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「はっ!」


『グギイイイッ』


 襲ってきたのは数も少なく、大した事のない連中だったため制圧は簡単だった。


 そして、ターナはと言うと──


「だあ~っ!!」


 ──ズガアアンッ──


 とても少女とは思えない程の剛力でハンマーを振るってモンスターを蹴散らしていた。アイアンバグの甲殻すらボコボコに凹ませている。


「ふうっ、ふうっ、や、やったずら」


 息を切らせて汗を拭うターナ。モンスターはもう居なくなっていた。


「よ、お疲れさん。お前さん結構強いじゃんか」

「そ、そうかや? うへへ······ドワーフは力だけはあるだから」


 少し照れ臭そうに頭を掻くターナ。



 その後は何事もなく奥へと向かい薬草のポイントに到達した。


 ところが。


「これは······」

「な、なんずらこれは」


 若い緑が敷き詰められるように生い茂っていた原っぱは、あちこち土をほじくり返され、ほとんどの薬草が根元を中心に食いちぎられて地面の上に落ちている。


 もう使い物にならない葉がシナシナとくたばっている。


「だ、誰がやったずら? これじゃあ薬草が······」

「······あれだろうな」


 奥の方に蠢く影。滅茶苦茶に掘り返した土の上で薬草を(かじ)っている。

 焦げ茶色の毛をむさ苦しく纏った巨大な土竜のような生き物。中級モンスターでそこそこの強さの『グリードモール』だ。



「あれはグリードモールずら」

「知ってたか」

「鉱山掘ってるとよく遭遇するでな」


 なるほど。


「あんなんが居座ってたらここの薬草が全滅しちまう。ちょっと追い払うか」

「んだ」


 俺らが近づくと、それに気づいたモールが体をこっちに向けてきた。目はほとんど利かないが、聴覚と嗅覚に優れている。


 おそらく足音で正確にこちらの位置を把握しているだろう。


 人間の腕くらいはある長さの分厚い爪を拡げて威嚇してくる。


「どうも引き下がる気はないみたいだな」

「ほっとくと町の畑も荒しちまうだよ」

「依頼には無いが、放っておくと俺らの収入源も全滅だ。やるか」


 こちらが戦闘態勢になるのと同時に突進してくる。突進と同時に土くれを飛ばしてくる。拳大の石が混じっており、当たれば怪我をする。


「っ!」


 ターナの方に飛ぶ塊を全て叩き落とす。その隙をついて爪を振りかぶってくるのを飛び退いて躱す。


「ちっ、狡猾な奴だっ」


 再び唸りを上げてくる爪を掠めて避け、こちらも反撃する。爪と爪の間に剣を滑らせ、指の根元を切る。


『ギュイイイイッ』


 悲鳴とも咆哮とも言いがたい叫びを上げながら殺気をほとばしるモール。猪のように真っ向から突進してくる。

 その突進を避け、鼻の根元から出ている髭状の感覚器官を斬る。


 モールは突然目を回したようにその場でグルグルと回り始めた。


「店長! どいてずら!」

「おっ?」


 横をターナが駆け抜け、モールに肉薄する。


「だありゃ~っ!!」


 ──ドゴオオッ──


 森中に、ハンマーがモールの頭蓋骨を砕いた物凄い音が響きわたった。




「ずら~······」

「こりゃ駄目だな」


 今までお世話になったポイントの半分近くが壊滅していた。


「しばらくすりゃまた生えてくるだろうが、当分は回復させた方が良いだろうな」

「これじゃあナズさに土産少なくなるだよ」

「仕方ないさ。ターナ、俺は他のポイント見てくるからお前はここの辺りを調べてくれ。まだ使えそうな薬草があったり、金になりそうな物を拾っといてくれ」

「分かったずら」

「あと、モンスターが現れたら悲鳴を上げろ。三十秒以内には絶対戻る」

「速いだなー」



 ターナには待機してもらい、俺一人でもう少し奥へと進んでみる。この辺りの薬草群生地帯は三つほどのエリアに別れているので、他の場所を確認しに行くのだ。



「ふーむ」


 他のエリアはそれほど荒らされてもなかったが、多少はやられていた。

 どうやらモールの食う薬草にも好みがあるらしい。綺麗にほじくられて食われた薬草と、手付かずで残ってる薬草とある。



 それにしても、モールまで町近郊の森に出るとは。エクアル村の時といい、郵便屋の話といい、ここ最近になってモンスターが急増しているのか?


「······とりあえず少し採取してから帰るか」


 調査に来たついでに薬草をいくつか採取していく。


 10分かそのくらいで採取も済ませ、ターナの元へと戻る。



「よ、待たせたなターナ。とりあえず今日はこの辺で──」

「あ、店長お帰りずら」

「······お前、何やってんだ?」

「ん? 何って」


 キョトンとしたターナは、血まみれのナイフとモールの巨大な爪とを持って首を傾げた。


「解体だよ。お金になりそうなもん拾っとけって言ったで」

「ちょっと待て。お前、解体出来るのか?」

「あれ? 言ってなかっただかや?」


 ターナが小さく笑う。


「オラ、軍に居た時にモンスターの素材集め係もやってたんだよ。あれだわ、ケンキューとかに使うからって。だから大体のモンスターは解体出来るずら」

「············」

「あ、あり。駄目だった、ずら?」

「ターナああぁ!」

「わひいいっ?!」


 思わずターナに駆け寄り肩をガシリと掴んだ。


「わ、わわあっ? ご、ごめんなさいだっ! 許してずらっ!」

「まさに求めていた人材だー!」

「はいっ、もう解体しませ──ずら?」


 キョトンとして見上げてくるターナ。


「あ、あれ? 怒ってる訳じゃないだ?」

「怒ってないぞ。俺は喜びに震えてるんだ」


 最初に思いついておきながら出来なかった稼ぎ方。モンスターの素材を売るという商売。

 その仕事を可能にする人間が身近に居たのだ。


「ターナ、仕送りたくさんしたいんだよな?」

「え? う、うんだ」

「なら、俺が見張っておいてやるから解体の続きをしてくれ。あと、道中倒してきたモンスターもいくつか解体してもらうぞ」

「え? ん、んだ。分かったずら」



 まだ訳が分からないと言ったような顔をしたままターナは解体作業へと戻ったのだった。


お疲れ様です。次話に続きます。

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