水族館
「どこまで俺が馬鹿だと思ってんですか?これが冬ならお汁粉でも買ってきましたけどね、流石にお汁粉ガフ飲みしてる如月玲那の姿が思いつかないのでお茶にしましたよ、テストは合格ですか?玲那様?」
「不合格ね、最後にそう言うこと言わなければ合格だったけれどね」
「そうですか、はぁ」
翔吾はそう、首を振る。なんで俺にばっかこんなに当たりが強いんだろうな、一種の愛情表現か?わけないな、
そのまま、無音状態が続き、波の音と時より上空から揚げ物を狙う鳶の鳴き声が聞こえる。
「で、この後の予定はあるのかな?翔吾」
まったりした空気の中、飽きてきた玲那はそう言う、
「あー、そのお金持ってない、」
「また奢れと、そう言うわけね、」
翔吾のわかりやすい反応にまた棘が刺さる。
「別に高いもの買って欲しい訳じゃないし、自分で買うからね」
そう、忘れていたけれど、如月玲那は芸能人、噂では年収が億を超えるとも噂されている、実態は本人談ではそれ以上の雰囲気があるが、本人は公言しない、するわけない。
翔吾の顔色はどんどん悪くなり目は左右に泳ぐ、とある看板が見えた、
「で、ですよね、ならそこの水族館行きません?」
「水族館?お金持ってるの?」
「はい、さすがにぬいぐるみは買えませんが」
一瞬玲那は目を見開くが翔吾にバレないうちに元に戻る、
「そう、珍しいわね、何か裏の仕事でもしてたの?」
茶化す余裕まであるようだ。
「いえいえ、正当な仕事ですよ、俺は捕まるような事はしませんって絶対に!」
「そう、そこまで言うならばいきましょうか、」
玲那は立ち上がり、それに続いて翔吾も立ち上がり急いでビニールシートを畳む。
2人は並んで、手を繋ぎ、水族館に向かい歩いていく、
「長いわねこの道、」
短距離の移動でも常に人避けのためにタクシーを使う玲那にとってはこの数百メートルも遠く感じるようだ、
「いいじゃないですか、ならこの機会にもっとお互いのことを知りましょうよ」
「そう、まずは翔吾からね、はい、どうぞ初めて、」
今日の翔吾はいつもの翔吾ではない、こんな事で諦めない、
「はい、そうですよね、まずは自分の名前からですねOOO県出身ooo市ooo町ooo家族は姉に親、祖父母かいます・・・」
いつもの玲那であれば既にゴミを見るような目で切り捨てるがまた、翔吾を試している。
「続けて、」
翔吾が急に喋らなくなったのを不審に思ったのか玲那は続けろと催促する。
「は、はぁえっと、俺はあの芸能人如月玲那の彼女です、これから水族館に行こうとしてます、えっとこのぐらいですかね」
「続けて、」
「え〜と、その、あ、如月の全部、スリー・・が好きです次は如月の番だけど」
翔吾はつい、言いかけてしまった。スリーサイズと言っていたらこの海のもぐずとなっていただろう、玲那は?を浮かべているが気にしないで前を向く、
「それは無理そうね、ほらもう着いたわ」
目の前には水族館の券売機が見えてきて、若いカップルが列を作っている。
「で、お金どうする気?まさか無理やり入るの?」
「大丈夫。大丈夫、」
玲那の手を引きその列には並ばず中に入る。
「どう言う事?」
まだ理解していないのか顔に?が浮かぶ、
翔吾は珍しく調べてきた、今日はこの水族館カップル無料デーという事に、これを知っていたから翔吾は余裕で不敵な笑みを崩さなかった、一方。玲那はこう言った施設については疎い。いつもマネージャーが全部取ってくれて、一切やった経験がない。
「今日はカップルなら無料デーなの手繋いで入れば無料どう?知らなかったでしょ珍しく仕返し成功」
ニヒヒ、そう嫌な笑みを浮かべる。
してやったりの翔吾
まんまと引っかかった玲那
「そう、珍しくその頭が働いたみたいね、珍しく、」
「いつも働いてますけど?」
「そんな事いいから早く行きましょ」
翔吾の手を取り歩いていく
「いいんですか後ろに記者が居るのに」
「痛い目見るのは君だからね、私は別に自由だし、ネットは怖いよ〜」
珍しく声が弾んでいる、余程デートを楽しみにしていたようだ。
「ははは、怖い」
一方の翔吾の顔は引き攣っている、それはいつも見せない玲那の顔にか記者にか誰も知る由はない。
2人は地下に降りていく長〜い長〜いエスカレーターを降る。まるで直角に落ちるような幻覚を覚える程にゆっくりと降り、少しずつ照明が弱くなる。
「こういう時、男性がエスコートしてくれれものだと思うけど?」
そんな玲那の無邪気な声が翔吾の耳にスロー再生で若干脚色され入ってくる。
それを聞いた翔吾は玲那の腰に手を回すが
「やめて、」
「は、はい」
玲那の一言により完全に撃沈する。
「映画の見過ぎね、普通、アメリカでもデートでいきなりこんな事はしないわよ、まずは背中ね。やってみて」
先程調教されたせいか手が上がらない、
「はぁ、こうすんのよ」
オドオドしている翔吾を諦めた玲那は翔吾の手を取り自分の背中に回す。
「じゃ、離して、降りるから」
エスカレーターの終わりが見え、玲那は翔吾の手を握り、先に歩いていく。
薄暗いて少し寒い、潮の香りを漂う通路を手を繋いだ2人が歩いていく、その手はガッチリと掴まれ、離す気配がない。
壁にはここから先クラゲエリアと書いてある。
話をしている雰囲気はないがそれでも2人の顔は楽しそうだ、
「カツオノエボシだって、」
翔吾は水槽にある説明文を見る、
鰹の烏帽子
クダクラゲ目カツオノエボシ科
刺されると強烈に痛むことから別名電気クラゲと呼ばれる程の猛毒を持つ、人が刺されると呼吸困難などのを引き起こし、2度目に刺された場合アナフィラキシーショックで最悪、死に至る。
浮袋の最大サイズは10cm前後だが毒針を持つ触手は最大50mに達する
分布は太平洋、大西洋、インド洋に分布し日本では太平洋沿岸に分布する。
自力移動はできず浮袋を利用して風をつけて移動する。
その下にペン字で「この藍色に惚れる人続出!お触り禁止」と書かれている。
玲那と翔吾は丸い小さい水槽を2人で顔を寄せ合い見る、
「可愛い色してるのに危険なんだね、触ってみたいけど触れない、」
「ん〜見た目によらず怖いなこう言うのって」
2人はそのままクラゲが漂うのをじっと眺める。
その隣の水槽に目を移すと、手前の水槽よりもかなり小さい水槽が3つ並んでる
「小さい、見て、これ」
「ん、うわー、ちゃちい、これクラゲか?こんなのが」
「イルカンジクラゲだってさ世界最小のクラゲだってさ」
翔吾は壁に設置されている説明文を読む、
「こんな小さいのに触手が50cmもあるってさ」
翔吾の肩に少し肩を乗せてそう呟く、
しかしその下の説明文に目をやるとすぐに黙る。
「行きましょう、」
「は。はぁ?」
玲那は翔吾の手を取りすぐに離れる、
そこに書いてあったのは
初期症状はほとんどなく自分で刺された事に気づかないほどしかし数十分すると急激に背中、胸の激痛急激な血圧上昇などの症状が現れる、最悪死に至る、
男性では持続的なピーが引き起こされる。
クラゲエリアから出た2人は沿岸回遊魚のエリアに出てくる。
「イワシだって、うまグブッ」
翔吾の口元に持ってきたバックがぶつかる。
「痛い、何すんだよ、」
お前だって美味しいって言ってる食べんだろよ、なのになんで俺ばっかり、
「言っちゃダメ、許さない」
「はい、そうですか」
玲那は下の説明文に目を移す、
「チッ、せっかく考えないようにしていのに」
そこには、
マイワシ 日本全国の沿岸部に生息。
鱗は取れやすく身は弱いだから鰯と名付けられた。
最大サイズは20センチ前後
寿命は4年前後稀に8年を超える
古くは庶民の魚とされてはいたがブランドによっては高値で取引される。
スーパーなどではまだ安価で売られている。
時期になると刺身などが絶品、揚げるも良し煮るも良し。いろんな料理に合う、
シラスなどもいわしの稚魚が使用される場合がある。能登半島では魚醤の原料になる。
飼育員も絶賛とペンで書かれている。
良いのか、食べて、まぁ、美味いから良いけどさ、言いたい事はわかる、コレいくらだろうって思うし、今も思ってる。
漁師が水族館の魚見てアイツは脂が乗ってるとか乗ってないとかそんなもんか?。
なんの話だっけ?
ピーとはなんだろう?知りたくない
なんか方向性が変わったような?