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『やんっ! ご主人様ったらエッチー!』

『ぐへへっ、いいじゃねえかフラン。そのたわわに実った果実を俺にくれよ』

『や~んっ!』

『うっひょー! フランめ、今日はもう寝かせねえぜー!』




「ぐへへ······よいではないか······」


「トレイルー、起きてー」


「ん······うう~ん·········」


 あ? なんだ? なんかぼんやりしてんな世界。


「んん~? うん~?」

「おーい、トレイル~?」


 すぐ目の前に居るフラン。

 お、そうだ思いだした。今日はフランが俺のメイドになってなんでもしてくれる日だった。


 よし、早速ふんわりおっぱいにダイブだ。


「ぐへへ、フラン、愛い奴よのー!」

「へ?」


 ──ボフン──


「!?!? きゃあああああああっ!!」


 ──バチインッ──









 いやぁ。


 目え覚めたわ。


「なあ、悪かったってフラン。ワザとじゃないんだ、許してくれって」

「知らないっ! 馬鹿トレイル! どうせエッチな夢見てて寝ぼけてそのままだったんでしょ!」


 その通りでございます。


「いや~、な? ほら、夢で寝ぼけてての凶行なら仕方ないだろう?」

「エッチな夢見る時点で駄目っ! もうっ、本当にお馬鹿トレイル! 寝ぼけてたら何してもいいの?」

「あ、いやあ~。駄目、だよなあ」

「ト、トレイルさん······」

「ナズよ。そんな目で見るな······」


 プンプンのフランはツンっとそっぽを向いていて、傍らのナズの悲しげな視線が俺に突き刺さる。


「せっかく、昔みたいに起こしに来てあげたのにっ。馬鹿トレイル!」

「おかげで最高の目覚めだったぞ。今日も一日元気に生きていけるわ」

「~~っ。もーっ!」


 ポカポカと殴ってくるフラン。


「本当にエッチなんだから! 反省してっ!」

「いててっ、わかった、わかった、反省する」


 怒るフランをなだめる。

 やっとご機嫌が治ったところで、二人が持ってきてくれたパンをありがたく貰った。


「でも、叔母さんがここを貸してくれるなんてね」


 同じくパンを頬張りながらフランがしみじみと言う。


「ここは叔父さんとの思い出の場所だから手放さずにとっておくかと思ったのに」

「あの、ここって酒場、ですよね?」


 辺りをキョロキョロしてナズが言う。フランのお下がりらしき服を着ていた。


「もうやっていないみたいですが······」

「うん。ここ叔母さんと叔父さんの夫婦で元々やってたの。でも、魔王が討伐されてからはモンスターが野生化して各地の森とかに住み着いて、その影響でここにも被害が出るようになっちゃったんだって」

「それで経営が厳しくなったところへ店主の叔父さんが倒れたと」

「あれ? トレイル知ってたの?」

「少しだけな。昨日マリーさんから聞いた」


 今でもそうだが、軍は纏まったモンスターの群れか比較的強大なモンスターしか討伐しない。当たり前と言えば当たり前だが、民間にちょっとしたモンスターの被害があるのは日常茶飯事過ぎて一々出兵なんかしてられないのだ。

 大都市に大きな被害の可能性がある案件か、村や町に断続的な被害が及んだ時しか出向かない。


 畑が荒らされた、一人死んだ、家屋が壊されたと言うような、当事者にとっては死活問題な事であろうとも、被害がある程度までいかないと兵士は動かない。せいぜい一時的に巡回に赴くくらいだ。


 ここも、そうした事情で継続が難しくなったのだろう。


「皮肉な話だよな。魔王がモンスターどもを牛耳ってた時の方が被害は大きかったものの、どこをどう守れば被害が防げるか分かってたのに、今はモンスターがそれぞれの縄張りでそれぞれの意思で暴れてるから対処しきれないなんてな」

「うん。しかも、そこへ来て軍は大量解雇だもんね。ますます対応に手が回らなくなって、これからも人知れずに色んな場所で色んな人達が被害に逢うのかも」

「なんだか悲しいですね······」


 しんみりとした雰囲気になったので話を逸らす。


「ところでよ、二人とも朝から来てくれたんだからさ、リフォーム手伝ってくれないか?」

「うんっ、そのつもり! どうせトレイルは掃除とか雑だと思ったから来たのっ」

「ありがとよ、そんなに信じて貰えてなくて涙が出るぜ」

「わ、私も及ばずながら手伝わせて頂きます」

「おう、頼むぞ」


 何せこの有り様だ。三人で取りかかっても、このフロアだけでも一日はかかるだろう。


「ナズちゃん、大変だろうけど頑張ろうね。私も出来る事は手伝うから」

「は、はいっ!」

「でも、油断はしないでね。トレイルと共同作業なんて、さっきみたいなエッチな事されるかもしれないんだから」

「え、えぇ?! し、しませんよね? トレイルさん」

「いや、保証は出来ん。俺の理性が俺の情熱に敗れた時。その時はナズはもう大人の一歩を──ゴフッ!?」


 最後の辺りでフランのアッパーカットが腹に入った。


「もうっ! ナズちゃんの教育に悪いでしょうが!」

「ぐ、ぐごごぉ······」

「わ、私は別に。一応十五歳ですし」

「駄目だよナズちゃん、トレイルは本当にだらしなくてエッチなんだから。油断大敵!」

「は、はい」

「う、うぐぉ、ふ、フラン、先入観を与えるのは良くないぞ······」

「先入観じゃなくて防犯意識!」


 くそ、フランめ。覚えておけ。またおっぱいにダイブしてやるからな。


「ほら、ふざけてないで掃除始めよう? ナズちゃんもトレイルの冗談は流していいからね?」

「は、はい。分かりました」

「トレイルもっ、早く立って」

「ぐぅ、人使いの荒いやつだ」



 こうして、フランとナズが加わり、酒場の掃除が始まった。


お疲れ様です。次話に続きます。

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