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本日4本投稿予定です。

 



 マルセが帰った後、フランが尋ねてきた。


「ねえねえ、トレイル」

「ん?」

「あの人と知り合いだったんだ。伯爵家の人なんでしょ? どうして知り合ったの?」

「あー、あれよ。あのオッサンとこのお嬢様ってやつが俺の同期生でな。その関係でだ」

「さっきも言ってたね。お嬢様が来るよって。お嬢様············ねえ、トレイル。そのお嬢様って人と仲良かったの?」

「いや······まあ、悪くはねえんだが······」

「ふーん」


 何故かぶすっとするフラン。


「そっかそっか。まあ、いいよ。私が口出す事じゃないもんね」

「何の話だ?」

「いーのいーの。さ、トレイル。買い物行こう。ナズちゃん、夕飯は何がいい?」

「わ、私はなんでも。あ、でもたまにはお米とか食べたいかもです」

「うん、分かった」





 こうして俺とフランは夕食の材料を買いに出掛けた。午後の斜陽が黄金色になっている。


「いつの間にか結構な時間経ってたんだな。腹減ったなあ」

「だね。夕食は奮発しよっか」

「思わぬ臨時収入もあった事だしな。ビン詰めとか保存食買っとくか」

「じゃあさ、あっちの東口の前のお店に行こうよ。色々売ってるし」

「そうするか」



 町の東門通りに向かう。旅人向けの様々な店が立ち並び、かなり賑わっていた。


「おう、色々あるな」

「うん。あ、あっちに洋服屋さんっ。見てみて、あのスカートすごいフリル。かわいいーっ」

「そーねー」


 今時はああいうのが流行りなのか。いや、それよりも奥にある服の方が俺好みだ。


「フラン、俺的にはあっちの服が似合うと思うぞ」

「どれ? あ、あのピンクの? あれも可愛い! トレイル分かってんじゃん」

「いや、その右側奥の紫のやつ」

「え? っ?! あれ?」


 どこかの異国の踊り子衣装だろう。胸と股の部分を隠すだけの下着のような部分と、後は全部スケスケのベール。


「わ、わぁ······刺激的······」

「なあ、フラン。金出すから是非あれを着て──いてっ! いててっ! 分かった、分かった、冗談だよ!」

「もうっ!」


 フランのわがままボディなら似合うと思ったんだがな。残念だ。


「もう、冗談言ってないで買い物するよ」

「冗談じゃなくて着て欲し──」


 ──キッ!──


「すんません。嘘です。あっちのフリフリフリルの方が可愛いっす」

「よろしい」



 そんな風にふざけていた時だ。


『道を空けてくれっ! 怪我人なんだ!』


 途端に東門の方から大声が聞こえ、振り返ってみると、ザワザワと人だかりが出来ていた。


「何だろう? 今の声」


 フランと一緒に見守っていると、人だかりを割って衛兵達がこちらに駆けてくるのが見えた。タンカをいくつも担いでいる。


「通してくれっ! 重症なんだ!」


 俺らも避けて道脇に立った。

 走っていく衛兵らの顔面は蒼白で、タンカの上に載せられた負傷者は赤い血にまみれていた。


「ぐぅ······ぐふ·········」


 苦しげに吐血する衛兵。道の砂がそれを吸って黒ずんだ。


「······一体何事だ?」

「今の人達、衛兵だよね」


 俺らはまだざわついている人だかりの方に行って、そこら辺の人間に声をかけた。


「なあ、ちょっといいか?」

「うん? なんだい?」

「今の怪我人達は何だったんだ?」

「あ、ああ。僕も詳しくは知らないんだが、どうやら近くの街道にエドルザードが出たらしくて」

「エドルザード?」


 エドルザードは上級モンスターに分類される。

 全身鋼のように硬い刺に覆われていて、馬車よりも大きい身体を持ったトカゲのようなモンスターだ。

 かつての魔王軍においては、その体躯と全身の刺を活かして突進攻撃を担った重装兵のような存在だ。


 硬い刺は強力な防御であると同時に攻撃手段でもある。



「エドルザードが出たのか」

「最初に旅人が襲われて、その報せを受けた衛兵達が小隊で討伐に挑んだんだ。だけど彼らは野盗等から町を守る役割の存在だから······いわゆる軍人とは少し違って、モンスター相手にはあの様さ」

「なるほど」


 と、話している所へ衛兵らがまた外から戻ってきた。


 身なりからして、上官と思わしき中年の男が足を引きずりながら部下に支えられていた。


「ぐっ······不甲斐ない。まさか十五人がかりで行ってこの様とは」


 男が悔しそうに歯ぎしりしていた。


「······」


 不謹慎かもしれんが······これは仕事の臭いがする事件だ。



「隊長、ど、どうしましょう?」

「くそ、どうしたものか······」


「あー、ちょっといいか?」


「うん?」


 俺が声を掛けると、男がジロリとこっちに向いた。


「何だ、今我々は忙しいんだ。話なら早くしてくれ」

「エドルザードが近くに出たと聞いたんだが、倒せなかったのか?」

「ああ、残念だが」


 男が歯噛みする。


「負傷者を多数出す結果で終わってしまった。悔しいが我らの手には負えない。援軍を申請して正規軍に倒してもらう」

「だが、たかがモンスター1匹、しかも被害は今のところ軽微なところへ援軍が来る保証はあるのか? しかも仮に受理されても今日明日来る可能性は低い」

「それは······」


 男が口をつぐむ。俺も所属していたから知ってるが、軍は編成やら準備やらで時間がかかり、場所にもよるが早くても到着に三日はかかるのだ。


 その前に、エドルザード一匹に動いてくれるかどうか。


「だが、我々の現状戦力ではどうにもならない。援軍を待つ他ないんだ」

「······なあ、俺は元軍人なんだが、この度新しく商売始めてな。モンスタースレイヤー屋ってな感じなんだが」

「モンスタースレイヤー?」


 首を傾げる男にサラッと説明する。


「てな訳よ。金はかかるが、俺らならすぐに倒して来るぜ」

「本当か? しかし、信用が······」

「出来ないか? なら、前金500ゴールドで、達成後に2,000ゴールドでも構わない」

「2,500ゴールドか」


 男は少し考えていたようだが、やがて頷いた。


「分かった。それで依頼しよう。だが、念のために言っておくが、もし持ち逃げしたら──」

「分かってるって。信用第一がモットーだからよ。必ず依頼達成して戻ってくるぜ」




 こうして、俺はまたもや思いがけない仕事を請け負ったのだった。



お疲れ様です。次話に続きます。

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