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世界で唯一のサキュバスが爆誕したってさ

 いつからだったか、探索者や迷宮配信者に憧れたのは⋯⋯。


 分からない。だけどとても幼い時には憧れていた。


 武器を持ち、命の危険と隣り合わせでモンスターと戦う探索者。


 その危険で壮大な冒険を動画のエンタメとして届ける配信者。


 俺の憧れは止まらなかった。


 探索者早期育成、高校生になれる年齢と同時に探索者になるには、これをどこかしらで三年以上受ける必要があった。


 最低年齢の小五から俺はずっと、学校と並行して習い、今年の春高校生の入学式が始まろうとしていた。


 桜が満開のこの日に俺は探索者登録ができるのだ。


 「そのために必要なのは学生手帳。見えるぜ、俺の華々しい人生がっ!」


 「一人でなーに言ってんだ」


 「いて」


 俺を軽く蹴った女は隣の家であり、幼稚園から高校も一緒の幼馴染である。


 「アリス、起きていたのか珍しいな」


 「入学式はさすがに寝坊しないわ」


 「つまり、入学式以外は寝坊すると言う事だな!」


 「いつもみたいに起こしに来てね」


 にっこり笑顔。


 「⋯⋯ヤダ」


 回し蹴りを顔面に受け止めたところで、俺達は学校に行くために使う交通手段、電車に乗るために駅に向かう。


 南雲愛梨須(なぐもありす)は、普段は無邪気で子供っぽい雰囲気を出しているギャルだが、根は真面目()であり、それを出すと人をギャップ萌えに落とす女だ。


 男を虜にする身体であり、髪型はサイドテールで鈍色をしている。瞳は白群色だ。


 腐れ縁とも言えるのだろうか?


 「は〜早く入学式終わんないかな」


 「まだ駅にすら着いてないぞー」


 学校到着!


 「もういっそ、学生手帳を貰って、速攻帰るって言うのはどうだろうか?」


 「そう言う人がいるから、最後に学生手帳を配る制度になったんだろうな〜ウケる」


 「クッソがっ!」


 与えられた席に向かう。保護者席には父親が居るのだろう。


 母は妹の方だ。


 生徒会長、校長の話を爆睡して完璧にやり過ごし、今は自分達のクラスに向かっている。


 「頭がクラクラする」


 寝すぎたせいで首も少し痛いな。


 教室に入り、自分の席に座る。お、窓側とか最高じゃん。


 ピンクに染る桜が良く見える。風流風流。帰りてぇ。


 「うん。休みもいなくて良かった。大まかな流れと⋯⋯」


 先生の話を聞き流しながら、俺は教室をぐるりと見渡した。


 なんと、アリスと俺は同じクラスだ。まじで変わり映えが無いな。


 学生手帳が配られ、今日は解散となった。


 ようやく終わった。


 「俺の探索者ライフが今、ここから始まる」


 「先に昼飯だバカ。入学祝いで寿司だよ寿司! ほらさっさと行くよ!」


 アリスに手を引かれて、俺達は親の車に入った。


 行きに電車を使ったのは、今後のためにも慣れるためだ。


 寿司を家族ぐるみで食べる。


 「そういや、アリスも俺と一緒に探索者早期育成やってたけど、一緒にギルド行く?」


 「いーや、人間辞めたくないし、行かないよ」


 「別に辞める訳じゃないけどな。じゃあなんでやってたし」


 しかも俺と一緒で小五から今までずっとだぞ?


 「あんたがボッチで可哀想だったから、それと護身術程度に力は付けたかったから、かな? 後は教師がイケメンだった」


 「最後のが本音だな。嬉しく思った俺の心を返せ」


 「なら寄越せ」


 イケメン先生か、教えるの上手かったな。その人のお嫁さんの差し入れは美味かった。


 さて、寿司も終わって俺はギルドに⋯⋯アリスに止められる。


 「なんだよ」


 「着替えてから行け。制服だぞ」


 「良くね?」


 「ほれ行くぞー」


 これは誘拐じゃないだろうか?


 部屋に入り、適当な私服に着替える。


 「行ってきまーす」


 リビングで妹と人生ゲームを始めたアリス達にそう言い残し、バスを使って俺はギルドに向かった。


 「来ましたギルド!」


 ドローンカメラの準備はOK、スマホの準備もOK、つまりは撮影準備は完璧だ!


 ギルドで受付を通して、ダンジョンに入るのだ。


 ギルドはダンジョンと連結しており、武器防具の購入や装備、管理は全てギルドが行うのである。


 「あ、あの。探索者登録を!」


 適当な受付に並んだ。


 「育成過程完了書または講習完了書、それと身分証を提出してください」


 「はいっ!」


 学生手帳と育成過程を終えた証明書を受付嬢さんに渡した。


 それから書類が整理される。


 「ありがとうございます。こちら学生手帳です。そしてこれが、探索者である事を示すステータスカードです。これがなければ武器防具の購入やダンジョンへ入る事はできません。それと自己管理になるので、注意してください。紛失あるいは窃盗された場合はギルドにお申し付けください」


 「はい!」


 ステータスカードには自分の住所、電話番号、名前に年齢が記載されている。


 まずはギルド二階に行き、初心者が受け取れる木の剣を手に入れる。


 「二本くれませんか! スペアで良いので!」


 「規則だから一本までだ」


 三階に行き初心者が貰える革防具を手に入れる。


 「スペアが欲しいので四つください!」


 「え、四つ? 規則だから一つまでだよ。壊れたら言いな」


 全て断られた。


 防具装備、武器装備を更衣室で装備し、ギルドロビーに出る。


 ロビーで俺はスマホとカメラの設定をする。


 「どうも、今日から高校生探索者をやる、シャイニングライダーですっ! 今から初ダンジョンです」


 探索者の配信の初めてはライブが一番伸びやすい。


 特に入る前だ。俺以外にもそれらしい人はいる。


 変な名前にしたのは見た人の目に飛び込む事を狙っている。


 「今から楽しみです。強い種族になれますように!」


 初めてダンジョンに入ると、種族が与えられる。


 人それぞれバラバラの種族である。そのために人気であり伸びやすいのだ。


 この時期は新規が多い。上位の人達やクランを持つ人達もこの種族選定を見届ける。


 より良い種族を持った人を仲間に入れたいからだ。


 ステータスカードを提示して、俺はCルートからダンジョンに入る。


 刹那、世界の色が変わった。ダンジョンでは無い。


 「ここが種族選定の間。通称、初回限定の種族ガチャエリア」


 目の前に巨大な半透明の長方形が現れる。


 これに触れれば良いのだ。


 探索者人生を決める大勝負。


 「やべー、心臓のバクバクが止まらない。あー緊張する。来い来い⋯⋯いや、俺は祈らない。祈るのではなく、掴み取るのだ!」


 これは確率じゃない。運じゃない。


 「必然じゃ!」


 俺はそれに触れた。


 ガチャと呼ばれる所以はこれから始まる。


 虹色の光を放つ。


 「通称、超激レア演出キタアアアアアア!!」


 これなら将来安泰。


 「鬼人か、龍人か、はたまた吸血鬼か! とにかく人型で身体能力の高い種族!」


 さぁ、さぁ!


 ゆっくりと裏返る。


 そしてシルエットと名前が出て来る。


 「これが、俺の種族」


 そこには妖艶な女性のシルエットと共に『淫魔(サキュバス)』と書いてあった。


 「え、俺の生物学上は男なんですけど。せめてインキュバスじゃない?」


 あ、なるほど。


 ミスか〜こんなの初めて聞いたよ。


 TSなんてある訳無いよね。ないよね?


 「近づいて来んなクソ野郎!」


 ちくしょう逃げれねぇ!


 「や、止めろおおおおお!」


 俺は長方形の光に包まれた。


 光が収まると、洞窟のような空間に出る。ここがダンジョンだ。


 「はは、嘘だろ」


 サイズが合わなかったのか⋯⋯革防具がキツイ。


 「嘘でしょ」


 なんで声が可愛いの? なんで胸が大きいの?


 あ、設定していたから、ドローンカメラが全体を舐め回すように撮影する。


 コウモリのような翼に先端がハートの尻尾。


 「嫌だ。こんなのは嘘だああああああああ!」


 ◇

 “あれ? 声が変わったんだけど”

 “種族的に変わる事はあっても、ここまで変わるのは無いな”

 “声男だったよな? 目の前サキュバスなんだけど”

 “え、性別変わる事ある?”


 “まさかの初の事例?”

 “なにそれ凄い⋯⋯けどなんか、うん”

 “wktk”

 “下とかどーなってんだろ”


 “コメに気づかないかな?”

 “めっちゃ絶望しとるw”

 “拡散しよ”

 “これはおもろしくなりそうだな。登録しとこ”


 ここに世界初であり世界唯一のTS種族を授かった男が現る

お読みいただきありがとうございます!

基本は午前8時辺りを目安にしております!

今日の午後7時から8時にもう一話投稿します!


評価、ブックマークをしていただけると執筆の励みになります。

新連載、今後ともよろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
サキュバスTSでしか摂取できない栄養素が確かにあるんだ!!!
[良い点] テンション爆上げからの「近づいて来んなクソ野郎!」ww 春はこういった新規の絶望を見たい鬼畜視聴者が待ち構えてるんだろうなぁ。有給すら取ってそうw
[一言] 女吸血鬼カーミラや戦女神あってもいいかな?
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