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これがサキュ兄クオリティ

 「ほら、そこに座りなさい。わたしが、癒してさしあげますわ」


 そんなきっしょい言葉を出すのは他の誰でも無いこの俺自身である。


 ライムで作られた大きな注射を持ったナース姿の俺。


 無垢の英雄達を人間に戻し、その最期を見届けた。


 誰もが苦しみの声を上げるが、そんな表情は一切していない。


 死ぬ時は苦しむモノ、そう定義されているからやっているかのようだ。


 まるでプログラムされたロボットである。


 人間で弔う事ができていると信じて魅了を繰り返している。


 連続でやったせいか、急に耐性がついたらしい。


 恥ずかしいと思わず、相手を労る余裕すら生まれていた。


 「あと半分。どんだけ来たんだよ」


 『相手もなりふり構ってられなくなったのかしらね』


 「項を焦って進行して来て敗北続き、笑えない話だな」


 しかも龍の力はこっちで手に入れている訳だしな。本当に笑えない事だろう。


 ありがたいとも思わないけどな。そもそも攻めて来るなよ。


 俺は普通の配信者で探索者になりたかった。


 「魅了配信は普通なのかな?」


 そこを気にしては負けな気がして来たので考えないようにする事に決めた。


 さて、次はどうするのか。


 この長い魅了も早く終わらせたい所。


 魅了の時間がかかっているのは魅了会議のせいだ。


 魅了中にも魅了会議をして、裏で仲間も動いてまとめてはいるけど間に合ってない。


 普段どんな風に魅了会議しているか知らないけど、ネタは尽きないのだろうか。


 「主君!」


 「ユリ?」


 戦いが終わったのか、ユリが俺の元へ飛んで来た。


 「どうした?」


 傷は負ってないな。完勝したか回復してから来たのだろう。


 「魅了しているからと聞いたので急いで参りました。再生頑張りました」


 「無駄に頑張らなくて良いんだよ?」


 仲間に見られながらやるのって結構辛いんだよ。知らないのかな君は?


 俺とユリが会話をしていると、電光を輝かせて迫って来る猫人の姿もあった。


 「ナナミも⋯⋯無事か。良かったよ。で、何しに来たの?」


 「魅了していると聞いて。当たり前じゃないか」


 「そんな事当たり前にしなくて良いんだよ。知らないのかな?」


 「知らないし知ろうとしないし分からないから。問題ない」


 色々と問題ある気がする。


 なんでだろう。あと一人くらい来る気がする。


 「主人。出遅れて申し訳ありません」


 「ローズ⋯⋯その様子だとちゃんと進化できたんだな?」


 「はい。修行の末力を付けて戻って参りました。長期に渡る不在、重ねてお詫びします」


 「必要ないよ。で、何しに来たの? アイリスの所にいなくて良いの?」


 「魅了していると聞きました。あの馬鹿はすぐに回復すると思います」


 あのさ。なんで全員が俺の所に来るのに『魅了しているから』っ理由があるのよ。


 戦っているから助太刀に、とかもっと優しい理由は無いのかな?


 月を覆っていた光が消えているので、レイも元気になったのだろう。


 今は双眼鏡片手に何やら魔法を使っている。


 その魔法は俺達の周囲を囲むカメラの形をした光の塊だろう。


 さらに、半透明のウィンドウを出してコメントを見れるようにしている。


 魅了会議を素早くやらせようって言う魂胆なのだろう。


 いっそレイも巻き込んでやろうかと、内心思いながらそろそろまとまる頃なのでコメントを見る。


 「「「「え?」」」」


 俺達四人の声が重なった。


 “全員で魅了したら?”


 その一つのコメントが他の視聴者の魂に何やら嫌な炎を灯したらしい。


 やる気に満ち溢れた皆さんのコメントは止まる事を嫌がり、ものすごいスピードで書き込まれて行く。


 強化された動体視力でも追えない程のスピードである。


 魔法の性能が同時に書き込まれるコメントに対応しきれてないらしい。


 そのため、見れずに上に流れるコメントが数多くある。


 「わ、ワタクシを侮るなああああ!」


 レイの叫びが月から轟いた。


 すると、四方八方の方向にコメントが展開され、縦にもその数を増やす。


 魔法の数を増やす事で数多く寄せられるコメントに対応したらしい。


 物凄いやる気を感じる。


 ⋯⋯しかし、その情熱をどうしてここで発揮するのかは想像できない。


 そもそも、これ程の数があっても一度に把握はできない。


 無意味な事⋯⋯だ?


 「ローズ、なんだそれは?」


 ローズの背中から飛び出た血は神経のようになり、先端には眼球を生成していた。


 「意図的にそこは目だと思い込み再生するとこんなふうに新たな目を作成できます」


 「やり方を聞いているんじゃない。それで何をしている?」


 「数多く寄せられているコメントを同時に読み解き記憶、そこから必要な部分だけを脳にインプットしてます」


 「き、器用だね」


 「お褒め頂き光景です」


 良し、俺に不利益な事がおきそうなのでこの目を全て切り落とそう。


 「魅了会議の結果が出ましたよ。ユリ様、主人、お二人の出番です」


 「「へ?」」


 ローズの血がいつの間にか俺の足に絡みついていた。全く気配を感じなかった。


 その血に引っ張られて、一般人がジェットコースターで感じる強風を感じつつ投げ飛ばされた。


 ユリが飛行能力で抵抗するかと思っていたら、意外にもノリノリなのか抵抗した様子が見られない。


 だったらもう魅了の成果だけ横取りしてユリ単体で良いのではないか?


 そう考えるのは不思議な事では無いだろう。


 だから俺は抵抗するで。翼で!


 「うっ。翼が動かせない」


 「神経毒です」


 「ろぉおおおおおずぅううううう!」


 貴様、そこまでやるのか!


 鬼だな! 真性な鬼だな!


 ユリと共に投げ出された俺。翼の感覚が瞬間的に戻る。


 後遺症無く翼を動かせるって⋯⋯無駄に毒の扱い上手だな。


 「仕方ない。辛み恥ずかしみも全部ユリと共有だ」


 「嬉しくないような嬉しいような、複雑な物言いですね」


 一体どんな魅了なのか。前のようなSMとかお嬢様は止めていただきたい。


 俺の中で絶対に二度もやらない魅了にカウントされているのだ。


 「ッ! 巫女服!」


 ユリとお揃いの巫女服だった。


 目の前にローズの血でできた文字が現れる。魅了の内容らしい。


 “よろしくお願いします”

 “やっぱり初期からいるユリだからね”

 “こうじゃなくっちゃ”

 “エロくないし平和的だ。うん”


 “百合は共通で世界を救う”

 “お姉さん!”

 “さぁやれ”

 “画質が急に良くなったし画角も最高なんだが?”


 “カメラ変えたな。⋯⋯あれ? こんなノーラグで視点って急に変わる?”

 “どうなってんの?”

 “急に視点変わるけど、他のカメラなくね? 不思議なんだけど”

 “カメラある場所にないのだが?”


 「おい待てユリ、これはよろしくないだろ! もうアウトだよ。ギリどころかアウトだよ!」


 「あくまでフリですから! そこはもうご主人様の演技力次第です! ⋯⋯どさくさでやっても私は怒りませんよ?」


 ダメだ。今のユリは少し興奮状態にある。


 俺の呼び方によって状態が分かるって何か嫌だな。


 「し、仕方ない。やるぞ!」


 「はい!」


 俺はユリを後ろから抱きしめる。


 少し焦げ臭い?


 左手を右頬に伸ばして、右手を巫女服の中に入れて行く。


 足を絡めて股をゆっくりと開く。


 「ご主人様、大胆」


 「やめろ」


 「ご主人様、あと少しです」


 「囁かないで」


 俺とユリは違う意味で頬を染める。


 なんで受ける側が喜んで元気になって、攻める側が恥ずかしがって落ち込んでるんだよ。


 ユリ、お前はいつからこんな奴になってしまったんだ。


 “ユリの百合”

 “やっぱりこれが一番よな”

 “上下関係じゃない。対等な関係なのが良い”

 “さぁ、早く!”


 俺は奥歯に力を入れながら、声を絞り出す。


 「あ、あら? こ、これは、み、みみ、見世物じゃ、ないわよ?」


 はむっとユリの耳を甘噛みする。


 「はうっ」


 変な声出すな!


 軽く噛むと艶かしい声を出して、体温が急上昇した。


 「あっつ」


 まるでガスバーナーに灯した火を直接口に入れたみたいだ。


 本当はここで舐めてゆっくりと口を離すのだが、熱すぎて反射的に離れてしまった。


 「もう少し巫女服を着崩した方が色っぽかったですかね? ご主人様。身体くらい、いくらでも触って構いませんよ。ご主人様なんですから」


 「入れるだけで十分なのにそれ以上するのは不埒だ。俺はそんな事をユリに受け止めて欲しいとは思わない。⋯⋯あと、それやったらもっと体温上がって溶ける」


 「うう。感情の高まりはまだ制御できませんか」


 今もまだ口の中がヒリヒリする。これが罰と言う事なのだろうか?


 しっかし、これで視聴者の欲望は満たせるのだろうか?


 ちなみに今回の魅了は同期の巫女が寺内でイタスって言うストーリーがある。ふっ、くだらん。


 てか、これでマナやアリス、ナナミやサナエさんに変な目で見られたらどう責任取ってくれるのだろうか、この野郎共は。


 “ぬぉおおお! 最後までできなかったか!”

 “物理的に熱くなるのは知らなかった”

 “ギリギリで寸止めされた感”

 “生殺しなんだが?”


 “胸揉んだタイミングで終わった。まぁ、服に手を入れただけで身体に触れてないらしいが、知らんな。俺にはそう見えた”

 “サキュ兄の恥じらいは見れたけどね、少し”

 “手首が少し見えた。入れた部分浅いな”

 “多分身体に触れないように気をつけただろうなぁ。ゼロ距離でユリちゃんに触れられるのはサキュ兄の特権だよなぁ。羨ましい”


 “熱そう”

 “今のユリちゃんはテンション上がると夏を呼んでくるな”

 “百合百合”

 “百合豚歓喜の魅了だったぜ。ありがとう”

お読みいただきありがとうございます

評価【★★★】《ブックマーク》、とても励みになります。ありがとうございます

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