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 辺りには事切れたゴブリンらとオーガ。そして、男の死体。


「······他には居ないか」

「ゴブリンが何体か逃げて行ったみたいだけど周囲にはもう居なさそう」

「そうか」


 死体を調べてみる。中年の男だ。死んでしまっては正体は分からんが、腰に付いた鍵束は奴隷の枷の物だと伺える。やはり奴隷商だろう。


 よく見ると、近くの茂みにも男の死体があった。どちらの死体も今さっきの物ではなさそうだ。一日か二日は経ってるだろう。



 そして肝心の檻の中の人間はと言うと──


「あっ! トレイル! 女の子だよっ!」


 言われて直ぐに確めてみる。確かに、檻の中には少女がぐったりと目を瞑って横たわっていた。


 着ている服はボロい布切れ一枚のようなワンピース。そして首には枷。

 最初に出会った時のナズと同じ格好だ。


 やはり、この馬車と檻は例の奴隷商の物なのだろう。


「ねえ、トレイル。やっぱりこの馬車や檻ってナズちゃんの言ってた······」

「フラン、この扉を開けられるか?」

「待ってて」


 フランの魔法で鍵が開く。檻を開いて中の少女を調べてみるとまだ息があった。


「かなり衰弱しているが息はある」

「良かった~。ヒールしとこう」

「頼む」


 フランがヒールをしている間に近くをさらに探索する。



「······これは」


 あまり良くない物を見つけた。


 また男の死体があった。恐らく、奴隷商人の物なのだろう。

 それはともかくとして、その側に二つの小さな亡骸。もう動かない痩せた白い首には重い枷が着いたままであった。


「······可哀想に」



 他には特に変わった物もなく、俺はヒールをしているフランの元に戻った。


「トレイル、何かあった?」

「ああ。三人の遺体があった。内二人は被害者だな」

「被害者? あっ······そっか······」


 フランは暗い面持ちを伏せたが、すぐにキッと厳しい表情へと変わった。


「この子だけでも助けてみせる。絶対!」

「そうだな」


 ヒールが効いたのか、少女が微かに呻いた。

 しかし、目を覚ます気配は無い。


「とりあえず、これで応急処置は済んだけどちゃんとした手当てしなきゃ」

「分かった。俺が運んで行くからフランは援護してくれ」

「任せて」



 少女を抱え、町へと急ぐ。幸いにもモンスターと遭遇する事もなく、無事に脱出できた。


「よし、俺はこのまま家にこの子を運ぶ。フランは衛兵にこの件を報せてくれ」

「分かった」



 事件報告はフランに任せて俺は少女を家に運んだ。戻ってみるとナズは庭先で家具を磨いていた。

 こっちに気づいて驚きの声を上げる。


「トレイルさん? その人は······?」

「森の奥でゴブリンに捕まってた。ナズ、布団の用意をしてくれ」

「は、はいっ!」


 バタバタと家に駆け込むナズの後に続く。



 綺麗にしたての部屋と布団にて少女を休ませる。まだ起きる気配はしない。


「あっ、この子は······」


 やはりと言うか、少女の青白い寝顔を見てナズが声を上げた。


「やっぱり知り合いか」

「は、はい。同じ奴隷商人に捕まってた子です。檻の中には私含めて五人居ましたので······」

「そうか」

「後の三人はどうなったんだろう······」

「······ナズ、お湯を沸かして綺麗な布を持ってきてくれ。それでこの子の身体を拭いてあげてくれ」

「はい」


 ナズが部屋から出ていく。その顔も少し青ざめていた。恐怖が甦ったのだろう。

 死んだ二人の事はもう少ししてから話そう。多分、残る一人も無事ではないだろう。


「······つくづく後味の悪い話だな」



 ややして、ナズよりも先にフランが帰ってきた。


「トレイル、女の子はどう?」

「ああ、とりあえずは大丈夫そうだ。そっちは?」

「うん。それがね、衛兵に話したら『今、捜索願いが出されてる魔人の少女が居る』って話を受けて」

「そうか。その探し人がこの子だといいんだが」

「一応、衛兵から聞いた特徴では、年は十四歳で、髪の色は薄く青みがかった銀髪、瞳は紅。らしいよ」


 眠っているため、瞳の色は確認出来ないが他の二つの特徴に一致する。

 この子の年はナズと同じくらい。やや水色のような銀髪。


「あ、あともう一つね。もう少ししたら衛兵が確めに来るって。なんか、ライトホース? ダイクボーズ? みたいな家から出されてる捜索願いだからって」

「なんだその家名は。ん?」


 ライトホース、ダイクボーズ。


「もしかして、ラインフォース家か?」

「あっ! それそれっ」


 フランがパンっと手を叩く。


「トレイル良く分かったね」

「良くも何も、この辺り一帯を治める伯爵家だぞ」

「あ、そうなんだ」


 そんな話をしている内に、ナズが戻ってきた。


「トレイルさん。言われた通りお湯と布巾を持ってきました」

「おう、じゃあ頼むわ」

「はい·········えっと~、あの、トレイルさん」

「ん? なんだ?」

「あ、あの。これで体拭いてあげるんですよね?」

「そうだ。頼むぞ」

「なら、あの······席を外して頂けると······」

「遠慮するな。俺なら大丈夫だ。気にするな」

「大丈夫じゃないっ! 出てくのっ!」


 ──ビシッビシッ──



 フランに杖でシバかれて外に追いやられた。



お疲れ様です。次話に続きます。

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