REVENGE・オレイマイリ・夜空に集う者
世界中から集まりし強者―――
異国の人間達との激闘が始まろうとしても―――
君は柔道が楽しいか?
柔祭り第一試合の幕が上がった!!
5人抜きに挑む青桐の相手は、外国人選手の1人、白人のオリバー・ウィルソン。
濃紺の髪を短く刈り上げ、頂点を鋭く整えたヘアスタイルが特徴的な彼。
陽気な鼻歌を口ずさみながら指定の位置へと向かう仕草は、大型犬めいて親密い印象を与える。
対照的に、青桐は引き締まった表情を崩さず、静かに燃え上がる闘志を滲ませていた。
「開始っ!!」
「こぉ"ぉ"いっ!!」
「いくヨ~!!」
審判の合図が響くと同時に、青桐は間合いを詰めていく。
柔祭りの試合時間はわずか30秒。
通常の4分間試合に比べ、はるかに短いこの特別なルールは、この祭り独自のレギュレーションである。
勝利または引き分けで次のステージへ進むことができる青桐。
特殊な環境ゆえ、両者は守りを捨て、攻撃一辺倒の姿勢で試合に挑む。
青桐の右手とオリバーの左手が交差し、互いの柔道着の横襟を力強く掴むと、試合の緊張感が一気に高まっていく。
(このオリバーって野郎……左利きかっ!! ちっ!! クソ面倒ぇ!!)
交差する互いの利き腕が、技の発動を互いに封じ込める。
青桐は宙に浮いた左手で敵の右腕の袖を狙い、掴むと同時に右足を勢いよく天高く蹴り上げた。
その動きに呼応するかのように、大地から瀑流が月に向かって吹き上がる!!
一方、青桐の次の技を即座に察知したオリバーは、膝を曲げ、重心を左足に移して身構える。
受け止める準備を整えつつ、瞬時に反撃への算段を巡らせる彼の瞳には、野外ライトめいた眩い光が差し混んでいる。
(これ、No.65滝落しだヨネッ!! この前の練習で受け止めたヨ……!!)
「体ヲ……捻っテェッ!?」
善く泳ぐものは溺るということわざがある。
練習で一度体験した技を前にするオリバーは、得意げに腰を右へと切り、守りの態勢に入る。
滝落しの動作中、敵の重心の変化を瞬時に察知した青桐は、繰り出しかけた技を素早く中断し、重心が乗ったオリバーの左足を狙い、小外刈りを放つ。
青桐の足が敵の左足を外側から払い取った瞬間、オリバーの体勢は崩れ、支えを失ったよう突っ張り棒めいて、背中から畳へと倒れ込んでいった!!
「やぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「一本ぉぉぉん!!」
「グゲェ~……やられちゃったヨ~……」
「HAHAHA~!! 相手が上手かったナ!! 交代ダゼ~オリバー」
1番手のオリバーに代わり、試合会場に現れたのはドレッドヘアが特徴的な黒人留学生、ガブリエル・シルヴァ。
白い歯を覗かせながら不敵な笑みを浮かべるが、その射るような眼差しには隙のない緊張感が漂う。
審判が開始の合図を告げた瞬間、2試合目の幕が上がった!!
「開始っ!!」
「こい……!!」
「OK~戦闘るゼッ!!」
得物を狩るチーターめいたしなやかな筋肉を躍動させ、両脚に雷を纏うガブリエル。
その動きは目にも留まらぬほど速く、会場内を縦横無尽に残像を作りながら駆け巡る。
俊敏さで青桐を翻弄し、瞬時に死角へと潜り込むと、勢いよく距離を詰めて道着へと手を伸ばした。
「もらっタ……」
「……甘ぇぞ鈍足!!」
ガブリエルが右手を差し出した瞬間、その右袖を素早く左手で掴み取った青桐。
敵の突進力を巧みに利用し、合気道めいてタイミングよく体を180度左回転させると、一本背負いを鮮やかに繰り出した。
力をほとんど使わず背中に担ぎ上げた青桐は、そのまま豪快にガブリエルを畳へと投げ飛ばす!!
「やぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「一本ぉぉぉん!!」
「Oh~……こりゃ失敗っちまったナ」
「Thank you for your hard work. Leave it to me(乙です。後はお任せを)」
敵チームの3番手、アーロン・アレンゼが入場する。
ボルドー色の髪を後ろで団子状にまとめた、がっしりとした体格の黒人留学生。
青桐は彼を見つめながら、試合時間の短さに救われつつも、3戦目に入り疲労が体を蝕んできているのを自覚していた。
首元を流れる汗を道着の襟で拭いつつ呼吸を整えると、静かに目線をアーロンに向け直す。
(……次の野郎は体格が良い野郎だな……木場先輩と同等か? 道着を掴ませるのは危険そうだな)
「開始っ!!」
審判の掛け声とともに始まった3試合目。
筋肉質な両腕で道着を掴もうとするアーロンに対し、青桐は腕の軌道をわずかにずらしていなし続ける。
しかし、疲労が見え始めている青桐に対し、アーロンは終始万全の状態。
青桐は力任せの攻めに押され、場内ギリギリの赤畳まで追い詰められてしまう。
場外に出れば処分が与えられる瀬戸際、青桐は意を決してアーロンの道着を握り直すと、右足を踏み出して敵の左足を制しつつ、支釣込足を繰り出した。
惜しくも決定的な投げには至らなかったが、巧みに体を入れ替え、アーロンを場外間際へと追い込むことに成功する!!
「……!! That's a good way(上手いやり方ですね)」
「しゃおらぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
青桐は場外際へと圧をかけながら、アーロンとの激しい押し合いに挑む。
全身の筋肉を酷使して互いを後方へ押しやる中、青桐は一瞬だけ力を抜いた。
その瞬間、壁が崩れたようにアーロンが前のめりに突っ込む。
それに合わせて、青桐は左手で右袖を引きつつ、体を左回転させ、右ひじを敵の右脇に差し込む。
力を効率よく利用した背負い投げが決まり、大地を揺るがすようにアーロンが背中を叩きつけられた。
同時に、審判の手が夜空に高々と上がっていく!!
「一本ぉぉぉん!!」
「……OK(理解りました)」
「アーロンさん、乙でしタ。青桐さん、次はワタシでス。よろしく熱望ッ!!」
外国人選手の4人目として現れたのは、シャルトルーズイエローの髪を右に流し、サイドを刈り上げた白人男性、シモン・ノーブル。
洗練された紳士的な表情で青桐と挨拶を交わすが、審判の合図とともに一変。
全身から放たれる狩人めいた殺気をまとい、鋭く青桐に掴みかかる。
迎え撃つように道着を掴んだ青桐だが、その瞬間、彼の脳裏は暗く揺れる黒いモヤに包まれていった。
(この野郎……さっきまでの3人とは格が違ぇ。高校生ランク何位だ? ……これは本気でやんねぇとなぁ……!!)
青桐の周囲に白雲が漂い始めた。
闇夜に浮かぶ白き霞の中、刃めいた右足が閃き、シモンの右足を後方から刈り取ろうとする。
しかし、シモンの右足は、地中深くに根を張った大木めいており微動だにしない。
よく見ると、彼の右足は硬質化しており、畳を突き破って地面に突き刺さっていた。
それは船のアンカーめいて、シモンを揺るぎない存在へと変えていたのだった!!
「No.8楔足!! 簡単には一本負けりませんヨ……!!」
「ちっ……!! 天狗るんじゃねぇぞ!!」
短期決戦を見据え、序盤からスタミナを度外視して技を繰り出す青桐。
しかし、相手の巧みな体さばき、とりわけ腰を切る動作によって技の起点を封じられ、攻めきれない展開が続く。
試合時間が30秒を過ぎた時点で、両者ポイントは無しのまま、審判が試合終了の合図を送る。
今回の試合の形式では、青桐が次戦進出となるが、彼の表情は冴えない。
5人目の対戦相手がまだ姿を見せていない事から、一旦場外へ退場した彼。
未だ現れない5人目を待ちながら、駆け寄る花染と木場からタオルと飲料水を受け取り、汗が冷えないようにケアを行う。
「乙っと。5人目の野郎がまだ来てねぇのかぁ?」
「風の知らせによればそのようだな。木場、お前は知らないのか?」
「俺が知るかよ……はぁ~何やってんだろな対戦相手さんは? んでぇ~青桐、あの4人どうだった?」
「……そっすね。アイツら本気でやってないっぽいんで、正確には理解んないんすけど……あのシモンって野郎……アイツは出来る奴っすね。多分高校生ランク100位以内の実力っす」
「ほぉ~……そいつはそいつは……大原の野郎が学校訪問するわけだわ」
「賛同。……木場ならあの逆風を超えられるか?」
「どうだろなぁ? やってみねぇと理解んねぇわ……ん? おい青桐、5人目来たぞ!! けどありゃ……」
「あぁ? あの野郎……不死原!?」
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