表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOLID STATE ANGEL ver.1.1  作者: 熊八


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/97

第62話 セシィの秘めた心

「じゃあ、今すぐあのブリキ人形と別れてくれよ!!」

 そう叫んだセシィは、すぐにハッとした顔になった。それも一瞬のことで、しまったという表情に変わる。

 俺にはその気持ちが良く分かる。

 おそらくは、ずっと言えなかった言葉であり、ずっと言うつもりがなかった言葉であるのだろう。

 ずっと心の奥底にしまい込んでいた思いが、我慢(がまん)の限界を超えて(こぼ)れ落ちてしまったのだと理解できる。

 なぜなら、俺も……。

 俺は目を(つむ)り、ゆっくりと今のセシィの言葉を反芻(はんすう)し、理解する。そして同時に、あの決断を下したときのことを思い出していた。

 やはり、あの時の俺の判断は、大間違いだったんだな……。

 そう結論を下し、ゆっくりと目を開ける。

 俺が目を(つむ)って黙ってしまったのを、セシィは拒絶と受け取ったのだろう。セシィの頬を一筋の涙が(こぼ)れ落ちる。

 そして、もはや止められなくなったのか、大粒の(しずく)が次から次へと(あふ)れ出している。

 もはや隠せないと(さと)ったのだろう。

 セシィはその悲痛な心の内を、その心そのままの表情で語り続けた。

「そりゃあさ。あたいに女としての魅力(みりょく)がないことぐらい知っているさ。だから、いつかジェフが誰か(ほか)の女と付き合いだしてもしょうがないと覚悟してた」

 そこでいったん言葉を切ったセシィは、涙声になりながらもしっかりとした口調で叫んだ。

「でもさ!!」

 セシィはその激情のままに、後ろの壁を左拳でドンッと殴りつける。

「その相手が、よりにもよってブリキ人形だなんて、あんまりじゃないか!!」

 そのまま両手を振り下ろし、絶叫するセシィ。

「あたいはお人形に負けたって、そう納得(なっとく)しろってか!!」

 そして、振り下ろした両腕で固く握り拳を作り、震える体と声で続く言葉を振り絞って叫ぶセシィ。

「こんの、大馬鹿(おおばか)野郎(やろう)!!」

 セシィはずっと秘めていたのであろう、その心の内を全部ぶちまけると(ひざ)から崩れ落ち、両手を床について泣き叫びだした。

 いつも明朗(めいろう)快活(かいかつ)な彼女をそこまで追い詰めてしまったのは、(ほか)ならぬ俺自身だ。

 そう思うと、俺の心臓もまるで(えぐ)られたかのような痛みを発しだす。ズキン、ズキンと鈍く痛みを発し続ける胸を思わず手のひらで強く押さえ、俺は目を閉じる。

 セシィにだけ言わせてしまったのでは、絶対にダメだ。

 そう覚悟を決め、俺もずっと言えなかった言葉を、セシィに投げかけ始める。

「お前に魅力(みりょく)がない? それはいったい、何の冗談だ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ