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13

 

「えっと、つまり自分で何か商売始めるって事?」

「そうだ」

「で、何やるの?」

「知らん」

「もうっ、駄目じゃんっ」

「けど、就職より現実的じゃね?」

「そう、でしょうか······」


 フランもナズも困惑しているが、俺的にはナイスな考え方だと思ってる。


「誰も雇ってくれねえなら自分で稼げばいいんだよ。何故こんな簡単な事に気がつかなかったんだ」

「確かに無い選択肢じゃないけど······そんな簡単にいくかなー?」

「今のままでも上手くいかないんだから、やってみる価値はあるだろ」

「確かに。何もやらないよりは良いかも」

「だろ?」


 うんうんと頷くフラン。


「トレイルの言いたい事はわかった。でも、具体的には何をするの?」

「それを今から考える」

「もう、相変わらず当てずっぽうなんだから」

「人生なんて常に当てずっぽう、行き当たりばったりだ。大事なのはその時その時の選択だ」

「な、なんか壮大ですね」


 俺に出来る事と言えばやはりモンスター殺し。となればハンターに向いてはいるが、残念ながら解体の知識と技術が無いから金に繋げるのは難しい。


 もし、ただ単にモンスターを討伐して欲しいという需要があれば話は別だろうが······。


「······待てよ?」

「どうしたの?」

「いや、なんか引っ掛かる事があってな」


 あるんじゃないか? その需要。

 現にここだって、衛兵が掛け合ってくれなくて見捨てられたも同然の酒場だ。そんな所が世の中には無数にある。


 モンスター討伐は、痒い所に手が届いていない状態だと言えるんじゃないか? 畑が荒らされた農夫や、森に怯えながら入る木こりや、街道を大型モンスターに闊歩(かっぽ)されて困る旅人などなど。


 軍隊が相手取るのは大きな被害をもたらすモンスターだ。逆に言えば、日常的にちょっとした不利益をもたらすモンスターには対応しない。というより、そんな事件は多すぎて対応できない。


 ならば、その穴を埋められる人間が居れば──。



「······閃いたぜ。フラン、ナズ」

「え?」

「?」


 俺は二人に宣言するように言った。


「俺は今日からモンスタースレイヤーだ」

「モンスター······」

「スレイヤー?」

「ああ。要はモンスター専門の駆除業者だ」


 たった今の思いつきなのに、何故かアイディアが頭のどこからともなく湧いてくるようだった。この思いつきに俺自身が興奮してしまっているようだ。


「軍の兵士が掛け合わないようなモンスターの討伐を請け負うんだ。ハンターじゃないから素材を効率よく採取して売買するのは難しいが、討伐だけでも需要はあるはずだ」

「軍が取り合わないモンスター······あっ」


 フランも気づいたようだ。


「そっか、この酒場とかもそうだもんね。個人経営の小さな酒場とかがモンスターの脅威に晒される事なんて日常茶飯事だし」

「なるほど。確かに盲点でしたね。モンスター討伐は軍の仕事だと勝手に思い込んじゃってましたが、個人が有料で請け負ったって良い訳ですもんね」

「個人によるモンスター討伐はイコール、ハンターの仕事って思ってたけど、別に素材採取出来なくても討伐が出来ない訳じゃない。そして討伐のみを望んでる人も居る」


 そこまで言って二人は感激したように頷いた。


「うんっ、確かに良いかもね。今までありそうで無かった仕事かも!」

「はいっ、上手い具合に隙間に嵌まるような、痒い所に手が届くような、民間の要望にピタリと当てはまる仕事かもしれませんっ」

「だろ?」


 俺一人の考えだけでは良いアイディアなのか判断出来かねたかもしれんが、こうして感心する二人の反応で間違ってないと思える。



「よしっ! お前ら二人も良いと思うなら俺の思い過ごしや勘違いじゃないな。これは良い思いつきだ」


 決まりだ。


 今日から俺は新しい仕事を始める。



「そうと決まればこうしちゃいられないな」


 飯を口に詰め込んで早々に飲み込む。腹も満ちた。


 立ち上がる俺をフランとナズが見上げた。


「トレイル?」

「どうしたんですか?」

「ここを早くリフォームしようと思ってな。俺の家にもなるが店でもあるんだ。ちゃんとした事務所にでもしないとな」


 そう言うと、二人はポカンと口を開けていたが、どちらともなく大きく頷いて立ち上がった。


「そうだね! 張り切って片付けちゃおっか!」

「私もお手伝いします!」




 気合いの入れた俺ら三人はフルパワー、フル稼動して、夕方には一階をまともなフロアとして甦らせる事が出来た。


「うへ~。疲れた~」

「わ、私ももう無理です」


 バテて座り込むフランとナズ。だが、二人の協力もあって素晴らしい仕上がりだ。



 あれだけ散らかって埃や枝葉まみれだった酒場は、木の床がツヤツヤと光沢を取り戻し、壁もくすんだ汚れが落ちて本来の色を取り戻した。窓はまだガラスが無い状態だが、そこから入る風が部屋の中に(よど)んでいたカビ臭い空気を綺麗サッパリ透き通らせてしまったようだ。


「よしっ! 二人ともお疲れさん。俺は今から宿屋に行って鍵返してくるから留守を任せるわ」

「トレイル体力あるねー。行ってらっしゃい」

「留守番してます」



 宿屋で鍵を返し、部屋に置いておいた荷物の一部を回収する。前払い金がやや勿体無かったが、今はもう寝泊まり出来る所があるのだ。



 さっさと戻って、酒場に着いた頃にはすっかり日も落ちていた。



「ただいま~」


 中へ入る時、思わず口から漏れた言葉に自分でおかしくなった。


 もう、ここは俺の家なのだ。


お疲れ様です。次話に続きます。

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