり叶ったりだが、部署を移動するとルーチェとの縁が切れてしまう。

あせっていたところに、ルーチェの父親が家庭教師に悩んでいると耳に挟んだ。

上手く話を持っていって、ルーチェとその兄の家庭教師の座を獲得した。


仕事以外はワトソン侯爵家へとせっせと通った。

ルーチェはもちろんだけど、双子の兄であるエリオットもかわいかった。

そろいのリンゴのような赤い髪に瞳を持った対照的な性格の双子にふりまわされる日々は思いのほか充実していた。

僕の灰色だった日々に潤いが増えた。


ルーチェが前世の事を思い出した日のことは忘れられない。

「あぼっと……」

前世の僕の名前をつぶやいて僕の顔を見ると。ルーチェの頬が赤らんだ。

自分の唇の端が上がったのがわかる。

ああ、やっと思い出してくれたんだね、エレノーラ。

それならもう手加減はいらないね。


それから焦がれるような目で僕を見るルーチェの視線を感じた。

騎士をしていたし、視界が人より広いんだ。

体の芯からぞくぞくした。

前世の恋に囚われているのは僕だけじゃないんだね。


前世では身分差だとか照れもあって、正直に自分の気持を伝えたことはなかった。

だから、言葉を尽くしてルーチェにプロポーズした。

なのに、断られた。


ルーチェはエレノーラじゃないのか?

僕の心は間違いなく彼女を欲している。

でも、ただの思い込みなのか?

彼女の魂はエレノーラなのか、確信が欲しかった。


今世では、文官としても伯爵家の長男としても社交を頑張っていたおかげで色々な伝手があった。

その繋がりで不思議な絵師の話を聞いた。

その絵師は聴覚には問題はないが、心因的なものなのか喉を傷めているのかはわからないが話すことはできないそうだ。


絵力もさることながら、口のきけない彼女には不思議な力があるという。

嘘のような話だが、彼女はその人の魂の色が視えるそうだ。


ただ、仕事を受けてもらうためにはこちらの意図を全て話さなければならないという条件付きだった。

渋々、話をぼやかしながら話すと同席した吟遊詩人だという兄の「女王陛下の恋人か……」という言葉に絵師の女性が頷いた。


どうやら、二人は僕の処刑後に女王となった彼女が吟遊詩人だと言って侍らせていた孤児の兄妹らしい。

前世のルーチェはこの二人に僕について話すくらいに親しくしていたようだ。


ルーチェに怪しまれてもいけないので、絵師の女性だけを連れて侯爵家へ向かった。

その女性はルーチェを一目見るなり泣き出して、それをルーチェはやさしく抱きしめた。

なにも聞かなくても、二人の間に流れる空気でルーチェは前世ではエレノーラでその記憶もあるということを確信した。


その頃にはルーチェの前世がエレノーラだろうが関係なく、ルーチェに夢中になっていた。


バーナードは自分が小賢しく裏から画策するタイプだから、まっすぐで無邪気なルーチェを好ましく思っていた。

前世のエレノーラも根っこはルーチェと一緒で、傲慢だとか我儘と言われていたのは求めていた愛や自由が得られなかった子供の反抗のようなものだった。

貴族や民にそう思わせるために、周りに作られていた部分も大きい。


ルーチェが求めるのは豪華な宝石でもドレスでもない。

権力でも、まして人を虐げ見下すことでもない。

ルーチェがこよなく愛するのは家族との温かい時間で、双子のエリオットが騒がしいせいか大人しい性格のルーチェはいつも家族団欒をにこにこと見守っていた。

そんな彼女が愛おしい。


そんな彼女の環境と時間を丸ごと守りたい。

願わくば、彼女の愛する家族に自分もいれてほしい。


僕は言葉も行動も惜しまなかった。

それなのにバーナードに懐いているように見えたルーチェは距離を置いた。

家庭教師を僕から女性に替えた。

思春期特有のものか、照れているのかと思い、その時は彼女の気持ちを尊重した。

だって、相変わらず兄のエリオットの家庭教師に出向く僕へ向ける視線に変わりはなかったから。


でも、その後も僕が勢いで押すのに、押した分だけルーチェは引いていった。

なぜなんの障害もないのに、躊躇するんだい?

年の差を気にしているのか?

立場を気にしているのか?

時折、沈み込んで考えているルーチェを見るとそれだけではない気がした。


ルーチェが全寮制の学園に入学したのを機に、恋愛経験がない僕はとりあえず引いてみることにした。

だからといって、野放しにする気はない。

伝手を使ってこっそり学園を視察しに行った。


おかしい、ルーチェは平気そうだ。

僕は気が狂いそうだというのに。

ルーチェに会いたい。

ルーチェと話したい。

ルーチェに触れたい。


ルーチェの生家の侯爵家に足しげく通いルーチェの両親と交流を深め、ルーチェに婚約の申し込みをしている者がいないか探る。学園にも情報網をはった。


ルーチェは僕の贔屓目だけじゃなく、可愛い。

真っ赤でりんごのような髪と目。

そんな派手な色彩をもっているのに、性格は理知的で控えめで、顔立ちも整っていた。

気位の高い侯爵令嬢。

その外見からはじめは遠巻きに見ていた令息達も、学園で同性の友人と笑って話すルーチェに目を惹かれていったようだ。

実際に話してみると気さくでおもしろい。

そして、なによりふんわり笑う気の抜けたような笑顔が可愛い。

心許した人にだけ見せるその笑顔。

それを手に入れたい気持ちは痛いほどわかる。


ルーチェに寄ってくる男は次から次へと湧いてくる。

ルーチェに手出しする奴には他の女をあてがった。

そう、運命なんていくらでも簡単に作れるからね。

昔のように正面から挑んでいくようなバカなまねは、もうしない。


裏で工作しつつも、表向きにはなんの変化もなく歳月は流れていった。

おかしいな。

予定ではルーチェが十歳までに婚約して、十六歳で結婚しているはずだった。

人生は思うとおりに進まない。

仕事とは違って。

そう僕の変化といえば、年を重ねたことと順当に出世したことだけだ。


ルーチェのデビュタントのパートナーを他の奴に譲るわけもなく、当然のようにその権利を得た。

デビュタント前の練習で、僕のリードで楽しそうにダンスを踊るルーチェ。

やっぱり僕たちは一緒にいるべきだと思わない?


そして迎えたデビュタント。

我慢できなくなった僕はルーチェを婚約者扱いした。

ルーチェの目の中にまだ、僕への思いがある。

そんな気がして、交際を認めさせた。


そんなルーチェ中心の僕の行動に周りは勝手に騒いだ。

「お前、幼女趣味だとか、年下好きとかさんざん言われてるけど、頭大丈夫? あんまり無理強いすると陛下からストップ入るからな」

陛下の側近のジンさんにある日こう忠告された。

どうやら、僕がルーチェに関係を強いていないか監視しているようだ。


「一度死んだことのある人間に怖いものなんてないんですよ? それに、目の前で愛する人を殺される瞬間を見たら、生きて一緒にいられるだけで幸せなんです。それ以外のことなんて些末なことでしょう? それにルーチェの嫌がることはしてませんよ」

そう言ってにっこりとほほ笑む。


「うわー、なんで俺の周りってこうイッちゃってる奴ばっかなの? まぁ、君達が幸せならいいんだけどさぁ。本当に無理強いだけはやめてね」

自由人のジンさんにそういわれるってことは、僕の行動は相当おかしいのだろう。

まぁ、改める気はないけど。


それから、学園を卒業し、見事文官試験に合格したルーチェを自分の部署に置いた。

ルーチェが優秀なのはもちろん、権限やら人脈やらを全て使った結果だ。


プライベートでも仕事でも可能な限りルーチェと時間を共にした。

そして、根気よく彼女の話を聞いた。


なんだ、ルーチェは僕の幸せを想って身をひいたのか。

前世の僕が言葉や態度で表現しなかったせいで、自信がないみたいだ。

なら手加減はいらないな。

僕が君としか幸せになれないってことをわからせればいいんだね?

不安を全部吹き飛ばせばいいんだな?


それからはどんな手でも使った。

あまり気は進まなかったけど、ルーチェの気持ちを試すようなことまでした。

ルーチェの気持ちが固まってからは、婚約して結婚まで迅速にことを進めた。


婚約を決めてからのルーチェもそれまで頑なだったのが嘘のように、二人でいることに納得してくれた。


大丈夫。

だって、シンプルに僕たちは幸せになるために生まれ変わったんだから、一緒にいるのが必然だろう?


ルーチェと両想いになって、無事結婚した僕には最近悩みがある。


「ねー、バーナード聞いてる? どっちが好き?」

今日は新居に置く花瓶を見に来ている。

ルーチェの知り合いにガラス工房で働く人がいて、すごく素敵だから一緒に選びたいと言ったから、こうして二人で見に来ているのだ。


「んー、ルーチェかな?」

真剣に花瓶を見比べてるルーチェが可愛くて、そのまま口に出してしまう。

前世では堂々と二人で外を歩けなかったから、デートしているとつい浮かれてしまう。


「違うの。うれしいけど、今はそんなことを聞いてるんじゃなくて」

少し頬を赤らめて睨んでくる妻がかわいい。

バーナードに心開いて、婚約してからのルーチェは笑ったり怒ったり、素のままのびのびしている。

本来の彼女はきっとこんな風に天真爛漫なのだろう。


「あのね、私だってバーナードのこと好きだから」

バーナードが黙っていると、背伸びしてこそっと耳元に囁いてくる。

そう最近の僕の悩みは、なんの憂いもなく愛を囁くようになった妻がかわいすぎることだ。


「予定変更して帰ろうか」

「……うう、せっかくバーナードのお休みでデートなのに……花瓶の他にも見たいものあるのに……」

「久々の休みだから、ルーチェを堪能したいけど、だめ?」

「……うう、バーナードがかわいい。可愛すぎてだめって言えないぃぃ……」

僕は顔をおおってうなっているルーチェを横抱きにして、待たせている馬車へと乗り込んだ。

家まで僕が我慢できたかどうかは、想像にお任せする。


こういった経緯で、僕は捻じれたルーチェとの運命を自分の手で正しい道へ戻したんだ。

もう神にも誰にも邪魔なんてさせない。

番外編ヒーローサイドまでお読みいただき、ありがとうございました!

蛇足のような番外編(バーナード×ルーチェはほとんど出てこない)が一話あります。

よかったら、続けてお読みください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ