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「うおおっ!?」
「す、すげええっ?!」
「あ、あれって本物かよ?!」
「で、でけえっ!?」
「あれがワイバーンっ?!」
「マジで化物じゃねえか!!」
「おいおいっ、本当に倒したのか?!」
そこら中から聞こえる驚愕の声。ざわめきと言うよりは、もはや悲鳴の嵐に近い。
「なんだか恥ずかしいね」
「そんな事ないさ。俺らが倒した大物だ。堂々と誇らしく構えてようぜ」
「えへへ。うん! そうだね!」
俺とフランは、急遽手配されたモンスター輸送用の馬鹿でかい荷車の淵に座りながら、通りの人間達の驚く顔を眺めた。
ワイバーン撃破後。
様子を見に来たユニゾン(動物などと一時的に視覚などの感覚を共有する高等魔法)を施されたラインフォース家の伝書鳩に、ワイバーン撃破の光景を見せると、少ししてから家の者達がこの荷車を運んで来てくれたのだ。
おまけに、プロの解体士まで居て、約束通り一部の器官を解体して採取した後、俺らの報酬素材もある程度解体しといてくれた。
しかも、この荷台も『今後もまた依頼をするかもしれないから、取っておいて欲しい』なんて言ってプレゼントしてくれたのだ。
さらには御者もつけてくれて、何頭もの馬に引かせて、今こうやって俺らの拠点まで輸送してくれている。
まさに至れり尽くせりの対応だ。
町に入ってから、通りの人間は例外なく俺らの荷台を穴が空くほど見ていた。
もちろん、その視線が集まっているのはワイバーンの死体だ。ある程度の解体が施されているとは言え、その巨体や翼の大きさは依然として健在だ。
普通の町人や村人ではワイバーンに会う事もなく過ごしている人間も多い。もちろん、住んでる地域によって異なるが、珍しいモンスターであることに代わりはない。
まあ、もっと言えば······。そもそも一般人ではワイバーンに出会ったら生還出来る者も少ないからというのもある。
少し狭い道をゴトゴトと進み、俺らの店でもあり、家でもある酒場に戻ってきた。
馬車が止まると、その音に気づいたのだろう。家からナズとターナの二人が出てきた。
「トレイルさんっ、フランさん! ご無事だったんですね!」
「お帰りだよ~! 二人とも、だいじょ······ひょええええ?!」
「わああああっ!?」
二人とも俺らの後ろの物を見た瞬間、悲鳴を上げてその場にしりもちを着いてしまった。
「おう、大丈夫か二人とも」
「あはははっ、ごめんね、びっくりさせたよね?」
「ト、トト、トレイルさん、その荷台に載ってるのって······」
「おう、ワイバーンの死体だ」
「じゃっ、じゃあっ!?」
「やっつけただな!?」
顔を見合せ、喜び満載の笑顔で抱き合う二人。
「やった~!」
「良かっただ~!」
二人はすぐに立ち上がって、俺らに走り寄ってきた。
俺とフランも荷台から降りる。
「おめでとうございます! トレイルさん、フランさん!」
「すげえだあ! ほんとにすげえだあ! おったまげたどころじゃねえだよ、凄過ぎるずら!」
興奮する二人をなだめながら、俺とフランも少し笑ってみせる。
「けっこう苦戦したけどな」
「ほんと、ほんと! 久しぶりに心臓がヒュンッって縮む思いがしたよ!」
「だ、大丈夫なんですか?」
「終わった直後はまあまあ傷だらけでな。でも、ナズのポーションのお陰で全快だ」
「すげえだあ! すげえだあ! どうやって倒したか教えてずら!」
「はは、慌てるなって。後で飯でも食いながらゆっくり話すぜ。それより、ターナ。ここからお前さんに大事な仕事を頼みたい」
「オラに?」
まだ仕事は終わってないからな。
──ズシン──
──ドサッ──
──ボドン──
「ふいーっ。これで全部だな」
「それでは私どもはこれで。荷台は言いつけられた通りに、ここへ置いてゆきます」
「ありがとな。当主代行さんやマルセさんにもよろしく伝えてくれ。今後もご贔屓にって」
「心得ました。それでは。お二人のこれからの健闘を祈ります」
ラインフォース家の御者達は馬を走らせて帰っていった。
後にはモンスター用のでかい荷車が残され、今しがた全部降ろしたワイバーンの素材が庭に並んでいる。
「さっ。ターナ、任せるぞ」
「う、うん! ワイバーンの解体はそんなにやった事ねえけども、頑張るずら!」
「もちろん俺らも手伝う。指示してくれ」
「ありがとだ!」
ターナを中心にして、皆でワイバーンの解体作業に入る。
「腕が鳴るずらー! ドワーフは力だけはあるで!」
「わわっ、ターナちゃん凄い怪力!?」
「フラン、そっち持ってくれ。そこの台に乗せるからよ」
「オッケー!」
「ナズさ、そっち側を押さえてて欲しいだ」
「うん。わ、わああっ!?」
「ああっ!? ナズさが飛んでくだあ?!」
「おーいっ! ナズ~! 翼膜を扱う時は両手で持つな~!」
「た、助けて~!」
「今助けるよナズちゃん!」
解体作業は想像以上の重労働となり、なんとか終わった頃にはすっかり夕方になっていた。
太陽は既に山の向こう側に隠れたらしい。
「は、腹減ったな······」
「くたくたずら~······」
まだ保存用の処置などもしなくてはいけないが、もう暗い。それに、そのための薬品なども無いので、続きはまた明日にしよう。
「二人とも~、お待たせー!」
「お疲れ様です!」
途中で飯の用意に入ってくれていたフランとナズが大鍋を運んできた。
「今日は何時もより豪華な具材たっぷりの特製シチューだよ! それに、まだチキングリルもあるから!」
「やっほーう! ターナ、今日はご馳走だぞ!」
「生きてて良かったずら~!」
「今よそりますね」
何時もよりも具材たっぷり、肉たっぷりの夕飯。フランが市場で思い切って買いまくったらしい。
「さあっ、みんな召し上がれ! 今日は大仕事達成のお祝いだから!」
「おお、すげー豪華。これ、牛肉か? しかも燻製じゃないな!?」
「うんっ。奮発しちゃった! 150ゴールドもしたんだもん。びっくりしちゃった。まあ、六人分くらい買ったから仕方ないかもだけどね」
「なんて贅沢な飯だ」
「う、うめえずら! このチキンうめえずら!」
「まだ沢山あるよ」
焚き火を囲み、美味い飯を食いながら今日の戦いをナズやターナに語る。
「でね、バッカーンって壁が壊れたの! もう、破片がつぶてみたいに飛んできてさ、いたた~っ! って感じ」
「す、すげえずら~!」
「私なんて聞いてるだけで気絶しそう······」
「それでねっ、ワイバーンがこう、ギョロって私達を睨んで、首をググッと上げてね、ゴロゴロって喉を鳴らしてねっ······」
身振り手振りの大きい幼馴染みの話に、小さな従業員二人は食い入るように耳を傾けていた。
焚き火の揺らめく火に照らされる、驚きや、怯えや、笑い。
豊かな表情が映し出されるひととき。
俺も時折相づちを打って、頷いて、笑って、そして肉を食って──
こんなに楽しい時間は本当に久しぶりだった。
「ねえ、トレイル!」
「うん?」
「これからどんどん大きくしてこうね! このお店! このお仕事!」
「そうだな」
スレイヤー屋なんて仮の名前だが──
もっと別の名前になって有名な仕事として定着していったりしてな。
そんなささやかな期待を胸に膨らませて、ビールを一気にあおった。
お疲れ様です。次話に続きます。




