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龍の力を宿した者達

 「ぐっ」


 「うっ」


 ユリとナナミがブレスの攻撃を受ける。


 本気を出した空間の龍はブレスをゲートを使って障害物としていくつも用意している。


 終わりのないループするブレスは永遠に残る障害物となり行動範囲を狭くし、さらに空間的距離を無視した攻撃も織り交ぜて来る。


 ナナミもその手数の前には反応できずにいた。


 「はっ!」


 龍が一度刀を振るえば、目視不可の刃が至る所に出現してユリ達を襲う。


 「【炎龍の鉤爪】」


 ユリが炎を宿した蹴りで刃を破壊するが、背後から攻撃が当てられてしまう。


 見えずタイミングを測る事も難しい。


 空間を司る力の強さを今、身体に刻まれていた。


 「ユリ、立てる?」


 「もちろん。倒すまで、私は倒れない」


 「君達は強い。誇ると良い。だがね。世の中には上がいるんだよ」


 「頂点に立てば上はいませんよ」


 「その頂点はうちの長男だ。アイツには誰も勝てない。絶対にね」


 ユリとナナミの中で怒りが膨らんだ。


 それは単にキリヤよりも逆創の龍の方が強いと言われているからだ。


 ユリとしては愛する主を、ナナミとしては愛するライバルを。


 下に見られるのは腹が立つのだ。


 かと言って冷静さを失う訳にも行かず、大きく深呼吸して落ち着く。


 ナナミはまた全開の【雷獣化】を使う事はできる。


 だが、それで決め切る自信がなかった。


 今は二人とも常時強化状態を維持できる状態で戦っている。


 「ナナミ、どうやって近づく?」


 「ん〜どうしようね」


 周囲を黒く照らすブレスの柱。


 新たなゲートが出現したらまた柱は増える事になるだろう。


 エネルギーが外に漏れないのか、永遠と動き続けるブレスは脅威だ。


 もしもゲートとブレスの隙間があるなら利用しようとも考えるナナミだったが、それが無いのでできない。


 ブレスに突っ込むのはユリならともかくナナミでは無謀である。


 もしも肉薄して攻撃したとしても龍には瞬間移動と言う手が残っている。


 スピードでは絶対に追いつけない移動方法を前に二人に打つ手は無い。


 「それじゃ、もう一度行くよ」


 唯一の救いは直接ユリ達には干渉できない事だろうか。


 もしもできたら身体の部位の空間を分裂させるだけで終わるからだ。


 バラバラ死体を一瞬を作らない所を見るに、空間しか操れない。


 「がっ」


 「げほっ」


 だからと言って何かが変わる訳でも無く、何度目かの攻撃が直撃する。


 防御力の低いナナミが血を吐き出した。


 「ナナミっ!」


 「はぁ。はぁ。大丈夫」


 龍を強い眼光で睨むが、無理をしているのは誰にでも分かるだろう。


 龍の攻撃の破壊力は伊達じゃない。


 「子供の身体で良くそこまで耐えられるな」


 龍も関心したらしい。


 ボロボロのナナミに対してまだ余裕のあるユリ。


 身体能力が満遍なく高いユリだからこそ、何度も攻撃に耐えられている。


 だからと言ってノーダメージな訳では無い。


 いずれ蓄積したダメージがユリの命を奪うだろう。


 「反撃するよ!」


 「ええ!」


 二人は最速の動きでブレスの柱を掻い潜り龍に迫る。


 二人の前にゲートが出現し、ぶつかる。


 炎と雷に化けた二人だったが、衝突すると反発し合うのか反対方向に弾け飛んだ。


 「何これ⋯⋯」


 「気持ち悪い⋯⋯」


 痛みよりも気持ち悪さが勝ったらしい。


 身体の中が混ざりあった感覚に襲われていた。


 「もう一度」


 「うんっ!」


 「何度やっても結果は変わらないよ」


 二人が移動する先にゲートが出現してぶつかり合う。


 分かっていても無謀にも突撃しては弾かれる。


 ゲートの回避に成功しても、全方向にゲートが展開されるので結局ぶつかり合い吹き飛ぶ。


 ゲートの隙間を通って回避すれば、ブレスがゲートを通過して現れる。


 はたまた刀の攻撃が空間を突き破って迫る。


 龍は一歩も動いていない。だと言うのに至る所から攻撃が飛んで来る。


 削られる集中力と体力、魔力に精神力。蓄積するダメージ。


 「「はぁ、はぁ」」


 二人は背中合わせにもたれ掛かり、肩で息をする。


 一切攻撃が当てられなくなり、ダメージを受けるだけ。


 そんな絶望的な状況の中で二人はまだ、諦めを滲ませていなかった。


 どんなに厳しい状況でも諦めず立ち上がり戦い続け勝ち続けたユリ。


 だからこそ、諦めないのだ。


 諦めた時が敗北。諦めなければ勝てている。


 「私はご主人様の剣。隣で戦うんだ。だから、負けない。前哨戦なんかで」


 「言うね。私も同意見だよ」


 二人が無意識に指を絡めて手を握った。


 目標も心も一つである。一人の男のサキュバスによって固まっている。


 「前哨戦扱いか。まぁ良いけどね。終わらせて加勢に行こうかな」


 「空間を操る龍相手にどう戦うか」


 「あらゆる状況から攻撃して、瞬間移動も可能にする」


 「そんな理不尽な相手」


 ブツブツと呟く二人。握った手から炎と雷が漏れ出る。


 今のままでは勝てない。絶対にだ。


 どんなに足掻いたって龍の想定を超えない限り剣は通らない。


 だから超えるのだ。想定を。


 「ん?」


 「私達の心は一つ」


 「想いも考えも目標も力も全部」


 「ナナミ、覚えてるよね?」


 「うん」


 ユリは炎にナナミは雷になって混ざり合う。


 本来なら反発し合うだろう。どれだけ粒子化しても肉体になるのだから。


 今でも実際反発している。


 だが、意志の強さで理に反する動きをする。反発しても混ざり合うつもりなのだ。


 何回もぶつかって混ざる感覚を覚えた。後は合わさるだけ。


 その時に発生するデメリットやリスクなんてのは考慮しない。


 今をただ生き、そして勝つための行動。


 「おやおや。結果が気になる所だけど、倒させて貰うよ」


 龍が刀を振るうが、その攻撃が飛来する魔剣に防がれる。


 「君達、元の主の姉を忘れたのかい?」


 魔剣からの返事は刺突で返された。元の主とかそんな話、剣には通じない。


 義理も恩も感じてない。ただ、自分が認めた相手に使われないと願うだけ。一回無理やり使われたが。


 その間に合体を進める。


 「ナナミ、戻れなくなったらどうする?」


 「どうもしない。心は一つだ。キリヤを支えるだけ」


 「半分はナナミなんだし、私もご主人様に女として好きになって貰えるかな」


 「おい。私の心が揺らぐ事を言うな」


 「冗談だよ。でもこの想いは敬愛じゃない。分かるよね?」


 「うん。その話は全て終わらせたからね。戻らないと決まった訳じゃないし。今はそう」


 「全力で」


 「「アイツを倒そう」」


 混ざった炎と雷が実態を宿す。


 髪の毛は紅と金で太ももまで伸びており、瞳は琥珀色で赤色の瞳孔をしている。


 頭の上には猫耳が生えており、横側には龍のような角、額には鬼のような角が生えている。


 尻尾は鱗に覆われた太く長いのと毛に覆われた細くて長い二つが伸びている。


 服装は巫女服をベースとして、肩と脇、横側が空いており胸が見える形となっていた。


 両足は猫のようになっており、両腕は龍のように鱗に覆われていた。


 翼は六枚、雷の模様が浮かんだ赤い鱗に包まれた翼だ。


 「ユリ。何ナナミ? なんで横乳が見えるの。あと脇も。こう言う服装はキリヤ担当でしょ。知らないよ私に聞かないで。熱でも逃がすためじゃない? だったら肩からかけて⋯⋯」


 ナナミが巫女服について深く語り出そうとしたタイミングで二本の魔剣が戻って来る。


 ナナミ的には肩から上側の胸が露出している方が良かったらしい。


 和服は上から剥がされる方がエッチ、だと思っているようだ。


 そんな価値観をユリも共有しながら、キリヤがこの巫女服に身を包んだら、なんて想像をする。


 「うん。可愛い。そうだね。ライムに頼んでキリヤに着てもらおう。良いね。新たな魅了配信のネタができた」


 二人が同じ体で会話しているため、とても良く分からないセリフになっている。


 「混ざったか⋯⋯異様な身体だ」


 「無理に混ざったからね。でも猫耳と角の共存って良くない? さすがに四本はやりすぎでしょ」


 「まぁ良いさ。どこまでやれるか楽しみだね」


 「そう。まぁまずは。名前決めない? ユリとナナミでユナで良いんじゃない? それともナユ? ユミ? ミユ? なんか雑だね。最初のユナで良いね。気に入った。よし終わり」


 二本の魔剣が左右に動き、手の動きに合わせて目の前で切っ先から合わさる。


 その二つは物質が無くなったかのように混じって行く。


 手の平を合わせると、魔剣は完全に混ざる。


 バッと広げると一本の刀が完成する。身長並みに大きい大太刀となった。


 黄金に輝く刀身に炎の模様が刻まれている。翼とは対照的の魔剣の刀。


 「一撃で決めさせて貰うよ」


 「できるかな」


 「できるさ。だって私達は龍の力を混ぜたんだから。⋯⋯私達の力はどんな龍をも超え、喰らう。【雷炎獣龍の気息】」


 炎と雷が混ざったブレスが真っ直ぐ龍に飛来する。空間を捻じ曲げ軌道を変えようとするが、力が強すぎて簡単にはいかない。


 それでも力尽くで捻じ曲げた。


 「一撃で決めるからね」


 「いつの間に⋯⋯ふんっ!」


 目の前に現れたユナから離れるために瞬間移動をした。しかし、目の前には既に彼女がいた。


 「なんっ!」


 逃げても逃げても、その先にはユナがいる。


 極限の集中力で相手の移動先を察知、後は最速で向かうだけ。


 どうやってそれを可能にするのか、座標を移動させる際に発生する微細な魔力の流れを視て感じてるのだ。


 ナナミの本能と集中力、ユリのキリヤ譲りの観察眼と応用力により実現させた。


 「【雷炎の太刀】」


 炎と雷を宿した刀を振るった。


 「ぐっ」


 避けるのは間に合わないと本能が訴え、防御に走った。


 大太刀から繰り出される一撃の重さは想像以上。


 空間の盾を作っても、それを斬り裂く。


 「なんでっ!」


 「空間をも斬り裂く刃。ご主人様、キリヤの領域へと来れたんだ」


 「がはっ」


 身体を大きく袈裟で斬られ、魔剣は本来の刀のサイズに戻る。


 「まだ、終わらないっ!」


 「ええ。分かってる。強いよ、本当に。一撃で終わらなかった。【雷炎の神突】」


 「カヒュッ」


 ナナミの十八番の刺突、空間を突き破り龍を穿つ。


 空間の龍と雷炎獣龍の戦いは幕を閉じた。


 「ユナならあの戦いに、参加⋯⋯」


 勝利により気を抜いた二人は分離した。


 元々反発するのだ。完璧に混ざる事は無い。


 「ユリ、もっかい」


 「うん。でもその前に行こ。ご主人様の助けに」


 「分かった」

お読みいただきありがとうございます

評価【★★★】《ブックマーク》、とても励みになります。ありがとうございます

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