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 ターナにはちゃんとしたスキルがある。それを活かせば雇って貰える。


 俺はそう考えてたし、ターナもそう思ってたのだろう。

 俺らは二人で意気揚々と鍛冶屋に来ていた。



 だが──



「わりいな。ウチでは雇えない」

「ど、どうしてずら?!」

「もう定員が揃ってるんだ。これ以上は雇えねえんだ」

「だ、だども、オラのスキル『鍛冶』は金槌と金床さえあれば何だって作れるずら! おっきな剣だって、日用品の刃物だって!」

「とにかくだ。他を当たってくれ」


 一番目の店はこのようにして断られてしまった。


「ダメだっただ······」

「たまたま人数が一杯だったんだろう。気を取り直して次行こうぜ」


 出だしは悪かったが、俺とは違ってちゃんとしたスキルがあるんだ。

 すぐに雇ってもらえるだろう。



 しかし──


「悪いが雇えん。帰んな」

「そ、そんな」

「この間新人を雇ったばかりなんだ。必要ないよ」


 その後も立て続けに断られた。


「ず、ずら~······」

「そう落ち込むなって。俺なんてこの10倍は断られたぜ? まだまだ平気さ」


 早くも鼻水垂れ出したターナを慰める。



 そして、最後の有望株の場所に行った。なんと扉に『職人募集中』の文字が書かれていたのだ。


「こ、ここならいけるずら!」

「おう、良かったな」


 これで解決。そう思ったが──



「······すまないが、雇えない」

「な、なんでずら?!」

「おいおい、俺はただの付き添いだが流石に口出させて貰うぜ? 外にある張り紙は取り忘れてたってか?」

「いや。確かに募集はしてる」


 と、職人の男はしかめっ面で言った。


「だ、だったら、どうして?」

「募集してるのは人間だ。つまりドワーフじゃない」

「っ! お、オラだって人間だっ!」


 ターナが思わず声を上ずらせると男はやりきれないというように首を横に振った。


「分かってる。だが、そう思わない奴も居るんだ。この工房にも亜人嫌いが居るんだ」

「そ、そんな······」

「なあ、お嬢ちゃん。これはお節介で話すんだが、恐らくこの町ではどこも雇ってくれないよ。理由としては、アンタが亜人であること、女であることが大きい。職人の世界は大体、レグマンの男こそ正統だという文化があるんだ」

「······」

「それに、亜人がレグマンの町で職人とかのような専門職に就くには身分を示す物が無いと断られるのが常識だ。何か身分証は持ってるかい?」

「······無いずら·········」

「そうか。悪いな。それじゃ無理だ」




 しょぼくれるターナと共に家に帰ると、フランとナズが心配そうに出迎えてくれ、事情を話すやフランが怒りだした。


「ほんっと、どうしてそんな分からず屋が多いんだろう! 大体、亜人嫌いなんて何百年前の文化?! 時代遅れにも程があるよ!」

「そうだな。だいぶ意味の無え考えだと思うんだがな」


 落ち込むターナの背をナズがさすっている。


「元気出してターナちゃん」

「ずず~っ······うん」


 物悲しく響く鼻水の音。



「······」


 ナズが静かに立つと、こちらにやってきた。神妙な面持ちをしている。


「トレイルさん······少しお話が······」

「あー。言わなくても面見りゃ分かる。ターナの今後だろ?」

「はい。ここに置いてもらう事は出来ませんか? 私のように」

「······」


 正直言って厳しいものがある。

 ナズを置いているのは同情や私情からだけではない。


 ナズは非常に優秀なスキル持ちだ。薬は何時の時代、どこの地域でも必要とされる。しかも材料さえあれば、施設も工程もカット出来るなんてコストパフォーマンスが高いどころの話じゃない。



 しかし、ターナのスキルは······もちろん非常に優秀だ。ナズのスキルの鍛冶バージョンだ。鍛冶屋ならどこであろうと重宝する能力だ。偏見のせいで活かせないだけで。


 だが、ここに必要な能力ではない。


 俺が剣を取り替えるのはたまにだ。毎日替える訳じゃない。盾も使わないし、基本的には防具も簡単な皮製の物を使っている。


 日用品ならある程度作って貰えれば助かるが、そのためには材料の鉄などが必要だ。となると、金がかかる。つまり儲けにはならない。


 ターナの力を活かしてやる事が出来ない。



「······ふーむ」

「トレイルさん、駄目ですか?」

「駄目って訳じゃない」

「本当ですか?!」

「ただ──」


 喜びかけるナズを制止する。


「養ってやれる程の余裕は無い。だからターナにも何か仕事はしてもらう。ここの設備の修復とか、あるいはナズの仕事の手伝いとかな。しばらくは雑用とかもやってもらうかもしれん。それでもターナが良いって言うなら······どうだ?」


 本人に聞いてみると、見るみる内に涙と鼻水が彼女の顔に溢れ出した。


「お、おねげえしますだっ! 靴磨きでも肩叩きでも、命令された事は何でもしますだよっ!」

「なに? 何でもだと?」

「へ?」


 今の言葉は聞き捨てならん。


「そうか、何でもか。なら、ターナ。お前は毎晩俺に添い寝して、飯の時は口移しで──ぐべっ!」


 良い所でフランにオタマでぶっ叩かれた。


「もう! 本当に見境無いんだから! ターナちゃん、トレイルはバカでエッチだから要注意だよ」

「そ、そうかや? でも、オラみたいな田舎もんは魅力なんて······」

「そんな事ないぞ。今から証明してやろう。さ、二階の俺の部屋で一緒に──いてててっ?!」

「こんの~!!」

「いてて! 折れるっ! 折れる! ギブ、ギブっ!」



 フランに腕を捻られている俺を見て、ターナは困ったように笑っていた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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