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 途切れ途切れの足跡を辿っていくと、そう離れてない所で洞窟を発見した。

 岩壁に空いた穴のような形で、目線よりも高い位置にある。足跡はその下に続いていた。


「洞窟か」

「誰か住んでるんでしょうか。それともゴブリンとか?」


 と、近づいてくるナズを制止する。


「待て、ナズ」

「え?」

「······」


 洞窟の真下辺り。地面の色が不自然に異なっている。

 俺は近くにあった岩を、そこに放り投げてみた。すると、土を吹き上げて岩がメキメキと音を立てて地面の中に沈んだ。


「こ、これって落とし穴ですか?!」

「みたいだな。それに」


 壁に不自然に這った蔦。まるで、これを掴んで洞窟まで登って下さいって言ってるようなものだ。おまけに、細い蔓が近くの木に伸びているのも妙だ。

 一歩下がって腕を伸ばしてそれを引っ張る。すると──


 ──ビイィンッ、ドゴオッ──


 近くの木の上から丸太が倒れてきて、大きな音を立てて壁にぶち当たった。ちょうど蔦を掴んで登りかけたら当たる位置に。


「こ、こんなトラップまで······」

「どうも洞窟に誰か居るのは間違いないようだな。モンスターか、はたまた人間か」


 相手が何であろうと敵意を持った存在なら取り除いておかねばなるまい。


「ナズ、ここで少し待ってろ。中の様子を見てくる」

「は、はい」

「すぐ戻る。何かあったら悲鳴を上げろ。五秒以内には戻る」



 他にもトラップがあるかもしれないので、壁は使わず、そのまま跳躍して洞窟の入り口へ飛び移る。警戒したが、今度は何も起こらなかった。


「······」


 薄暗い中へ目を凝らす。あまり深くはない洞窟のようだ。入り口も狭いし、大型のモンスターでは入れないだろう。


 念のために持っている小型のランプに火を灯して中へ入った。ひんやりとした中がぼんやりと照らされる。


「······ん?」


 足下に妙な物が落ちていた。蔓や木の繊維を編んで作った皿のような物だ。


 それだけではない。小型のネズミモンスターの毛皮が天井のゴツゴツした岩に引っ掛けられている。


「······」


 そして極めつけは、少し奥に見える布団。いや、正確には薄汚い布が落ち葉の上に敷かれてるだけなのだが、どう見ても布団だ。ちゃんと布団として配置されているのが分かる。


 その枕元に枝の束と薬草が置かれている。



 どうやら誰かがここに住んでるようだ。




 そう確信したその時だった。



『きゃああ?!』


「!!」


 外からナズの悲鳴が上がった。


 剣を抜き払いながら一足で洞窟の入り口を飛び出す。


「ん?」


 飛び出すと奇妙な光景がそこにあった。



 まず、ナズは無事だ。しりもちついて、座り込んでるが何ともない。


 問題なのはそのナズの目の前に草の塊が立っていること。いや、草の塊ではない。そのモジャモジャした塊から足がニョキっと2本出ている。

 そして、その手(?)と思わしき所から短いナイフが生えているのも見えた。



 地面に降りてナズの前に立つ。剣先をそのモジャモジャマンに突きつける。


「誰だか知らんが、そんな物騒なモンしまいな」


 とりあえず声をかけてみた。


 正面に立ってみるとそれほど大きくはない。そして、見えている足は明らかに人間。しかも、この俺の鑑定眼が女の生足だと判断している。


 こいつは人間の女だ。山賊か何かだろうか?


「お前、人間だろう? そんな草で変装してるようだが。ナイフを捨てな」


『う、ううう、うるさいっ! お、オオラを捕まえに来ただな!』


 ひどく訛ってどもった声が返ってきた。声もやはり女。かなり若い。


『も、もう捕まらないだよ! 殺られる前に殺るだ! だ、だから、お、大人しく、か、帰れ! 帰るだっ······頼むから帰るずら······』


 最後は自信なく消え入りそうな声で威嚇してきた。手に持ってるナイフがプルプル震えている。


「よくは分からんが止めときな。そんな震えた手じゃ刃物なんてまともに使えんぞ。かかって来た所で勝負は目に見えてる」

『う、うぅ······』


 全身がブルブルと震えだす草女。しかし、観念したのかナイフを落とすとその場にヘナヘナと腰が抜けたように座り込んでしまった。


 俺は念のため剣はしまわずにいた。


「よし、そのまま動くなよ」

『う············うわあああ~んっ!! また売り飛ばされるだ~っ!』

「?!」


 降参したと思ったら今度はいきなり泣き叫び始めた。子供のように、おいおいと泣いて草がガサガサ揺れる。


『わあああ~んっ! やっと逃げられて助かったと思ったのに~っ!!』

「? 何言ってんだ······」

「······っ!? あっ! も、もしかしてっ!」


 俺が困惑してると、後ろに居たナズが驚きの声を上げた。


「貴女はターナちゃん?!」

「は?」

『わ~んっ! わ~っ·········へ?』


 ナズの言葉にピタッと草が鎮まる。


 そして、震える声がかすれて返ってきた。


『そ、そういうおめさんはナズさか?』

「やっぱり! ターナちゃんだね?!」

『············!!』


 すると、ガサガサと草が激しく揺れて、それが──



 ──バサッ──


 と、取っ払われた。草の下からボサボサ髪を振り乱し、涙と鼻水クジュグジュの少女が現れる。


「な、ナズさ~っ!!」


 その少女は感極まったようにそのままナズに飛び付いた。


「きゃああっ?! た、ターナちゃん?」

「よがっだだ~っ! ナズさも無事だったずら~っ! まだ生きて会えるなんで~っ!!」

「わ、わああ?! た、ターナちゃん、嬉しいけど、は、鼻水が!」

「あばばー! ごめんだー! ちーんっ!」

「わ、わあああーっ?!」



 ナズのシャツで豪快に鼻をかむ少女。


 その少女の首に、奴隷の鎖が架けられている事にこの時初めて気がついた。



お疲れ様です。次話に続きます。

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