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「あっ、これポミュレ草! こっちはポーレ草にセアル草! すごい、何でもあるよ!」


 例の薬草広場にて興奮するフラン。


「あ、こっちにも何か綺麗な花がある。これも薬草の類いかなあ。どう思う?」

「かもしれないな」


 薬草と一口に言っても、それには二つ種類がある。普通の薬草と、魔法薬草だ。

 魔法薬草は簡単に言えば魔力を養分にして育つ類いの薬草。故に、魔力が豊富な場所に集中して生えるため、魔法薬草の群生地に生えている植物は大抵、魔法薬草なのだ。


 ここに生えている知らない草花も薬草かもしれないのだ。



「ポーチに適当に入れていってナズに見てもらおう。フラン、お前のマジックポーチに入れられないか?」

「うん。杖を仕舞わなければ空いてるよ」

「じゃあ、出来るだけ詰めてくか」


 様々な種類の草花を採取していく。


「結構集まったな」

「沢山採れたね」

「よし。またモンスターの群れに襲われたら厄介だ。さっさと引き揚げようぜ」

「了解っ」



 来た道をフランと共に戻る。


「これだけあればナズちゃんも存分に力を発揮出来るよね」

「そうだな。魔人ってだけで雇って貰えないのは気の毒だが、お陰で俺があの才能を一人占めだ」

「でも気をつけないと。また奴隷商人とかに見つかったら大変だし、偏見を持ってる人は多いから」

「ああ」


 そう言えばナズと出会ったのもこの辺りにだったな。彼女を拐った奴隷商人どもはどうなったのだろうか。話じゃ、ゴブリン達に襲われたとの事だが。



「ん?」

「あっ」


 俺も、そしてフランも咄嗟に木の陰に隠れて気配を殺した。


「······」


 前方から複数の気配が近づいて来る。それを事前に察知したのだ。

 やがて、耳障りな声がいくつも聞こえてきた。


 幹からそっと覗いてみると、ゴブリンの隊列がぞろぞろと進んでいた。全部で十体くらいは居る。


『ギャっギャ』

『ゲギャギィギッ』


 どこかで人間でも襲ったのだろう。手にしている武器には血が付着していて、奴らの手には戦利品らしき金品や食料がぶら下がっている。



 ゴブリン達は俺らに気づく事なく通り過ぎ、奥へと消えた。


「······行ったな」

「うん。どこかで誰か襲われたみたいだね」

「······なあ、フラン。少し調べたい事があるんだが、良いか?」

「え?」




 ゴブリン達の足跡を追う事数分。



 奴らの拠点は案外近い所に構えてあった。

 俺とフランは近くの茂みに身を隠して様子を伺った。


 木を組み合わせた食糧庫に、奪った馬車を丸ごと置いてあるだけの簡単な拠点だ。

 中心に焚き火を立てて、何かの肉を食っている。


「······」

「あ、あれって······」


 フランが思わず声を落とす。


 焚き火の近くに人が倒れている。ピクリとも動かない。すでに死体になっているのが分かった。


「······他にも居るか」


 ゴブリンに混じってオーガが二体居た。一緒に火を囲んで肉を貪っている。

 オーガはゴブリンを大型にしたようなモンスターだ。人よりも巨体で、頭に角が生えていて、怪力で凶暴。群れになると厄介な相手だ。


「ねえ、トレイル」


 フランが小声で指差す。壊れかけた馬車の横に檻があり、その中に小さな人影が横たわっている。


「あそこにも人が······」

「ああ、生きてるか分からんが。大分衰弱してるだろうしな」

「? トレイルは何か事情を知ってたみたいだね」

「······さっきゴブリン達が歩いてた時。奴らの中に鎖をネックレスみたく掛けてる奴が居た。ナズの首に架けられていたのと同じタイプだった。もしかしたらと思ってな」

「じゃあ······」


 タイミングや場所。そして、ただの商人の馬車には似つかわしくない檻。

 ここの馬車は、ナズを拐った連中の物である可能性が高い。つまり、ゴブリン達にやられて奪われたという事だ。



「······フラン。檻の中の奴が生きてるかどうか調べたい。戦闘になるがいいか?」

「もちろん。行こう」

「よし」


 俺が一人で飛び出す。出ると同時に剣を抜き払う。


 こちらに一番近く、背を向けて座っている奴の首に刃が入ったところで連中が気づく。


『ギャギッ──』


 手早く両隣のゴブリンを仕留めた辺りで、やっと奴らは騒ぎ立てて武器に手を伸ばした。


「サンダーアロー!」


 フランの詠唱と共に、雷の矢がすぐ脇を駆け抜いた。それは今まさに武器を掴みかけていたゴブリン達に命中し、奴らの体が電撃に痙攣して動けなくなる。


 と同時に。俺も一気に踏み込み、技を繰り出す。


「ガスタ・ブレイド!」


 風の薄刃を纏った一閃を大きく薙ぎ払う。ゴブリンらは悲鳴を上げる間もなく、絶命した。


 辺りに降る血の雨を潜ってオーガに肉薄する。巨体が怒りに震え、人間の胴よりも大きい棍棒を振り上げていた。


「はあっ!」


 咄嗟に判断を変更し、剣に纏った属性を変える。


「バーン・エッジ!」


 火力を高めた爆炎の一撃を相手の鼻面に叩き込む。


『グゴオオオオッ』


 視界を奪われたオーガの雄叫びが森を震わせるが、そのまま攻撃を繰り出してくる。


 しかし、闇雲な攻撃には正確性も鋭さも無く、悪戯に空を切るだけで終わった。


「アブソリュート・ストラス!」


 すかさず氷の刃で一点集中の突きを心臓に放つ。オーガの巨体がガクンとのけ反り、後ろへ吹き飛んでゆく。


「っ!」


 もう一体のオーガが迫り来ているのを感じて、剣を構え直す。二体目はすぐ目の前に猛進していた。


 そこへ──


「灼熱の翼よ、駆けて貫け、燃えて耀け!『フェニックス・ウイング』!」


 上級魔法詠唱が響き渡り、辺りの景色が紅に染まり上がる。横から飛んで来た焔の翼がオーガの巨体を突き飛ばす。


『ゴガアアアッ』


 そして次の瞬間には木の頭をも越える程の炎が逆巻いて、オーガを包み込んだ。凄まじい熱風と、火の粉が辺りを焦げ付かせる。


 それでも炎は不思議なくらいにフッとすぐに消えた。


 黒コゲになってフラつくオーガの首に、俺が剣を入れた事で決着はついた。



お疲れ様です。次話に続きます。

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