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「ターナ、念のため警戒は解くな」

「あい」


 倒れているゴブリン達は全て絶命していた。ごく一般的なゴブリン達だったが、こんな町の近くの街道でいきなり奇襲を掛けてきた所をみると、常習犯だったのかもしれない。


「ずら~。ゴブリンは売れる素材は無いずら」

「そうだな。一応、戦利品自体はありそうだが」


 死体の腰にぶら下がっている小汚ない袋。きっと旅人などから奪った物だろう。


「中身は······木の実に、こりゃキノコか?」


 袋をひっくり返して調べていると、ルッカも興味を示したように覗き込んできた。


「ナテンの実と、それは······モスマッシュルムの一部かな」

「あー、なるほど。言われてみりゃそうだな」


 キノコらしき欠片は、モスマッシュルムの切り身だった。

 モスマッシュルムとは、でかいキノコみたいなモンスターだ。

 動きも遅く、戦闘力は低いが、人間を識別する能力はあるようで、襲ってはくる。それこそ、キノコ採りに夢中になっていたら後ろからいきなり体当たりされたなんて話はよく聞く。


「モスマッシュルムが居るという事は、苔の育ち安い環境の森だね。南に湿地帯があるからかな」

「苔? モスマッシュルムと苔って何か関係あんのか?」

「モスマッシュルムってね、キノコの体は本体じゃないの。傘の上部に生えた苔が小さなモンスターの集合体で、そっちが本体なの」

「あ、そうなのか。てっきり、苔が弱点なだけかと思ってたわ」


 知らなかった。


「モスマッシュルムが居る森なら、ドンボアも居るかもね。湿地帯が近いから他のモンスターも居るかも」


 南側には川の分岐と重なるように湿地帯が広がっている。そこには毛色の違うモンスターらが生息しているはずだから、またの機会に行くのもアリだ。


「しかし、モスマッシュルムの切り身を袋に入れて保存しておくとはな。携帯食料のつもりだったのか」

「ゴブリンってね、面白いとこがあって、住んでる場所によって習性が変わるの。多分なんだけど、そこに住む人間の道具とか習性を真似るからなんだと思う」

「なるほど。確かに、そういう傾向はあるな」


 ゴブリン達は道具をある程度使える知能はあるが、道具を作る知能は人間と比べものにならない。基本的には人間から奪って使用する。


 その際に人間達から道具の用途を学習したりするのだろう。


「ふむ。ほとんどお手製だな」


 俺が咄嗟に切り落とした矢も、矢じりの無い木の棒の先を削って尖らせたに過ぎないお粗末な物だ。

 しかし、どいつもこいつも小さなナイフを腰に付けていた。おそらく、旅人から奪った物だろう。


 ナイフを使って食料を確保し、小袋、あるいはポーチに入れる。そういう使用法を真似たのだろう。


「さて。さっきゴブリンが逃げていった森だが、探索する価値があるかどうか」

「あ、トレイル君」


 入るかどうか考えていたところで、ルッカが声を上げた。


「見て。小袋の中に薬草が入ってた」

「お、ほんとだな」


 二、三種類の薬草が入っている。傷薬や解毒に使われる物だ。全員持っていて、かなりの量だ。


「奴らはこの森から出てきて、この森へ逃げていった。と言う事は······」

「多分、ここを住みかにしてるんだと思う。ゴブリンは結構移動して暮らす種だけど、拠点を作って居着く事もあるし。それに、さっきの手慣れた襲撃といい、持ち物といい、割りと長期間ここを根城にしてるんじゃないかな」


 ルッカと同意見だ。たぶん、このゴブリン達はここに定着してる。

 そんな奴らが薬草を持ってるならば、ここにも薬草の採集ポイントがあるかもしれん。


「ターナ、ルッカ。森に入りたい。いけるか?」

「もちろんずら! 稼ぐずら!」

「私も。どんな環境か気になる」


 ターナはともかく、ルッカまで乗り気なので迷う事はなくなった。


「よし、行くか」


 三人でそのまま森へと入る。


 この間まで使っていた森とそう変わらない、いたって普通の森だ。


「パっと見じゃ分からんもんだよな」

「薬草が群生するとしたら魔力濃度が高い所だから、やっぱり奥だね。川とか泉の近く。モンスターと言えども生き物だからね。水の有る所は他の生物と共通の生息条件だね」

「なるほど······確かに、この森も結構なモンスターの巣窟になってるようだな」

「え?」

「ずら?」


 周りに集まり出した気配に二人はまだ気づいてない。

 剣を抜いて二人に指示を出す。


「ルッカ、後ろに下がってサポートしてくれ。ターナ、勝てそうな相手を払ってくれ」

「! は、はいっ!」

「わ、分かっただよ!」


 二人が返事して戦闘態勢に入ると同時に、茂みからいくつもの影が飛び出た。


『ジュルルル』

『ギギッ』

『ギチギチギチッ』


 メルトスラッグ、ゴブリン、グラブホッパーにスライム、アーミアント······。下級モンスターのオンパレードだ。


「相手は大した事ない奴ばかりだが、油断するな。基本的には俺がやるから無理は厳禁だ」

「分かっただ!」

「はいっ!」


『ギチギチギチッ』

「はっ!」


 跳躍して飛びかかってきたグラブホッパーを空中で真っ二つにする。ホッパーの死体が地面へと落ちる。


 それを合図にするかのように、他のモンスターらが襲いかかってくる。


「せい!」


 風属性の薄い刃を纏った剣で斬りながら、ターナのハンマーの重い一撃の音と、的確な牽制をするルッカの魔法詠唱に耳を傾ける。


 今日初めて三人で挑んだが、かなり良い連携がとれている事に内心嬉しい気持ちになった。


「たあーっ!」

「フリーズショット!」


 ──バコーンッ、ズドドッ──


「は!」


 ──ズバッ──



 数分後。襲ってきたモンスターらは全滅し、ターナが早速解体を行ったが、収穫はイマイチであった。


 先に進みながら、ターナは残念そうに肩を落としていた。


「あんまし良いのは無いずら~」

「まあ、そう気を落とすな。まだ森を探索するからよ。それに、薬草さえ見つかれば一割のボーナスは貰えるぞ」

「そうだったずら。しょげても仕方ないだわな」

「おう。まあ、良い薬草ポイントがあればだが」


 なんて事を言っていると。


「あっ、トレイル君。あそこっ」

「おっ?」


 前方に、木の途切れた場所が見えてきた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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