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本日3本投稿予定です。
朝飯も終わり、晴れてフランの加入を正式に認めた。
と言っても、ノートにフランの名前や年齢などの個人情報と今日の日付を記しただけの手続きだが。
「こんなの意味あんのか?」
「あるよ。記録なんだから」
一応、形だけでもちゃんとした物にしようと言う事らしい。
「ねえねえ、トレイル。ここってさ名前無いの?」
「名前?」
「うん。だって『モンスタースレイヤー屋』ではないでしょ? いくら何でも」
「いや、それで合ってるが」
「ええ~」
フランが不満げな声を出す。
「なんか味気なーい。もっとちゃんとしたのにしようよ」
「そうか? 分かりやすくて良くねえか?」
「だってまんまじゃん。私が名前考えてあげる。例えば······『キラー・トレイルのモンスターハウス』とか!」
たまにセンス0な所が俺の幼馴染みの可愛い所でもある。
「ていうか、それじゃ俺が化け物みてえじゃねえか。却下だ」
「え、そう? うーん。良いと思ったんだけどなあ」
と、ナズに振り向くフラン。
「ナズちゃんも、名前は大事だと思うよね?」
「はい。名前は大事です。覚えやすかったり、一言で内容を伝えられるような名前なら宣伝もしやすいですし」
「だよね! 私の考案したトレイルのキラーハウス良いでしょ?」
「あ、あの、それはその······もう少しだけ無難な感じにした方が······あまり可愛い過ぎたりカッコ良すぎると却って真面目に捉えて貰えなくなるかもしれませんし」
めちゃくちゃ気を遣ってるナズ。
しかし、名前か。
確かに店名と言うか、俺のやってる商売に呼び名があった方が紹介や宣伝がしやすい。出来れば覚えやすい名前で。
やはり無難にモンスタースレイヤーか。それともスレイヤーズとか、モンスター駆除屋とか、モンスター討伐クランとかだろうか。
だが、どれもイマイチだな。
「まあ、名前はおいおい考えてく事にするか。今は『モンスタースレイヤー屋(仮)』って感じでいこう」
「うーん。そうだね。その内に可愛い名前が思い浮かぶよね」
『トレイルと愉快な仲間達のモンスタースレイヤーギルド』とかが俺の中の最有力候補だ。
食後休憩と片付けが終わり、今日の打ち合わせを二人とする事にした。
「じゃあフランは今日は行かないんだな?」
「うん。誰かがここを留守番しなきゃいけないし、それならトレイルの方がナズちゃんの事ちゃんと守れると思うから」
「おう」
今日も森への探索に向かう予定だが、ナズも同行する。昨晩話しておいたように、彼女に直接薬草の分布などを見て貰うためだ。
よって、この家に誰も居なくなってしまうので、フランに留守を任せる事となったのだ。
「それじゃ頼んだぞフラン」
「うん! 楽しみにしててね。井戸とお風呂を今日中に使えるようにしとくから!」
「本当ですか? 楽しみですっ」
フランは残りの設備の復旧作業に当たる。魔法のエキスパートなら女の身一つでも重労働を軽くこなすだろう。
「よし、行くかナズ」
「はい、よろしくです、トレイルさん」
ちょこんと横に随行するナズを連れて森へと向かう。
そして数十分後。森に入り、薬草の群生地近くまで何事もなく進んだ。
「静かですね」
「そうだな。だが油断はするな。モンスターは気まぐれだ。ゲリラ豪雨のように襲って来る事もある。離れないようにな」
「は、はい」
キリリと表情を引き締め、杖を握り締めるナズ。片手で扱える護身用の物だ。攻撃魔法を放つには火力不足だが、無いよりはマシなので持っている。
「ナズは魔法はどれくらい使えるんだ?」
「私はそれ程でも······後方支援部隊に所属していましたから、護身用の防御魔法と味方の能力向上の補助魔法が少し使えるくらいです」
「なるほど。なら十分だな。モンスターとの直の戦いは俺が全部引き受けるから、ナズは自身の護りと俺への支援に徹してくれ」
「はい。よろしくお願いしますトレイルさん」
「······と、言ってる内に来たぞ」
「え?」
近くの茂みから殺気が漂う。
──ガサガサガサッ──
そして現れたのはクネクネと蔓をうねらす奇怪で巨大な花。人の背丈程はある。根っこが無数の足となって歩行している。
「ひっ! あ、あれは?!」
「ブレシアだな。植物系のモンスターだ。動きは遅いが、痛みや恐怖を感じない相手だ。下がってろ」
早くも蔓を足下に這わせてくるブレシア。蔓は細かい鉤状の刺を無数に生やしており、一度絡みついた獲物を逃がさない。
しかし、所詮は植物なので防御力や耐性が低いのがこいつらの致命的な弱点だ。
「アイス・レイジ!」
氷結を纏った一刀を地面に放つ。忍び寄ってきていた蔓が地面に霜と共に貼り付く。
「はっ!」
そして一気に間合いを詰め、極低温になった刃をそのまま根元近くに突き刺す。胚軸辺りに重要器官の幾つかが存在しており、これで片はつく。
花びらが一気に落ちて、茎がぐにゃりと枯れて折れる。
「終わったぞ」
「す、凄い」
後ろで見ていたナズが目を丸くしている。
「わ、私も何度かの実戦で兵士の方の動きは見てきましたが、あんな速い人は見た事ありません」
「そうか? まあ、速さと手グセの悪さなら俺は自信あるからな」
「それに、あの攻撃······トレイルさんは『エルダーナイト』だったんですか?」
エルダーナイトとは俗称だ。魔法属性を纏った剣で戦う戦士の事をそう呼ぶ。
魔法は珍しくないが、魔法を纏った武器は少し珍しく、それを実戦レベルで使いこなす人間は少ないため、上級者として呼び分けるために作られた俗称だろう。
「エルダーナイトかどうかは分からんが、何人かの仲間には褒められたな」
「凄いですよっ、しかもかなりの練度ですよね? もしかしてトレイルさんってエリート部隊だったんですか?」
「いや、そこら辺の一般兵士だ」
「そうだったんですか? それにしても、こんな優秀な方を解雇してしまうなんて······」
「それを言うならお前の方がそうだと思うがなあ。ま、ともかくだ。よほどヤバい奴じゃなきゃ何とかするからよ。このまま奥に向かうぞ?」
「はい。安心して進めます」
緊張が少し緩んだナズと共に奥の群生地を目指す。
お疲れ様です。次話に続きます。




