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防具の購入で必要な事

 最初に俺の装備を強化する事をユリ達に進められた。


 俺の装備がちゃんとしてないと、安心できないらしい。


 装備をきちんとするには、当然女性用の防具を着ないとならない。


 「てな訳でアリス、一緒に来てくれる?」


 「もちろん良いよ」


 前にアリスと約束してもらって、防具はアリス名義で保管してもらう。


 これで俺が女性用の防具を受付に渡す事は無くなるだろうから、恥ずかしい思いはしないで済む。


 放課後、アリスと共にギルドに向かおうと考えていたらナナミが合流する。


 「二人でどこに行くの?」


 「ちょっとギルドで防具とかを選びにね」


 「アリスと?」


 二人とも俺の種族を知っているし、隠す必要は無いだろう。


 状況説明をした。


 「そっか。私だけじゃなかったんだ。知っているの⋯⋯」


 「ナナミンも知ってたんだね。嬉しいなぁ友達で秘密の共有〜」


 どことなく凹んだナナミの声音を聞きつつ、三人でギルドに向かう。


 なぜかナナミも俺の装備選びに入る事になった。


 「あの⋯⋯自分で装備する女性用防具を真剣に決められるととても恥ずかしいので、控えていただけたら⋯⋯」


 「探索者にとって装備に妥協は許されない。命を預けるのだから」


 「大切な幼馴染だからね〜頑張るよぉ。アタシのお金じゃないし」


 ぐぬぬ。


 グループ分けしたお陰で、普段よりも稼げるし安定している。


 しかも訓練もできている。その反面しっかりと魅了の時間があるんだけどさ。


 さっさと決めて終わらせようと思っていた俺にアリスの一言が突き刺さる。


 「着替える時はもちろん、普段の探索する格好ね」


 「えっ!」


 学校から直接ギルドに向かうのではなく、一旦家で着替えてから向かう。


 アリスの要望はサキュバスになっても問題ない格好⋯⋯つまりはスポーツウェアを着て来いって事。


 探索者として活動するためには動きやすい服装が良いので間違ってはない。


 だけどなんだろうか。


 この背筋をこんにゃくで撫でるようなゾワゾワとした気持ち悪い感覚は。


 とても嫌な感じがする。


 嫌な予感は当たるモノなのだろう。


 「それじゃキリヤ」


 「サキュ兄⋯⋯じゃなくてサキュバスになろう」


 二人から種族になる事を奨められた。


 俺用の防具を選ぶんだ。必要なのは分かっているさ。


 だけどさ⋯⋯幼馴染と友達の前でサキュバスになるって言う拷問を耐えなくてはならないのか?


 無表情なのは相変わらずだが、その瞳の奥にキラキラとした星を宿しているナナミ。


 直接見たいんだな。サキュバスの俺が。サキュ兄って口走ってたし。


 前に見せたやん⋯⋯暗い場所だったけどさ。


 「背に腹はかえられぬって言うじゃない。時間をかければ辛くなるのはキリヤだよ」


 アリスの言葉に背中を押さられて、俺は覚悟を決めた。


 だけど、一目でサキュ兄って分かるのは嫌だな。


 「普段使う肉体の形は変えられないし⋯⋯変えるとしたら髪型?」


 「俺の種族は不便なようでな、あまり短い髪はできないんだ」


 「じゃあ結ぶ? 私持ってないけど」


 ナナミも常にストレートであり結んでいない。ヘアゴムも持ってないらしい。


 「風とかで邪魔になる可能性があるから、一応髪の毛をまとめられるようにしておいた方が良いぞ」


 「キリヤからそんなアドバイスを貰うとは思ってなかったよ」


 アリスからヘアゴムを受け取り、ギルドのトイレで種族になって髪の毛を結んだ。


 男子トイレからサキュバスが出て来たって言う噂が立たないように気をかなり使った。


 「それじゃ、三階に行こうか」


 「外でサキュバスになるのはやっぱりまだ抵抗感が⋯⋯」


 アリスに手を引かれて三階へ。


 既に探索者登録を終えているので、問題なくアリス名義で購入は可能だ。


 さて、防具なんだが⋯⋯まずは色を決めるのが俺のやり方。


 基本は黒色を使っている。


 理由としては、暗がりだと見つかりにくい色と言う事と汚れが目立ちにくい。


 「でもなんか黒ってエッチだよねぇ」


 「え、そうなの?」


 「知らなかったわ」


 「ごめんアタシが悪かった。嘘だから気にしないで」


 一瞬白色にしようかと悩んだが、問題なさそうだな。


 でも⋯⋯サキュバスと黒ってなんか合うよな。初期装備の下着が黒だからか?


 「さて、防具はどうするの? やっぱり胸とか背中とかへそとか太ももとか露出しているような、なんちゃって防具にするの? それともビキニアーマー?」


 「アリスそれは二択で一つだ。同じになるだろ結果的に」


 機動力は高そうだが、そう言うのってアサシン系の人が装備してそうだな。


 身軽にして無駄な服を削る事でできる限り軽くして服の擦れる音を削減、その分暗器とかを隠し持つ。


 俺は剣を持って戦う戦士系だと思っているので、しっかりとした防具が良い。


 かと言ってフルプレートのようなガチガチだとせっかくの翼の機動力を失ってしまう。


 魔法? ナニソレシラナイ。


 機動力を失わない軽装でありつつ全身を守れる防具が良い。


 その点を気にして三人で吟味した結果、一番良かったのを試着した。


 「翼が生えたままだと着づらいから人間に戻らんとな」


 試着室なら誰にも見られてないだろうし、問題ないか。


 試着完了。


 意を決してカーテンを開き、二人にお披露目する。


 「おぉ。想像以上に剣士だな。どこぞの王国騎士みたい」


 「似合ってる」


 「⋯⋯本来の自分じゃない分、素直に喜べないのが嫌だな」


 モンスターの皮を加工して作られたレザーアーマーをベースに胸や腕などに鉄製のプレートで守りを強化。


 質素過ぎると言う理由でアリス達に付け加えられたフード付きケープコート。翼の動きを阻害すると思ったがそんなのは無かった。


 丈夫な皮装備に鉄のプレート鎧。ズボンなので足の動きを邪魔する物もない。


 驚いたのが、露出が一切ない装備を選んでくれた事だ。


 「ちなみに胸元とかへそのところはチャックで開けれるからね」


 「そんな情報は要らない」


 「足や腕も同じだからピチピチからユルユルも対応できるよ」


 「ナナミもそっち側なのね」


 確かに、簡単に胸元を開く事は可能だし、腹の方は胸の下まで開く事が可能となっている。


 それだけではなく、後ろ側にもチャックはあるのだ。着替えやすいようにした配慮らしい。


 手や足もチャックがありキツくもできるが緩くもできる。常に密着状態にしておくけどね。その方が戦いやすい。


 鎧の方も脱ぐのは簡単。


 無駄に魅了に配慮されてしまった。


 「これで初心者用のレザーアーマーともお別れだな」


 最初から翼と尻尾の部分が破けてしまった防具に別れを告げる。


 「キリヤ、痛みとかは無いんだよね?」


 「全く無いな。むしろ動きやすいくらいだ」


 その言葉に二人とも満足そうだ。


 実は俺も内心、ちょっと戦士っぽくてカッコイイとか思って喜んでいる。


 「この格好で魅了したくないな」


 だらしなくへこたれている自分を想像し、落胆する。


 「アタシ的には色々なサキュ兄が見たいけど、ダンジョンの中だから難しいよねぇ」


 「そうだね。メイド服の防具とかはオーダーメイドじゃないと⋯⋯」


 「ナナミ⋯⋯。てか、そんなのは絶対にしないし。要らぬ心配か」


 そんな仮装みたいな事をして、魅了する訳がない。そんな時代は来ませんっ!


 武器の方も新調した。


 重鋼剣と言う、とても重い鋼を使った剣だが『軽量化』の能力が付与されていてそこまで重くない。


 持った時は軽いが振るう時の重さは剣の重量に似合っている。あくまで持つ感覚が軽くなるだけ。


 この剣と防具含めて総額は60万を超えました。


 一括じゃ無理なので分割にしてもらった。


 「金が吹き飛ぶ」


 「しかたない」


 「探索者の費用は本当に大きいよな。これからさらに下に行くと増える」


 これにまだポーションなどの道具も買うからな。キツイぜ。


 クランに入っている部長とかは、その辺のサポートも受けれているんだろう。


 ユリが新たに進化したので、防具と武器を新調する事にした。


 なので、これに合わせてフローライト繊維で作られた巫女服に刀も購入。


 巫女服に刀、そして鬼。


 「キリヤ、これは?」


 「ユリ用にね」


 「なぜ巫女服?」


 オーダーメイドなので少し時間がかかりお金もその分増える。


 二人は疑問を隠せないでいた。


 「いや〜なんかさ。ユリに似合うかもって」


 ヤマモトが前に見せて来た配信者のアバターが脳裏に過ぎる。


 それに引っ張られたのはあるが、想像したら中々に似合っていると思った。


 「キリヤが見た目を気にした、だと?!」


 「機能性だけじゃないんだ」


 アリスは驚き、ナナミはボソリと呟いた。


 似合うから巫女服にした、その理由にとても驚いたようだ。


 別に巫女服じゃなくて、和服なら良いんだけどね。


 巫女服は回復能力とかある人達が好むらしい。


 服装によるモチベーションが魔法や能力に影響を及ぼすとか及ばさないとか、そんな研究もあった気がする。

お読みいただきありがとうございます

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あと三話?

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