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 現れたのは少女だった。その特徴的な耳の長さと尖り具合からエルフだと分かった。

 さっきの村長同様、薄い傷が白い肌に浮き出てる。


 そして、何故かこちらを睨みつけている。


「? 俺らに何か用か?」


 そう声をかけてみると、少女はますます激しく睨んできた。


「あなた達、他所者ですって? だったら早くこの村から出てって」


 訳の分からない事を言い出した。


「どうした突然。俺らは村長から依頼されてモンスター騒ぎを解決しに来ただけだぜ?」

「うるさい!」


 今度は感情的に叫んだ。


「余所者なんか嫌い! レグマンの他所者は特にね! あんたらもハンターや軍と同じでしょ?! 様子だけ見に来て、冷やかして帰る。それでお金だけ取っていく!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。何の話?」


 フランが戸惑うように少女に歩み寄ると、今度は怯えたように身をよじって下がった。


「近寄らないで! 早く出てって!」


『アニラ、何してる?』


 そんな俺らの騒ぎを近くで見ていたらしき村人がこちらにやって来て、少女をたしなめた。


「駄目じゃないか。この二人はお客さんだぞ」

「っ······!」


 少女は悲しげに顔を歪めて、走って行ってしまった。


「あっ、ちょっと」


 フランが声をかけても止まらず、どこへともなく消える背中。


 村人がため息を吐く。


「悪く思わないでくれ。あの娘、今は少し感情的になっててさ」

「そうなのか」

「ああ。前に来たハンターが亜人嫌いでさ。あの娘に結構ひどい事言ったんだ。しかもこの間、村長と一緒に軍へ討伐依頼に行った時にひどい目にあわされてな。村長ともども軍人に鞭で打たれたんだ。亜人だからって」

「······」


 村長の傷やあの少女の傷は鞭で打たれた物だったのか。しかも軍人だと言っていた。


「どうしようもない奴はどこにでも居るもんだな」

「ああ、ひどい話さ。だから、恨まないでやってくれ」

「恨みなんかしませんっ。それにしてもそんな酷い事する人が居るなんて! 許せない!」


 怒りに震えるフランをなだめながら、その場を後にする。




「モンスターなんかよりよっぽど邪悪だよ! 私がその場に居たら魔法で吹っ飛ばしたのに」

「だろうな。ロクでなしが軍に居るんじゃあ未來は暗いな」


 仕事もしない、民間人に差別して暴行。クビにされて正解な所だったかもしれん。


「さ、フランよ。気を取り直して仕事だ。俺らはしっかりやる事やってくぞ」

「だねっ! よーし、やるぞ~!」


 張り切る相棒の目は情熱に燃えていた。



 村人から一通りの証言を集め、森へと入る。


「こっち側から畑や村へ侵入するらしい。おそらく、この奥に()()()()()()()()()()()()が居るはずだ」

「うん」

「よし、気合い入れて行くぞ──と。言ったそばからか」


 近くの茂みから複数の気配を感じる。いづれも殺気を孕んだものだ。


 俺とフランも得物を抜く。


「依頼は周囲一帯のモンスターの殲滅だ。遠慮せずにいくぞ」

「オッケー!」


 こちらのフォーメーションの動きと共に茂みが揺れて影がいくつも飛び出す。

 出てきたのはグラブホッパー。バッタのような姿のモンスターで、大きさは人よりやや小さめ。

 名前の由来は足の先端付近の硬いコブから。これを脚力と合わせてぶつけてくる。



『ガジガジガジッ』


 奇妙な摩擦音を鳴らしてじりじりと迫るホッパー達。全部で四体。さらに後方からも気配がする。


「ファーストエンカウントってとこか。いくぞフラン!」

「うんっ!」


 後衛のフランから注意を逸らすため俺から敵の中へ斬り込む。


『ギチッギチッ』


「ふっ!」


 跳躍に移るその前に、一番前の個体の足を切断する。


「そりゃあっ!」


 そのホッパーを土属性の強撃で吹き飛ばす。

 後ろにいた奴らに当たり、団子になって地面にもんどり打った所へ剣を走らせる。


「はっ!」


『ギッ』

『ジチチッ』

『ジッ』


 ほとんど即死で四体が動かなくなる。


「トレイルっ!」

「おうっ!」


 フランの発した合図と共に後ろに下がる。

 同時に。茂みから残りのホッパーが飛び出してくる。しかし、その時には詠唱を済ましたフランの魔導杖が魔力の光を光らせていた。


「いくよ!ゼロストーム!」


 局地的な吹雪が突風となって森を吹き抜ける。吹雪──では生温い。もはや氷の刃となった旋風がホッパーの群れをズタズタにして過ぎ去っていく。


 数秒の後、霜の降りた草木の上にホッパーの死体が残されていた。


「まだ来るよ!」

「気を抜くなよ」


 モンスターは魔力の揺れや血肉の臭いに釣られる。別の方向から新たなモンスターの群れが来ていた。


『ジュルジュジュルッ』


 今度はメルトスラグが数匹。これまた人よりは何回りか小さく、脅威も低い。

 だが油断は禁物だ。全身を覆う粘液は消化液で、素手で触れようものなら火傷のように皮膚が(ただ)れる。しかし、動きは遅いので冷静に対処すれば問題ない。


「こいつらは俺がやる。フランは新手を警戒してくれ」

「了解っ」


 俺は距離を取って剣に魔法属性を込めた。メルトスラグは弱点が多いモンスターだ。大抵の魔法は効果的だ。


「ふっ!」


 稲妻を纏った剣を横一文に一閃させる。紫電の斬撃が辺りを眩ませた。


 ──バチィッ──


 破裂音が辺りに響き渡り、すぐに焦げ臭い臭いが鼻をついた。

 メルトスラグの群れはあっさり全滅した。


「とっ、またか」


 次いで別の気配が方々から迫る。

 俺はフランと背中合わせになって剣を構えた。


「向こうからサイス・マンティスが来てる。あれは俺がやる」

「分かった!」

「まだ来そうだ。気合い入れようぜ!」

「うんっ、頑張ろう!」




 意気を合わせ、次の標的へと対峙する······。



お疲れ様です。次話に続きます。

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