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「店長、こんなもんでいいだかや?」
「おお、上出来だぞ」
大量に採取された素材。ポーチ等の関係で全部は持って帰れないが、金目の物は揃えられた。
「よし、持って帰れるだけ持ってくぞ」
「んだ」
薬草はほとんど採集出来なかったが、しばらくすればまた生えてくるだろう。
ターナと共に来た道を戻る。
「ずいぶん持ってきたな。重くないか?」
「ドワーフは力だけはあるで」
行きに多くのモンスターを撃破したからか、特に戦闘になることもなく、俺らは森から抜け出した。
「よーし。ターナ、ちょいと寄り道してくぞ」
「わかったずら」
家とは逆方向の東門通りに足を向ける。
東門通りの商店街は、町の住民の営む日常品を扱う店と、各地を巡りながら様々な物品を交換したり売買して旅する交易商人が広げた露店商から成り立つショッピングストリートだ。
この前フランと歩いてる時に観察して市場の傾向は把握済みだ。
こういう所は一般人が歯牙にも掛けない品も重宝して扱う。
「お、良さそうな店だ。ターナ、こっちだ」
「あい」
近くに薬剤や装飾品を売る商人が店を出していたのでそこへと向かった。
「ちょっといいか」
「お、いらっしゃい」
こ慣れた感じのオヤジが愛想笑いを上げた。
「ウチの店は品揃え豊富だよ。なんたってミッスル地方で仕入れた珍品が盛り沢山だからね。貴族や地方の有力者だってお得意様さ」
「そいつは良い。だが、俺らもなかなか手に入らない珍品を持っててな。買い取ってくれないか?」
「ほう、買い取りかい。品を見せてもらおう」
荷物を下ろし、中から目ぼしい物を取り出す。
「さっき採れたばかりの品々でな」
「どれどれ──いぃっ?!」
俺が取り出したグリードモールの生爪を見て商人がギョッとした。
「そ、それは?」
「グリードモールの爪だ」
「グリードモールの?」
「モンスターだ。他にも、ほら」
──ボコン、ボコボコ、ドサ──
アイアンバグの甲殻やビコックの羽、その他モンスターの素材の山。
どれも薬の材料や、日用品の素材になるような物ばかりだ。商人ならその価値も分かるだろう。
「お、おお······これ全部モンスターの素材か」
「ああ、そうだ。どれも取れたて新鮮。質は保証する」
「取れたて? まさか、あんたがモンスターを倒して?」
「そうだ」
商人は驚いた顔をしたが、すぐに鑑定道具らしい一式を取り出して言った。
「調べてみる。こちらで引き取りたい物は買わせてもらうよ」
「ああ、ぜひ頼む」
ソワソワするターナとほんの少し待つと、すぐに返答がきた。
「こっちの羽に、爪、毛皮、それに甲殻を買わせてもらうよ。一般相場に少しだけ色を付けて、こんなものでどうだい?」
商人の提示した額は150ゴールド以上であった。
「かなり良いな。よし、取引成立だ。こっちの素材は要らないか?」
いくつか余った素材に、商人は首を横に振った。
「そっちのは取り扱ってないからな。だけど、ここに居る商人達は様々な種類の品を取り扱っているから、誰か買ってくれるかもしれない」
「なるほど。当たってみるか。買い取りサンキュー」
手に入れた金をターナにカチカチと見せる。
「ほれ、ターナ。お前の努力がこんなになったぞ」
「ほ、ほんとずら? お、オラの分け前はいくらだ? さ、三割くらいくれたりとか?」
「なーに言ってんだ。九割だよ九割」
「きゅっ、きゅきゅ、きゅう!!?」
飛び上がって張り上げられたすっとんきょうな声に周りの人間が振り向く。ターナは恥ずかしそうに俯いて、上目遣いを向けてきた。
「で、でも、それじゃあ店長が少なすぎるんじゃないだかや?」
「俺は自己防衛でモンスターを倒しただけだ。それを金になる物へ変えたのはお前だ。だから本当なら全部やりたいとこだ。ただ、今後は素材狙いで俺が戦う場合もあるだろうから、一割は貰う事にする」
「も、もちろんずら! なんなら半分でも······」
「言ったろ? 専門職なんだから、報酬はちゃんとした割合にしなきゃって」
まだ戸惑うようなターナの頭に手を乗せる。
「まだ売れる素材があるかもしれん。全部売ってから分けようぜ」
「わ、分かったずら」
その後、辺り一帯の店を回って交渉した結果、さらに50ゴールド以上の金が入り、合計200以上の儲けとなった。
思わぬ報酬に、まだ信じられないといったターナを連れて拠点に戻る。
家ではフランとナズの二人が細かな整理の仕事をしていた。
「帰ったぞー」
「あっ、お帰りなさーい。ターナちゃんもお帰りー」
「お二人ともお帰りなさい」
「ただいまずらー!」
テンション高く鼻の穴を膨らませるターナに、フランとナズが首を傾げる。
「もうしたの? ターナちゃん、なんだか興奮してるみたいだけど······」
「ああ、ちょいと誤算があってな」
「誤算? え、何かあったの?」
「大丈夫だ。嬉しい誤算の方でな」
「どゆこと?」
薬草のポイントでの戦闘と、ターナの解体技術の事を話し、稼いだ金を見せると二人ともびっくりしながらも嬉しそうに笑った。
「すごーいっ! ターナちゃんのその特技はまさにトレイルが当初から求めていたものだよ!」
「はいっ、まさにこのスレイヤー屋に必要不可欠な人材です!」
「そ、そんな~。オラはただ、店長の功績を盗んだカラスみたいなもんずら~」
謙遜しながらも、顔に喜びと気恥ずかしさがホクホクと出ている。
「フラン、金を計算して欲しい。まずはここから三割抜いて、残った金の九割をターナに渡してくれ」
「はいよ! まかせて~!」
「ほ、ほんとにオラがそんなに貰っていいだかや?」
「当たり前だろ。自分で稼いだ金なんだ。どーんと堂々貰えばいい」
フランが計算し、ターナの手元には130ゴールドほどの報酬が入った。
手の上で輝く硬貨を、ターナはまだ信じられないように見ていた。
「あ、あれだけでこんなに······」
「これからも頼むぞターナ。お前が居ればモンスターを倒す度に儲かる」
「は、はいだっ! お、オラっ、もっと頑張って稼ぐずら!」
また鼻水を流して喜びを表現するターナに、みんな和やかに笑った。
この日はその後ゆっくりと過ごし、酒場のリフォームに必要な物資を皆で提案しながら夕飯を食って、明日に備えて寝た。
お疲れ様です。次話に続きます。




