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翌日。
昨晩はフランとナズが帰った後に、ここで再び一晩明かした。
「ふぉおあー······良く寝た」
目覚めもスッキリだ。俺なりの今後の方針が固まったからだろう。ぐっすり眠れた。
だが、安心するのは早い。あくまでも目標が出来ただけで何も達成はしてない。
つまり、スタートラインに立ったのであって、ゴールした訳じゃない。これからが踏ん張り時だ。
「さて······」
やるべき事は腐るほどあるが、どうするか。
本格的に商売を始めるなら、役場に行って商標登録だとかの手続きしなくちゃなんないが、まだ店構えすら出来てないからな。
ちょっとした小遣い稼ぎ程度なら今日からでも始められる。この間の羽買い商人の時みたく。
他にも、まだリフォームは二階とか残ってるし、窓を付けなきゃなんないし、宣伝はどうするかなどの心配はあるが、一つ一つクリアしていくしかないだろう。
「············まずは市場調査からだな」
果たして、昨日の思いつきが本当に需要あるのか町を歩いて調べてみる必要がある。
俺の最初の行動は、町で話を集める事から始まった。
「ん? モンスターで困ってる事? そりゃ、あるはあるさ。なんたって野生化しても人間には敵対してるからね。え? 駆除業者? ハンターかい? 違う? へえ······」
「私は銀行家だしあまりモンスターには縁は無いが······だが、現金や書類の輸送車がたまに街道で襲われる事もあってね。もちろん人間にも襲われるが。街道のモンスターが減れば少しは被害も押さえられるとは思うがね」
「そうだなあ。森の奥でしか採れないキノコとかは貴重でね。本当は頻繁に採りに行きたいんだが僕は弱くてね。モンスターに襲われたらたまったもんじゃないから、減ってくれないかなあ」
「ウチの畑だって毎年被害にあってるんだ。憎たらしいと言ったりゃありゃしない。え? もしモンスターが減れば助かるかって? そりゃ当たり前さ」
「最近、ここの丘にもモンスターが現れるようになったのよ。ええ、子供がよく遊ぶ場所だから困ってるわ。軍にももちろん言ったわよ。でも巡回に来ただけで討伐なんかしてくれないわ。そんな暇無いって。え? もし誰かが倒してくれるなら助かるかって? それはもちろんよ」
「············なるほど」
俺の手元のノートはメモでビッシリ一杯になっていた。
俺は町のあらゆる住民に、モンスターについてどう思ってるかなどを訊ねた。
言うまでもないが、みんなモンスターには困っていた。職種によって様々な意見に別れたが、大して脅威に思ってない者も居れば生活に支障をきたしている者、あるいはモンスターが居なければもっと過ごしやすくなる者など。
「こいつは予想外以上だ。思ってたよりも」
得た情報から判断するに、モンスター討伐は需要の塊みたいなものだ。なぜ誰もやらなかったのか不思議なくらいだ。
考えられる理由としては二つある。討伐は軍の仕事だという先入観。それならハンターの方が儲かるという事実。
ただ単に金で駆除するというのは、悪く言えば非効率で中途半端なやり方なのだ。軍ほどの装備もバックアップもなく、ハンターのように素材で儲けられない。
でも、だからこそ小さい事案や、素材が売れないモンスターの討伐は放ったらかしの手付かず状態となった訳だ。
つまり、未開拓の巨大な市場と言う事。
以上の調査から、俺の結論は──
「いけるぞっ」
これは商売になると確信した。
今現在、俺は無一文だ。
今は百ゴールドでも欲しい。早速仕事を探す。
だが、いきなりモンスター討伐の依頼は難しいだろう。第一、料金設定とかをしていないんだ。
まずは、モンスターによって仕事に支障をきたしてる人間の需要に応えよう。
市場調査の段階で、初仕事には目星がついていたので、薬屋に向かった。
──カラン、カラン──
俺が入ると、店主のオヤジが本から目を離して顔を上げた。他に客はいない。
「いらっしゃい。あれ? あんたはさっきの······」
「なあ、ちょっと話があるんだが」
「?」
「さっきの話では薬草やモンスターの素材がいつも不足していて、薬を思うように提供出来ていないって話だったな?」
「ああ、そうだ。最近の森は物騒でな。モンスターの素材は商人から買えなくはないんだが、薬草は金にならないのか、ほとんど売られてない」
「そうか。なあ、良かったらなんだが俺が薬草の調達を請け負おうか?」
「なに?」
オヤジが目を丸くする。
「お前さん、商人だったのか?」
「いや、違う。えっとー、モンスタースレイヤーだ」
「モンスタースレイヤー?」
「モンスターの駆除業者。あるいはモンスター専門の殺し屋さ」
「そんな職業聞いた事ないが······だが、そんな人間が薬草を売ってくれるのか?」
「今は持ってない。依頼さえしてくれれば採ってくる」
「本当か? それは助かる。それで、値段は?」
「そうだなあ。今回は特別大サービスだ。依頼料はタダでいい。持ってきたアイテムに応じて払って貰おう」
「後払いで良いって事か?」
「そうだ。見ず知らずの男相手にいきなり信用なんて無理だろ? 報酬金は後でいい。欲しい物のリストを書いてくれれば行ってくる」
「おお、なんだか上手すぎる話だが、頼もうか」
こうして俺は難なく最初の仕事にありつけた。
俺はメモを持って森へと向かった。
お疲れ様です。次話に続きます。




