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コボルトを魅了する(泣)

 俺は何をしているのだろうか。


 断崖の陰にひっそりと座って、時間が経過するのをただ、虚空を眺めて感じるしかなかった。


 右側を見渡せば、スマホに群がるゴブリンやウルフ、ユリ達だ。


 視聴者のコメントをひらがなだけなら読み取る事ができるユリが先導して、魅了会議が行われている。


 当の本人である俺の意見は基本的に含まれないために、このような形になっているのだ。


 視聴者の意見をユリが確認し、そのポーズなどを確認して採点する。


 「味方が欲しい」


 呟くと、ゆっくりとライムが近づいて来た。


 一番最初に魅了したモンスターであるライムはスライムなので性別が無い。


 「ライム、お前⋯⋯」


 俺の心を癒してくれる友なのか?


 腕を広げて、迎え入れる準備をするが近寄って来ない。


 なぜかと思い、少し視界を上げるとユリ達がニコニコ笑顔でスマホを差し出していた。


 あぁ、なるほど。ここで俺は理解した。


 ライムもユリ達と同じと言う事に。


 「ちくしょう」


 味方なんて甘いモノは無く、俺はコボルトの前にゆっくりと姿を表した。


 「ぐっ」


 背後の視線とカメラがプレッシャーを与える。


 覚悟を決めて、俺は右足を上げる。


 真っ直ぐ上げた足を腕で掴み、Y字バランスのポーズを作り出した。


 ズボンが垂れて生足が露出する。サイズ的問題が発生してかなり下がり、付け根の近くまで露出する。


 足を先から中心に向かってコボルトの目が泳ぐ。


 心の中で深呼吸深呼吸。


 「な、中も⋯⋯柔らかい、よ?」


 オロロロロロロロロ。死にたいでござる。


 魅了は見事に成功して、ウルフ同様に尻の方に向かったがユリがそれは止めた。


 さて、メンタルが削れたので回復するためにいつものをやるか。


 「ふんっ!」


 壁に頭を打ち付ける。さっきの光景を忘れるくらいにはやりたいが難しい。


 “最近のサキュ兄は言葉の節々に恥じらいが見える”

 “慣れるどころか余計に悪化してね?”

 “かわいい”

 “ユリちゃんがノリノリ”


 “仲間が応戦してくれている分、サキュ兄も後ろには戻れない”

 “視聴者とゴブリン達が結託した瞬間”

 “サキュ兄、そろそろ止めようぜ?”

 “とめな”


 コメントを見たユリが俺のメンタルケアを止めに来た。


 少しだけ額から血が流れるが、種族としての再生力があれば一時間くらいで回復するので問題ない。


 「これからよろしくな」


 コボルトの名前は何を基準にしようかな?


 一体だけだし、当分は放置の方向性になりそうだ。


 コボルトは自分がこの中で一番強いと思ったのか、斧をクルクル回して地面に突き立て、胸を反対の握り拳で叩く。


 鼻を天狗のように伸ばした。


 “仲間になったモンスターにもこう言うのいるんだ”

 “全員従順なのかとばかり⋯⋯”

 “ユリちゃんキレそう”

 “こう言う自信家は最終的にサキュ兄が分からせるから。生かすために”


 その態度に苛立ちを覚えるのはゴブリン達だけではなく、ユリも同様に憤慨した。


 「新入りなのに随分と偉そうね」


 体格差があるためか、ユリを見下ろして鳴く。


 それは言葉を出しているようであり、俺も何となく分かる。


 「お前がボスか? 今度からは俺だ」


 と、言っているのだろう。


 モンスターの言葉をしっかりと分かるユリは青筋を浮かべて、短刀を抜く。


 「ならば来なさい。その伸びきった鼻をへし折ってあげる」


 ゴブリンから異例の進化を果たしたユリだが、その実力はコボルト以上なのか?


 俺も気になる勝負の行く末は、人狼と戦ったあの空間で行う事になった。


 審判はローズと言う名前を付けた、メスのゴブリンが担当する。


 開始の合図と共にコボルトが地を蹴って接近し、力だけの振り下ろしがユリを襲う。


 しかし、斧の圧に一切怯まず、冷静に回避した。


 パワーは高いようで、地面に亀裂が入る。


 それを見たユリが次の行動に移る。


 「軽く斬ってもすぐに回復するからね」


 そう言ったユリが銀閃をコボルトの頬に走らせる。


 ユリよりもパワーは上だったがスピードは負けている。そして技術も。


 いつの間にか切れている頬に触れたコボルトは何をされたか分からず、ただユリを睨んでいる。


 「ユリ強いなぁ」


 ライムを抱きながら観察する。


 そう言えばまだライムの検証してないや。


 コボルトとユリの戦いは終始同じ様な光景で、コボルトの攻撃を回避したユリが反撃で浅く斬る。


 一撃で勝負を決めずに実力差をはっきりと分からせる戦い方。


 これは俺がゴブリン達にして来た方法だ。


 絶対に慢心させず、自分よりも圧倒的格上が存在する事を知らしめるための行動。


 地の利も活かせず、殺す事に長けてないコボルトでは今のユリの相手にならないらしい。


 そろそろ終わらせるつもりなのか、ユリが前に出た。


 間合い管理が甘いコボルトはただ、近づけさせないために横薙ぎに斧を振るう。


 そんな攻撃はユリに当たらず、小ジャンプで回避して、斧の上に乗り地面に押し当てる。


 ユリの体重からは考えられないのか、斧が一ミリも動かない事に恐怖を感じるコボルト。


 悠長な事をしている暇は存在しないが、コボルトはどうして良いのか分からないまま、膝を着いた。


 「すぐに諦めるのはダメだぞ。必死に足掻くんだ。無様でも良い、笑われても良い、恥をかいても良い、ただ生き残る。私達にとって一番重要なのは命だ」


 その言葉を残して、ユリはコボルトの頭に手を置いた。


 “眩しい”

 “良い上司になるな”

 “小学生のような見た目からは想像もできない立派なお言葉をありがとう”

 “僕氏は手じゃなくて足でして欲しいでござる”


 斧使いのコボルトを仲間に加えた。


 今後の訓練も一緒にやってもらう。


 「そろそろ時間も良い感じだし、帰るとしますか」


 帰路に着こうとした時である。眼が運命を示した。


 その方向に気配を殺しながら行くと、コボルト四体が群れを成していた。


 邪魔くさいな。


 ここは一旦迂回して別の道に行くべきか。


 「ご主人様、ここは我々にやらせてください」


 「でも相手は四体だぞ?」


 「大丈夫です。仲間も、前の戦いで何もできなかった。だから、活躍したいのです」


 「そっか」


 ん?


 『勝利80%』


 なんだ。


 これはきちんと勝率も教えてくれるのか。


 確実では無いが、俺もサポートできる位置にいれば問題ないだろう。


 後はユリの裁量だな。


 「まずは私が作戦を立てます!」


 “頑張れユリちゃん!”

 “見守っているぞ”

 “ファイトだ”

 “頑張れ”


 バレてないからこそある余裕。


 その時間でユリは戦略を固めて、仲間に指示を飛ばした。


 戦い開始の合図はウルフのダイヤの咆哮から始まる。


 「行くよ、ダイヤ」


 その上にはユリが乗っており、全体のボスとウルフのボスの共闘だ。


 ウルフの中ではダイヤが一番強くて速い。


 コボルトの群れの中心に向かい、全員のヘイトを集める。


 高くジャンプしてコボルトの上を通過した事により、ユリはコボルトから見えない。


 だからこそ、ウルフが通り過ぎた後に落下して来るユリの攻撃に対して、反応が僅かに遅れる。


 「せい!」


 一撃では倒せないから、戦いを有利に進めるための一手。


 短刀で片目を斬り裂いて潰した。


 全員のヘイトがユリに集まったところでゴブリンとウルフ、最後にコボルトが動き出した。


 いきなりの増援に僅かに怯んだコボルト達だったが、すぐに意識を切り替えて迎撃に入る。


 ユリが未だに中心に居て、背後からの増援により全員の視界からダイヤが外れた。


 「狙い通りか」


 ダイヤが目潰しされたコボルトに接近して、ソイツの脚を白く剥き出された牙で砕く。


 片足で立つのは無理だったのか、コボルトが倒れた。


 これで動ける数は三体。


 ここからさらに戦況はユリ達に有利な形に持って行く。


 「ダイヤ!」


 ユリがジャンプすると、その下をダイヤが通り、ライドする。


 仲間達のところに戻り、ウルフ達は攻める。


 ウルフのスピードはコボルトに勝り、その動きで翻弄して分散させる。


 各個撃破を目指すのだ。


 「今!」


 ダイヤに乗ったユリの叫びによって、待機していたゴブリンとコボルトが一斉に一歩を強く踏み出した。

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― 新着の感想 ―
Y字バランスはえっちいですよ…… しかもセリフ。そりゃ吐くわ。 シオトメパイセンは噂がホントでアリスが不幸になる確率が30パーあるのか、それともそんな噂なくて、でも周りが噂に翻弄された結果破局したりで…
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