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「──て、訳だ。ゴブリン達はウルトラスーパーアルティメットビューティーグラマラスボンキュッボンによって倒された」
「よ、よく分からないが、そうだったのか」
北門にて、衛兵達に事情を話すと困惑したように変な顔をした。
「たしかに、ラインフォース家のご令嬢が乗っておられたようだったが······。しかし、まさかご自身でモンスターらを蹴散らしてしまうとは」
「おう、俺が行った時には事が済んでた。だから依頼料も討伐料も無しって訳だ。それを伝えたかった」
「はは、あんたって意外に律儀だな。そんな事黙ってれば何体か倒した事にも出来たろうに」
「前に隊長さんにも言ったが、信用第一がモットーだからな」
今回は出番無しで稼げなかったが、まあ死傷者ゼロならそれが一番だろう。
「んじゃ、俺はもう行くぜ。また何かあったら依頼してくれ」
「ああ、ご苦労さん」
衛兵と別れ、俺は自分の拠点へと足を向けた。
すると、ちょうど通りの向こうから見知った顔が走ってくるのが見えた。
「おーい、トレイルー!」
「おーう、フランー」
杖を抱えてやって来たフランに、俺は事の顛末を簡単に話した。
「ていう訳だ。残念ながら収穫ゼロだ」
「ふーん。そっか」
手ぶらで帰って来たのが気に入らないのか、フランが少し冷たい反応をする。
「そんなふて腐れるなよ。また依頼は来るさ」
「別にそんな事気にしてないよ。それより、トレイル」
「ん?」
ジットリとした目で見上げてくるフラン。
「そのラインフォース嬢って女性とはどんな関係なの?」
「は?」
「答えて」
ズイっと重くなる圧力。
「いや、どんな関係って聞かれてもな······。軍の時の知り合いだよ。別の部隊だったし、そんなにしょっちゅう会ってた訳じゃないけど」
「······」
「あー、でもアレだな。なんか休日になるとよく俺の居た町に来てたな」
「町に?」
「ああ。んで、何故か部屋に来てな」
「へ、部屋に?」
「ああ。大体が何しに来たのか、よう分からん用ばっかりだったが。やたら近況報告してきてな。やれ、あのモンスターを倒した。あのモンスター達を一人で複数倒した。一人でこんくらい戦果を上げた。とかみたいなのだ」
「······」
「まあ、差し入れで食い物も持ってきてくれたから悪くなかったが。一緒に食ってると下品だの不作法だのうるせえけど」
「い、一緒に······」
「しかもよお、別に行きたいなんて一言も言ってないのに劇見に行こうとか、薔薇園行こうとか強引でなあ。俺は賭博場に行きたかったのに邪魔されたぜ。まあ、飯に誘われた時は高級店に連れてってくれたからラッキーだったが」
「い、一緒に、劇見に行って、お花見に行って、食事して······」
おや?
なんだかフランの様子がただならぬ雰囲気になってきた。
「どした? フラン」
「······トレイルの············」
「ん?」
「不潔ーっ!!」
──ゲシッ──
「っぐおお?!」
脛に入ったフランのプンプンキック。強烈なクリティカルヒットに思わずその場に崩れ落ちる。
「いってえええー!? フ、フラン、な、なにするんだっ······」
「知らない! もう知らないもん! トレイルの馬鹿っ、エッチっ、不潔! セクハラ常習犯のギャンブル中毒の借金まみれー!」
体にも心にもクリティカルの凶悪攻撃をしたいだけしてフランは走って行ってしまった。
「ご、ごおおぉっ······な、なんだってんだ······」
しばらく、その場で脛を押さえて悶絶しているしかなかった。
周りの人間達がジロジロと見て通り過ぎて行った。
ややして。
脛の痛みも引いたので、とりあえず家に帰る事にした。もう昼飯時だ。
「いてて······まだ痛むぜ」
戻ってみると、みんな庭に集まっていた。どうやら昼飯の支度が出来ているらしい。
「おーい、帰ったぞー」
俺の姿を見るなり、何故かナズとフルトとルッカの三人は何とも言えない苦笑いみたいなのを浮かべた。
ターナが出迎えて近寄ってくる。
「なあなあ、店長」
「ん?」
「フランさんに何かしたかや? 悪い事したんなら早く謝った方がいいだよ」
「は?」
言われて見てみると、フランはツンっとそっぽを向いて鍋をオタマで掻き回していた。
明らかに不機嫌そうだ。
「まだ怒ってんのか······」
「よく分かんねえけど、帰ってきてからあんな調子ずらよ。何したずら?」
「なんもしてねえはずなんだが······」
多分。
「トレイルさん、お帰りなさい」
同じくこちらにナズが近寄ってそっと耳打ちしてくる。
「あの、ともかく謝った方がいいと思います。フランさん、ずっとあんな調子で」
「いやー、けどよ、心当たりが無いんだが······」
そう言うと、ナズは微妙そうな表情をした。
「トレイルさんって、意外に天然なんですね」
「え?」
「と、とにかく。私達もフォローしますから。ね?」
なだめられるように、フランの元へと連れて行かれる。
「あー、フラン?」
「ふんっ」
すごくご機嫌ナナメなフラン。
「あー。えっと。腹減ったな~。今日の飯何かなー。お、フランの特性シチューかあ。山盛りで頼むぜ」
とりあえず、自然体を意識して皿を出すと、ジロリとした睨みを向けてから皿をガッと奪い取るように受け取って、シチューを盛った。
「はい」
「さんきゅ······あー。フラン?」
「なに?」
「ちょいと少なくねえか?」
「アンポンタンなお馬鹿トレイルにはそれくらいでいいの!」
皿には味見用かと思うくらいの寂しい量しか入ってない。
「な、なあ、フラン。俺も今日はよく働いて腹減ったんだが······」
「ふーんっ! なら、麗しのお嬢様と一緒にレストランでも行けば?!」
「いや、俺にはお前の手料理を腹いっぱい食うのが一番でなあ。これが楽しみなんだが······」
こんな事言ったって機嫌なんか治らないよなあ。
と、思いきや。フランがキョトンとした顔をこっちに振り向けた。
「本当?」
「え?」
「私の手料理の方が良い?」
「そりゃあ······これが無いと始まらないぜ」
「そ、そっか。うん、そっか、そっか」
何故か途端にコロンっと上機嫌になるフラン。
「そっか、そっかー! もう、トレイルは仕方ないな~。私が居ないとご飯もロクに食べられないんだから~」
──パッ、カポ、ドロン、ドロン──
「はいっ、どーぞ!」
「お、おう」
縁ぎりいっぱいによそったシチューが返される。
「さっ、召し上がれ!」
「あ、ありがとな」
今度は溢さないように気をつけなければならない程によそられたシチュー。
「な、なんなんだ一体······」
たまにあるフランの気まぐれには未だに理解出来ない時がある。
お疲れ様です。次話に続きます。




