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YAWARAMICHI  作者: ウィリアム・J・サンシロウ
青桐龍夜編
41/139

※※※※※※※※※※

『おっとおっとお"ぉ"~~~とっ!? これはとんでもないことになりましたっ!! 決勝戦、先鋒同士の戦いっ!! 勝ったのはシモン選手、シモン選手っ!! 青桐(あおぎり)選手、まさかの敗北ですっ!!』


『おいおいおいおい!? 早速番狂わせ(ジャイアントキリング)が起きちゃったよっ!? 会場騒然(がな)ってるよっ!!』


『解説の松木(まつき)さん、この状況、どう思われますか!?』


『そうだねそうだねぇ~!! 何か想定外(トラブル)でも起きたのかな? 青桐選手、急に動きが悪くなっちゃってね。その隙を突かれてグワーッて感じだねっ!!』


(青龍の呼応の制御を失敗(ミス)った? ……彼ほどの選手が博打で使うと思えないし……今まで制御出来ていたのが、出来なくなっちゃったのかな?)


『さあー大反乱の決勝戦、この試合、どのような結末を迎えるのでしょうか……おっと?』


『んんん? 彼、どうしちゃったんだい!?』


 直視したくない現実が目の前にある時、人はいったいどのような反応をするのだろうか。

 試合に敗北し畳に背を付けて仰向けになっている青桐。

 彼は今、投げ飛ばされたままの状態で、騒然とする会場の天井を視点の定まらない目で見つめている。

 罵倒よりも先に困惑の色を隠せない観客達。

 対戦相手であるシモンも、観客達と同じ反応をし、後方で控えている城南のキャプテンに視線を恐る恐る向けている。


「う、オォ……きゃ、大原(キャプテン)……」


「シモンっ!! 今は……今は目の前の試合に集中しろ……っ!!」


「ッ!! ……理解(わか)りましたタ。 フゥー……」


(青桐さんとの本当(マジ)決着(ケリ)ハ……来年に持ち越シですネ……)


 場外からシモンへとアドバイスを送る城南のキャプテン。

 アドバイスを受け取った留学生選手は、悔しそうな表情で、審判に促されやっと立ち上がり、礼をして場外へと進んで行く青桐を見つめている。

 青ざめた表情で、仲間達の目を見ることなく、消え入るような声で謝罪の言葉を発する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 決勝の舞台で敗れたキミに送る―――

 多くの人間の期待に応えられず、惨めに負けたとしても―――

 キミは柔道が楽しいか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……謝罪(さっせん)……大事な試合なのに、先鋒で、次に繋げる戦いをしないといけなかったのに……!! 俺、俺……っ!!」


「言いたいことはそれで全部か? 青桐」


「……謝罪(さっせん)した。花染(はなぞめ)先輩……」


「そうか。それはそうと今日は随分……()()()()()()


「……っ!! そ、蒼海っ!! 蒼海っ!! 蒼海っ!!」


 この世の終わりのような表情で下を向き続けている青桐。

 そんな彼の謝罪の言葉を一通り聞き終えると、蒼海のキャプテンである花染は、2階で沈黙していた応援団へ向けて、再び声援を送るように促す。

 顔を伏せ続ける青桐に歩み寄る、蒼海のレギュラーメンバー4人。

 彼らは青桐の盾になるように、敵と向かい合うように前へと進んで行くと、青桐に背を向けたまま静かに話し始める。

 

「青桐、反省(ネガ)るのは後だ。今は次のために切り替えろ」


「次って……でも、俺……っ!!」


「……青桐よぉ~……1年前に言った事、覚えてっか? 丁度今頃だったなぁ……夏川(なつかわ)ちゃんが事故った時の奴だよ」


「え……?」


「あの時俺らはこう言ったはずだぜ? ……()()()()()()()()()()()()!!」


「……っ!!」


 青桐の脳裏に過る映像。

 夏川鈴音(なつかわすずね)が事故に遭遇した次の日。

 現レギュラーメンバーが集まり、青桐に誓ったあの言葉を思い出していた。


「俺らの気持ちはよぉ……あの時から何ら変わってねぇ。だろぉオメェら!!」


「9割9分9厘、同意(それな)


「やってやるばいっ!!」


「青桐、お前は蒼海の最高戦力(エース)だ。だが、お前が倒されたからと言って、俺達蒼海が負けたわけではない。個人戦なら話は別だがな。生憎これは……()()()だ……!!」


「……!!」


「青桐、絶望(げんじつ)から逃げるなよ。今は下を向く時ではない。俺達の背中を見ていろ」


「……了解(うっす)理解(わか)りました」


「石山、風と共に頼むぞ!!」


「ふー……理解(わか)ったばいっ!!」


 蒼海高校の次鋒、石山鉄平(いしやまてっぺい)が青桐からのバトンを託される。

 肩、背中、脇腹、穴の順番に叩かれ、気合いを入れられる彼。

 決戦の舞台へ堂々と向かって行くと、100㎏を大きく超える巨体を有する選手が、試合会場内に相対する。

 それを見た審判は、すぐさま試合を始める言葉を告げていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 高校生ランク88位 慈愛の巨人 「石山鉄平(いしやまてっぺい)

       VS

 高校生ランク40位 西洋のサムライ 「シモン・ノーブル」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


開始(はじめ)ぇぇぇ!!」


「こぉ"い"!!」


「Hey Come on!!」


 小細工抜きの真っ向勝負。

 トラック同士が衝突したような衝撃が、会場全体へと広がっていく。

 互いに相手の奥襟部分を掴み、内股を仕掛けにいこうとするも、腰を曲げ重心を低くしているため、攻撃に移り切れない両者。

 先ほどまでとは一転して、互いに足を止めた探り合いの時間に移っていく。


『さぁ~始まりました2戦目!! 松木さん、この試合はどのような展開になっていくと予想されますか?』


『ん~そうだねぇ……両選手ともに山属性を持ってるからねぇ~泥仕合(ロースコア)の戦いになっていくんじゃないかな? 下手したら引き分け、良くても優勢勝ちとかになるんじゃない? 守りが得意(オハコ)な選手達なんだしさ』


『現在は試合時間30秒が経過しています。互いに牽制(ジャブ)の足技を放ってはいるのですが、どれも決め手には欠けるものばかりです。このまま時間だけが過ぎていくのでしょうか!?』


『んんん~どうだろね!? こう、痺れを切らして、強引に攻めるのも考え始める時間じゃないのかな? お!! ほらほらほらぁ"!!』


『あぁっと!! シモン選手、静かな攻防に嫌気がさしたのでしょうか!? 強引(ラフ)に石山選手を引きずり始めましたっ!!』


 足を止めていたシモンの両脚に、畳の表面を引きはがすほどの力が込められると、体全体を使って石山を引きずり始める。

 摩擦熱で皮膚が焼けてしまうようなすり足で、それについていく石山。

 攻撃を叩きこむチャンスを探っている彼に、シモンは水属性の連撃を浴びせにかかる。

 石山の巨体を包み込む泡沫を発生させるシモン。

 視界が歪んだ敵の右足の脛へと目掛けて、足払いを仕掛けにいく。


「No.32 泡包(あわづつ)ミ……!!」


 石山の重心が微かに浮いた。

 その僅かな変化を見逃さなかったシモン。

 続けざまに己の右足を後方へ高々と振り上げると、重たい水を纏い、遠心力により破壊力が増した大内刈りを繰り出していく。


「No.56 絶海っ……〆、です、ヨォ"ォ"ォ"ッ!!」


 石山の左足の内側を払いのけたシモン。

 そのまま左足を石山の右足の外側へと大きく踏み込むと、右手をラリアットのように敵の首へと押し当てて、己の右足を前方へと大きく振り上げ、そのまま振り下ろしていく。

 巨体を生かしたダイナミックな動きに、相手は成す術もないだろう。

 大外刈り―――

 必殺の一撃が、石山へと襲い掛かる。

 

「No.79……っ!!」


 攻撃を仕掛けるシモンは、間近で凝視する石山に恐れを抱く。

 荒波に抗いし男は、その巨体全身を、鋼のように強靭なものへと変貌させていく。

 山属性が使う技の中でもその性能は特に守りに特化しており、隙もそれ相応に大きいが、発動が間に合えさえすれば、その姿は難攻不落の要塞と化す技。

 No.79―――


錬鋼山(れんこうざん)っ!! う"ぉ"ぉら"ぁ"ぁ"!!」


「うぉ……オォッ!?」


(これハ……大外刈りデ、倒せそうにないですネェッ!!)


 右足は既に、石山の右足の裏の部分にかかっている。

 後は後方へと動かし、彼の右足ごと刈り取るだけのシモン。

 だがその右足は、地中に深く根を張り巡らせた大木のようにビクともしない。

 徐々に押し返されるシモン。

 雄叫びを上げる石山は、敵の弾丸のような大外刈りを、貫かれることなく弾き返していく。


「お"ぉ"ぉ"お"ぉ"ぉ"お"お"お"!!」


 雄叫びを上げる彼の脳には、日に日にやつれていく青桐の姿があった。

 教室の後方で、彼の後ろ姿をただ黙って見ていることしか出来なかった石山。

 だが今は違う。

 敗北していったチームメイトを思う彼の心は、猛烈な火勢となって熱く燃えている。

 気迫に溢れる石山の姿に、チームメイト達は湧き上がる。

 城南のヘッドコーチであるジョンソンは、静かにその姿を観察していた。

 これから訪れるかもしれない、決定的な勝機を見逃さないように。

 幾多の感情と思考が入り乱れる灼熱の戦場で、石山はただ1人、並々ならぬ決意を固めていた。

 かつての記憶を思い出しながら―――

 

(俺の実力(ウデ)が、どこまで通用するか理解(わか)らんばい……まだ()()()()とも折り合いがついとらんし……けど、それでも今はっ!!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『それによ、オメェは石山を無礼(なめ)過ぎだぞ……!! アイツは俺と同じように、高校一年生(ちゅーぼうあがり)でランク100位に入った奴だぜ? アイツの実力(ウデ)なら、直ぐにランク100位以内に戻ってこれんだよ』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(今だけは……(キミ)の力になりたかけんっ!!)








 ヤワラミチ41話

『キミに捧げた誓いの言葉』

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