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魅了参戦!猫っ子ヒートアップ

 ユリとの巫女百合魅了終え、英雄達に手を合わせている。


 ご冥福をお祈りします。


 これでもまだ数は多い。


 もしも向こうの世界でも地球と同じくらいの人口があるとしたら、数十億は超えているのだろう。


 こっちに来た英雄達の数は億にも到達していない。


 そう考えると、この先が億劫になりそうだ。


 魅了会議も再び熱を帯びて開催されたため、俺達はしばしの休息に入る。


 無垢の英雄は指揮命令を下す英雄が敗北したせいか、動かずにその場でとどまっている。近づいても攻撃する素振りすら見せない。


 帰還するような指示は受けてないのか、使い捨ての駒として扱われた可能性が高い。


 もしかしたらそれは干支の英雄にも言える事かもしれない。


 この場にいないダイヤにも戦況を聞いておいた。


 子供も強ければ英雄になれる。しかし、大いなる力に肉体が堪えれず、刺激すると砕けるらしい。


 なんとも酷い話だろうか。


 「龍に憧れた英雄、家族を助けたい英雄、誓いを守ろうとする英雄、なんとも悲しい話だな」


 同情してやる気にはなるが、それでも侵略して来たのはあっちだ。


 そう考えると少しだけ冷えた目で見てしまう自分がいる。


 もしもユリが進化していなければ、ナナミが助っ人として来てなかったら、どうなっていたかを考えたからだ。


 ダイヤの進化には驚いたが、乗り心地や寝心地が最高なために精神回復には持って来いである。


 残念ながら、月に魂の一部を帰属したらしく出られなくなった。


 ダンジョンに一緒にいけない。探索中にレイはこの毛を楽しみながら俺の配信でも眺めているのだろう。


 「なによ」


 俺がジーっと睨んでいるとレイが困惑した表情を浮かべた。


 魅了会議も終盤、相変わらず仲間達が率先してまとめてくれるので残念な気持ちになる。


 彼らは成長と共に魅了に対しての熱意も上がってしまう。


 ⋯⋯と言うか皆の衆、ナナミについては一切触れないのかな?


 突然入って来た新人さんだよ? 強さはともかく。


 いや、ナナミについては話題に上がっていた。


 こう言う時って炎上するように思えるのだが、視聴者の皆はナナミを魅了に使う事ばかり考えていた。


 友達とか恋人とか、そんな友好関係を気にする素振りはあまりない。


 仲間の熱量が増すように、視聴者達もランクアップしているのかもしれない。


 そのしわ寄せが俺に来るのはなんとかならないものか。


 「もうライムが全部やれよ!」


 嫌だよーって感じで身体を震わせた。【念話】と言う会話できる魔法を会得しているのにあまり使わない。


 まぁ意思疎通も会話もできるし必要は無いんだけどね。


 「じゃあ、ダイヤの影で魅了すれば良くないか?」


 「形しかないですぞ」


 「大丈夫だって。それでも視聴者達は満足するから」


 「感情の形を一切出さない影じゃ流石に⋯⋯マニアックでは?」


 「そうかなぁ?」


 見えない、だからこそそこにエロスはある!


 的な事をアイツらなら言いそうだ。


 妄想できるならその幅は大いに広がる。服などを作らなければ裸体の想像だって可能だ。


 どれだけ形を精巧に作ろうが所詮は影、俺には一切の被害が出ない。


 結構理想的なのでは無いだろうか?


 「魅了はセリフや恥じらいまでがセット。影ではできないところもありますぞ。何より、人じゃない相手には通用しませんぞ」


 「そこはあれだ。吹き替え声優の如き声当てをすれば解決」


 「影になると、今まで以上の過激なポージングを要求されますな。当然影なので操るだけで要望には応えられますな」


 所詮は影。しかも操るのはダイヤだ。何も問題ない。


 「それを幼馴染殿や妹殿も観る訳ですな」


 「他にもいるだろうな」


 「動画の概要欄に一行ある分を追加するとします」


 ん?


 「注意、これは保護のためのモザイク用の影です、と」


 「おいおい嘘じゃないか」


 「嘘だろうとなんだろうと視聴者はそれを信じる、影の中に隠れているサキュ兄を想像して妄想するのです。今はどんな顔をしているのだろうかと。今の我ならば表情の微細な変化も再現できますぞ」


 「分かった。分かったからこの話は無しにしよう」


 今よりもよろしくない方向に進むってのは理解できた。できてしまった。


 なので話は切り上げた。


 ちょうど会議も終わったらしく、俺達は新たな英雄達の魅了に向かう。


 今回はナナミと一緒らしい。


 まさか動画でこの人と一緒に魅了する日が来るとは、少し考え深いモノがあるな。


 あぁ、なんて事か。


 どうして、どうしてなんだ。


 なんで同級生で同じ部活で剣で対等に渡り合った相手と一緒に恥ずかしい思いをしないといけないんだ。


 しかも少しやる気を顔に出しているナナミ。微かな変化しないが、その微かな変化も珍しい事。


 その僅かなる違いだけでナナミの中はかなり楽しみに感じていると分かる。


 彼女の熱量が上がれば上がる程、俺のモチベーションは比例するように下がる。


 「頑張ろう。サキュ兄」


 「あ、ああ」


 ナナミにその名前を呼ばれる日が来る事を俺は望んでいなかった。


 なんではっきりとその名前を呼べるのか。だいたい配信している事実を知ってどうしてそんなにやる気を出せるのか。


 ⋯⋯ああ、そうか。


 ナナミは知らないのだ。配信されると言う意味を。


 不特定多数に自分の恥ずかしい姿を見られ、黒歴史ノートに刻む日になる事実を。


 ならば教えてやろう。


 魅了の本当の悪夢を。


 “猫っ子参戦!”

 “そろそろ触れた方が良いよね? 同級生かな?”

 “妹かもしれん”

 “双子の妹じゃないと種族なれなくない?”


 “どうでも良いだろ!”

 “今は魅了に集中”

 “ちなみに今回は同級生と仮定しています”

 “まぁ別に対等な立場での魅了はユリちゃんで終わったけど”


 “対等だが押しと受けは別”

 “あの中途半端な終わり方は止めてください”

 “この子も気分が高揚すると電気ビリビリって出すのかな?”

 “サキュ兄感電しちゃう”


 “誰か、サキュ兄にゴムを、サキュ兄に絶縁体のゴムを!”

 “おっま。サキュ兄にゴムは必要ねぇよ”

 “電気はライムで対策可能か?”

 “全身にゴムを巻き付ける⋯⋯つまりサキュ兄の身体はっ!”


 ライムが俺の姿をスーツ姿にした。


 片手には細長いノートのような物が用意される。中を見ると、クラスメイトの名前がズラリと名簿順で用意されている。


 教師が生徒に関しての提出物の管理やらをするモノなのは理解できた。


 つまり、今回の俺は教師と言う事になる。


 そしてナナミは⋯⋯。


 「これってどこの高校の制服だろう? ブレザーだし私立かな」


 「今は公立でもブレザー採用のところが増えてるだろ⋯⋯ってツッコミどころはそうじゃないよな」


 どうしてナナミは女子高生の格好をしているか、が問題だ。


 確かに高校生だけど今回は魅了だ。


 「これじゃあまるで」


 “教師×生徒の完成”

 “ファイト!”

 “楽しみやわ”

 “まだローズの出番が残ってる”


 ナナミが魅了の内容をしっかりと確認すると、僅かに身体を震わせた。


 オドオドとしだし、瞳が安定せずに震え出す。


 ふっ、こうも早く理解する事になるとはな。


 これはもうナナミの口からはっきりと「嫌だ」と言わせて皆には帰って頂こう。


 「す、少し緊張するな⋯⋯」


 「なんでだよ!」


 「私とするのは、嫌? ユリとは一緒に、したのに?」


 「え、普通に嫌だけど?」


 「酷いっ!」


 誰が好き好んで一緒に魅了したがるの?


 俺が即答で否定すると、あからさまに残念がるナナミ。


 さて、俺も一応確認でもしておこうかな。


 俺がコメントに目を移そうとしたタイミング、正面を雷が走る。


 ナナミがコメントを映し出している魔法を破壊したのだ。


 「なに、を⋯⋯ひゃっ!」


 カメラでは認識できないスピードで彼女は俺の尻尾の先端を舐めた。


 神経が密集している尻尾を攻められるのは性感帯を攻められると一緒⋯⋯と昔レイに熱弁されて嫌がらせを受けた事がある。


 「な、何を⋯⋯」


 「ダメじゃないですか、こんな所で二人きりなんて、⋯⋯何を望んでいるんですか?」


 「な、ナナミ?」


 あーこれはあれだ。もう始まってるヤツだ。


 さっきの不意打ちで俺は座り込むような体勢を取ってしまった⋯⋯いや、もしかしたらそのような姿勢にさせられたのかもしれない。


 左ももに座られ、ナナミの細長い右足が股の間に入り込んで来る。


 「⋯⋯っ!」


 細長く曲げてしまえばすぐに折れてしまいそうな左手の指で俺の顎を固定し、目を合わせられる。


 ナナミの瞳に反射する俺が俺を見つめる。


 そのくらいには距離が近い。この時点でもう頭真っ白。


 ナナミの右手は俺の尻尾を根本から撫でるようにゆっくりと丁寧に引っ張り先端を優しく包み込み、親指に軽く力を込めながら摩った。


 「うっ」


 「前にレイさんに教えて貰ったんだ」


 耳元で囁かれる恐ろしい内容。吐息が耳をくすぐる。


 ナナミよ、お前はどうしてそこまでノリノリになれるのだ。


 「相変わらず先生は、ここがお好きですねぇ」


 「な、ナナミ⋯⋯」


 もう止めて。もう魅了終わってるから。


 意識を取り戻した人間達が俺達の事を凝視しているから。仲間も皆見てるから、もう止めて。


 「や、やめて⋯⋯」


 「でもねぇ、センセ〜」


 役に入り過ぎだろ!


 俺のこれも演技だと思われたのか、本心が通じないんだけど?


 怖い。もうここまで来ると恐怖の対象としか見えなくなる!


 「身体は、欲しがってますよ?」


 チュッ、そんな音が耳の傍から聞こえた。頬に感じる暖かい水。


 緊張と羞恥により上昇した体温よりも暖かいモノ。それを自覚すると感じる、ナナミの触れている部分から感じる熱。


 それは俺のよりも熱くなっている。


 そこで理解した。


 ナナミも恥ずかしいのだ。そして、それを誤魔化すために熱量を上げて魅了に取り込んでいる。


 どんなに逃げたくても戦うその姿勢は本物の探索者だった。


 そんなナナミを自覚してしまうと、どうしても考えてしまう。


 ⋯⋯逃げてくれよ、と。


 “お友達さんありがとう!”

 “今回はサキュ兄が受けでございます”

 “サキュ兄の見た目って大人だからね。教師の方が似合ってる。仕方ない事だったんだ”

 “珍しくサキュ兄の甘い声が聞けた”


 “ずっと赤面している”

 “最高!”

 “やっぱこれがサキュ兄よな”

 “帰って来た感がパナイ”


 “初見の俺、フリーズ”

 “ここ一番のサキュ兄の良い姿かもしれん”

 “サキュ兄最高”

 “会議に参加してないけど、これ考えやつ天才だよw”


 “えーと”

 “多分半分はアドリブ。ここまでは求めていなかった”

 “セリフだけで十分だった。頬キスまでは求めてなかった。でもありがとう!”

 “つーかこれ、もしも恋人だったら今後の関係ヤバそうw”


 “サキュ兄に彼女はできんやろ”

 “あの友達か恋人か分からん猫っ子はサキュ兄をちゃんと分かってる子だからどうでも良いかな?”

 “エスカレートしたなぁ”

 “サキュ兄、特技の死んだ目をしている。全てを悟ったか”

お読みいただきありがとうございます

評価【★★★】《ブックマーク》、とても励みになります。ありがとうございます

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