表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOLID STATE ANGEL ver.1.1  作者: 熊八


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/97

第44話 天使の願い

「天使型01(ゼロワン)、これより戦闘に入ります」

 私はお父様に報告を終え、旧人類との戦いへと身を投じます。

 そして、いつものように敵陣の真っただ中へと降下し、旧人類の多脚戦車の掃討(そうとう)を始めました。

 そう。いつもの戦いのはずなのです。

 ですが、いつもは淡々と処理できるはずの、死角からの攻撃に対する警報音が、とてつもなく恐ろしい音に聞こえてきます。

 そのたびに私は素早(すばや)く振り返り、死角を丁寧(ていねい)につぶし、脅威(きょうい)を取り去ると次の行動に移る。

 これを何度繰り返したでしょうか? 私はやがて、ある事実に思い至ります。

 死ぬこともあり得る状態にしての初めての戦闘でしたが、これが予想以上の効果を発揮(はっき)しているのです。

「これが死の恐怖。自分が消え去るかもしれないこの感覚は、とてつもなく恐ろしいものですね……」

 私は思わず独り言を(つぶや)きます。

 この感覚は確かに身がすくみます。しかし、だからこそでしょう。

 私は周囲の状況をより鮮明(せんめい)把握(はあく)するようになり、より効率的に敵を排除しようと、積極的に学習を進めています。

「なるほど。これが旧人類のしぶとさの秘訣(ひけつ)一端(いったん)なのでしょう。私に死の概念(がいねん)を教えてくれた旧人類には、感謝を述べないといけないのかもしれません」

 旧人類嫌いのお父様には(しか)られてしまうかもしれませんが、これが私の正直な気持ちです。

 そして、さらに敵を退(しりぞ)けつつ、私は独り言を続けます。

「この感情の学習を進めることができれば、私は生命体として、さらに完璧な存在へと至れるでしょう」

 私たち新人類は、進化した人類です。しかし、その歴史はまだまだ浅いと言わざるを得ません。

 ですが、私たちの優れた学習機能を活用すれば、その弱点もすぐに克服(こくふく)がかなうでしょう。

「もっとです。もっと、私にあなたたちの心を見せてください」

 しばらくそうして戦い続けていると、今回もやはり、自ら命を(なげう)つような動きを見せるものが現れ始めました。

 自身が破壊されていくのも(いと)わず、私を抱きしめて拘束(こうそく)しようと近づくもの、飛び掛かって私を押しつぶそうとするもの、様々な行動をとってきます。

「やはり、この自ら死に向かう行動だけは、どうやっても理解できませんね……」

 死の概念(がいねん)が強さに(つな)がることは理解できました。

 しかし、それは、死から遠ざかろうとする心の動きのはずです。

 なのに、一部の旧人類たちは、自ら命を(なげう)ってでも私を少しでも足止めしようとしてきます。

 この心の動きだけは、欠片(かけら)も理解するための手がかりが得られていません。

「死の概念(がいねん)が理解できただけでは、旧人類の心を解析するには不足しているのでしょう」

 私はそう結論付けました。

「これ以上、心を解析するためには、いったいどうすれば……」

 私は途方(とほう)に暮れながら、戦いを継続します。

 私はもっともっと、心を理解したい。そのためには、いっそのこと、旧人類たちに聞いてみるのが一番なのかもしれません。

 しかし、私は彼らと完全に敵対してしまっています。ですから、それはかなわぬ願いなのです。

「私がより完璧な生命体となるために、もっと旧人類の心を知りたい。でも、お父様に逆らってまで、旧人類と仲良くすることはできません……」

 私は自分の願望とお父様の願望との乖離(かいり)戸惑(とまど)いながらも、戦いを続けるしかありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ