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「さて。ここの住居人がまた増えたところで、改めて大事な話をしようと思う」


 ポカポカする午後の日和の下、呑気にだらけたいところだが、どうしても先に済ませときたい話がある。


「どうしたのトレイル。改まって」


 膝を進めてくるフラン。ナズ、ターナの二人もじっと見ている。


「えー、ゴホン。俺の立ち上げたモンスタースレイヤー屋は現在所属している人間が二人だ。俺とフラン」


 あれ?と首を傾げるナズ。


「そう、ナズは確かに一緒に暮らしてはいるが、あくまで同居人。俺の部下って訳でなければ同僚って訳でもない」

「ねえ、トレイル。いつもらしくないよ、スパッと結論言っちゃってよ。トレイルは何が言いたいの?」

「あー、つまりだ」


 要するに。


「ナズ、お前も俺のスレイヤー屋に入らないか?」

「え、私が? で、でも、私は戦闘は役に立てないかと······」


 と、申し訳なさそうな表情を浮かべるナズ。


「いや、それはいい。戦闘員としてじゃなくて裏方として入ってくれないか? しばらくの間、俺とフランだけで戦力は十分だ。ワイバーン級の相手でもない限りは二人で楽勝だからな。ナズにはポーションを作ってそれで稼ぐ商売をして欲しい」

「えっと、つまり私は薬を作る仕事をしてればいいと?」

「そうだ」

「それならもちろんです。元より、そうやってお力になれたらなと思ってました」

「ああ、なら改めてようこそ俺のスレイヤー屋へ」

「はいっ!」


 元気よく返事をするナズ。


「よし。で、だ。ターナ」

「あ、あいっ!」


 ターナが背筋をシャキーンと伸ばす。


「お前はしばらくナズの手伝いと、この家の修復作業に従事してくれ。見ての通り、ここはまだ完全じゃないんだ。俺とフランは基本的に仕事を探すのと、モンスター討伐をしていく予定だから、その間はここを頼む」

「お、お任せずら! せっこが出るずら!」

「よし、ならお前もスレイヤー屋のメンバーだ。ターナ。改めてよろしくな」

「よろしくお願いだす!」



 さて、ここまでが話の前段階だ。


「という事で、三人とも俺のスレイヤー屋のメンバーであるという事を改めて確認したところで、ここからが本題だ。大事な話だぞ」


 三人が身を引き締めて真剣に耳を傾ける。



「ずばりだ。給料はどうするかって事だ」

『·········』


「え? なんか現実的!」

「そう言えばその問題がありましたね······」

「大事ずら~」


 三者三様の反応が面白い。


「ナズにはこの間かなりテキトーに金のやり取りしたからな。だが、これから先はそうもいかない。ちゃんとどれくらいの取り分が貰えるかって決めておこう」

「はい、分かりました」

「んで、フランに関しては金を払ってないからな。まあ、まだ所属してから一日目だから当たり前ではあるが」

「あ! 貸してたお金返してっ!」

「やぶ蛇だったか」


 痛恨のミスしちまったが、気を取り直して話を続ける。


「正直言って俺はそういう計算とか経営は得意じゃない。よってどう金を分配すれば良いかよく分からない。そこでだ、一つの案がある」


 三人とも期待するような眼差しを向けている。


「これからしばらくは、稼いだ金の内の三割は共益費という形で、ここのコミュニティの金にしようと思うんだが、どうだ?」

「共益費?」


 首を傾げるナズとターナにフランが簡単に説明する。


「大雑把に言うとね、一緒に住んでる人達全員のお金って感じ。この家を維持するための消耗品とかに使うお金とか」

「例えるならそうだな。フランが勝手に自分の服を買うのには使っちゃいけないが、全員分の食料や、薪などの燃料を買う分には使っていい金ってやつだな」


 なる程ーっと頷く二人。


「あとは、俺がギャンブルで2倍にするために使う場合も共益費だ」

「それは横領!」


 すかさずフランのツッコミ。



「ま、今のは冗談だとしてだ。要は一緒に暮らすのに必要最低限な物資は、個人じゃなくてこのコミュニティから金を出して揃えるって感じだ」

「た、タダで食べ放題ずらか?!」

「少し語弊があるが、そんなもんだ」


 そして残る七割の金。


「共益費を納めた後の話をするぞ。俺とフランが仕事で稼いだ金の場合は、二人で折半だ。基本的に半分こ」

「うんっ!」

「で、ナズの調合した薬を売って得た金に関しても三割は同じく共益費。残りをどうするか話あって決めたい」


 ナズが頷く。


「私は言われた割合で大丈夫です。ここに置いて頂けてるだけで十分ですから······」

「そういう訳にもいかないだろ。だが、お前の立場じゃ言い出しにくいのも分かる。俺から提案しても良いか?」

「はい」


 すんなりとした返事は嬉しいが、まだ自分は居候だという感覚が抜けてないらしい。

 これを機に同僚であると再認識してくれればいいんだが。


「俺らが原料を採って来た場合は一割が俺らの物。残りをターナとナズで分け合う。比率はナズが七割、ターナがニ割」

「そ、そんなっ!」


 ナズが声を上げる。


「ターナちゃんが少なすぎます! 私とターナちゃんで半分にしましょうよ!」

「ナズ。専門職ってのは待遇が良いもんだぜ? でなきゃ意味が無いし自覚も持てない。もし、ターナの製錬の仕事でお前が補助だけしてたら折半が普通だと思うか?」

「そ、それは······」

「スキルってのは価値があるからこそ対価も大きい。だからプロ意識が芽生える。そういうことだ」


 我ながら小難しい事言ってる気もするが、これは大事な話だ。



 モヤモヤしているナズに対してターナは明るい顔で笑いかけた。


「ナズさ、オラは報酬貰えなくたってここで住ませてもらうだけでも十分ずら。だから待遇の良さにびっくらこいてるだよ。そんな顔しないずら」

「で、でも······」

「いいずら、いいずら」

「······それでも」


 今度は俺の方を申し訳なさそうに見るナズ。


「トレイルさん達の取り分も少なくないですか?」

「俺とフランは本業で稼ぐ予定だ。気にすんな」

「······」

「まあ、あれだ。どうしても気になるんなら、好きな額を共益費に納めてもいい。それを後で皆で使えば最初から折半したのと同じだろ?」

「! はいっ! そうします!」

「よし、まあとりあえずは決まりだな」




 まだまだ改善の余地はありそうだが、ひとまずは金の話に区切りをつけられた。


 仕事をしていく上では大事だからな。


お疲れ様です。次話に続きます。

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