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ブルーメイ  作者: 雄太
3/6

 


 カポーん、そんな幻聴が耳の奥に響く。


 白い肌

 丸い球体

 健康な色の細い手足

 シャワーを浴び黒光りする髪

 そして、筋肉質で引き締まったお尻

 鏡に映る、自分の姿


 腰まで届くほどの髪を丁寧に両手で髪を梳く。


 髪をまとめ、ゆっくりと湯船に浸かると並々と張られたお湯が音を立てて、流れ出す。


「・・・ばか」


 湯船に潜りながらそう呟く。



 湯船から上がり、暗い室内の電気をつけると、ソファーとテレビが一つ、テーブルにはメイク道具がどっさり置かれている。



 テレビの右側の棚には自分の映る写真集が置かれている。反対側にある棚は全てリップと口紅、ネイル、が所狭しと置かれているがカラー順に綺麗に整頓されている。


 その脇には3人の姿が写る写真が置かれている。


 黄色のワンピースを着た女の子が2人の男女の間に立ちポーズを取る。


 玲那はその写真を見て、何か思い出したのか写真立てを伏せる。


 そのままキッチンに向かいカップ麺を取り出しお湯を沸かす、料理本が3冊、まな板の上に放置されている、シンクは綺麗にしているのか綺麗な状態を維持されている。


 その間スタイリッシュなスピーカーからは今風の音楽が流れてるが、リモコンを取り出し、曲を変える。


「また、1人、」


 ソファーに横になりスマホをいじり出す。


 目にも止まらぬ速さでスクロールされていき、すぐに携帯をテーブルに投げ捨て、キッチンに向かう、


 ブツブツ、お湯が沸騰し、お湯を流し込む。


 タイマーをかけ、写真集を一冊、棚から取り出し、またソファーにうつ伏せで倒れ込みページを捲る、そして自分が写っているページを見る。何回も見ているのか角は丸くなり皺が少し入っている。


「・・私、何がしたいんだろ・・・」


 また、無音が続き、機械質なタイマーが無音を切り裂くように鳴り出す。


「もう、3分か」


 玲那はゆっくりと立ち上がりキッチンに向かう、


 食器棚から箸を取り出し、シンクの上で立ち食いする。


 その時電話が震える。


 画面には『翔吾』と出ている。


 それを一目見て通話ボタンを押し、すぐスピーカーにする。


「翔吾?」



 ●


 荷物が散乱しているが足の踏み場はある程度に汚れている部屋、


 テーブルの上には勉強道具がバラバラに置かれ、今にも落ちそうな気配を持つ。


 ベットの上の棚には写真が3枚、写真立てに入れられ飾られている、どれもが玲那とのツーショット写真であった。


 海、玲那は水着は着ているがTシャツで隠されていて僅かに透けてピンク色が見える。


 海面は夕陽に照らされオレンジ色に染まる、顔は逆光で不鮮明だが楽しそうなのは間違いない、


 翔吾はお触りをしようとしたのか砂に埋められ人魚風に固められている。


 その傍でしゃがむ玲那楽しそうに翔吾の体に何か書いている。


 その隣はどっかのショッピングセンターで撮ったと思われる一枚、後ろには10mはあるかという大きい大木にイルミネーションが所狭しと巻かれている。そして雪が降る。その下にはサンタが手を振りトナカイが餌を食べる。



 写真には映っていないがその下では手を握っている。


 1番右端のは、修学旅行での一枚なのか制服で並ぶ玲那との翔吾、翔吾の足はなぜか踏まれている。水族館で撮ったのか後ろにはジンベイザメが優雅に泳ぐ、


 写真の右側に玲那

 左側に翔吾と丸い字で書かれている。


 風呂上がりなのか髪は濡れ、身体には水滴が滴り落ちる。


 そこまで筋肉もないから逆に惨め感が否めない。


 ベットに倒れ込みすぐに携帯を開き、電話をかける。


 すぐに通話が始まり、翔吾が喋る前に声が聞こえる。


『翔吾?、何が用?』


 警戒心むき出しの。落ち着き払った声が聞こえる。


「第一声から警戒心たっぷりだな、もっと違うのがあるだろう、こんばんわとかさ・・ぁ、愛してるとか」


 最後の愛してる、全く声が出ていない。


『恥ずかしいなら言わなければいいのに』


「お〜お、芸能人如月玲那は愛してるも言えないのか?」


 そうか、そうか、如月玲那は愛してるとは言えないのか、そうなのか、女優になれないな。


『チッ!お金払って、出演料、200万払える?払ってくれたら言ってあげるわ、録音もして良いわよ、そうだこれでもまだ安いから普通なら15秒のCMで500万はいるからね私の場合』


 はぁ?なんだって、金?


「俺らの仲だろ、まけてくれ、千円なら払えるからよ、頼む!」


 携帯越しに頭をされるフリをする。がそれはもうバレれている。玲那の脅威的な感の前にはどんな嘘も通用しない。


『いや、あっ、そうだこの電話にはお金がかかるから、1分500円ね、今。4分経ったから、二千円、後で払ってもらうから』


「なんか違う方向に行ってねぇか、お前。もしかして、そういうこともしているの?」


『・・してたら、どうする?』


 激甘な声と想像の吐息が翔吾の耳を刺激する、


『買う?買わない?』

「買います!」

『売らない、』

「なんで〜」


 携帯の向こうからガンっと何が落ちる音が響く。


「さすがは芸能人如月玲奈ですね、余裕たっぷり、さすがドラマなんかでピーなピーなシーンもやってるだけありますね」


『どんな気持ち悪い想像をしていたのしか知らないけれど事務所NGよ』


「まだ未使用?」

『死ね』

「すみません」

『用がないなら斬るけど』

「用はあります、次の土曜、で、で、デートしませんか?」

『良いわよ』


 えっ?なんだって。


 ●


 青い空 白い雲 空から揚げ物を狙う鳶


 まだ冷たい波が海岸線をなぞるように砂を持っていく。


 時期はまだ春、サーファーが沖に数十人浮いている。


 スカーフで顔を覆い、長袖、長ズボン、日焼け止め、それにサンバイザーの完全防備の如月玲那は手持ち無沙汰に立ちすくむ。


「遅い、何分待たせる気」


 携帯を取り出し、時間を確認する、


「10時に待ち合わせなのにねあいつもう30分、日焼けしたくないんだけど、」


「ねぇ、ねぇ、名前は?このあと時間ある?良いところ知ってんだけど、遊びに行かない?」


 そうナンパ男は捲し立てるが、ちっぽけな野望は脆くも崩れ去る。


「死ね、」

「そ、そう、ですか」


 ナンパを一蹴し、その場から少し離れる。


 手元に持つペットボトルの中身は半分を切り、かなり待たされている。

 イライラが顔にまで出てこようとしている時、その目に1人の男を捉える。


 その男は走って走って転ぶ、起き上がり、また走る、そして玲那の前に着くといきなり砂浜に土下座する。


 その土下座した男の頭に砂で汚れた靴を擦り付ける。


「気分は?」

「最高です!」


 踏まえた男は最高の気分だと言う。


「良いご身分ね翔吾、私を待たせておいて何もなしなの?まぁ、翔吾の事だからそこまで頭が回らなかったんだでしょうけど手土産も無しとは言わないわよね」


 そう、玲那は捲し立てる、真っ当なことを真っ当に言っているため翔吾のそこまでの反論はできない。


「そ、その手土産買う時間あるなら早く来いとか言いませんか?」

「言うに決まってるでしょ!もっと頭下げなさいよ、」


 玲那の足に力が入り翔吾の顔は砂浜寸前まで下がる。


「こ、これ以上はグブッ」


 そのまま翔吾の頭は砂と足に挟まれた。

 そして玲那は無言でそのまま押し続ける。


「面白くないわね、これ、この間ね、ドラマの撮影でこんなシーンがあってね、一回面白そうだからやって見たかったのよ、だけどこれのどこが面白いのかな?、どう翔吾、踏まれてる身としては、何かある?」


「ぞう言うならやめでぐらさいよ」


 翔吾の唇には砂がたっぷりと付き、口を開くごとに砂が口に入る。


「ん、何か聞こえない?姿が見えないわね声は聞こえるのに、不思議ね、」


 玲那は翔吾の姿が見えないのか左右に首を回す、そして翔吾の頭を踏みつけている足に力をかける。


「痛い、です」


 玲那はその声に反応し、足元を見ると目を見開く、


「あら、そこに居たの?何してるの?それ、楽しいの?そんな事が」


「さすがは大女優、如月玲那ですね、どんな演技も完璧ですね、」


 翔吾は口に入って砂を吐き捨てて、そう吐き捨てる。


「もっと褒めて良いわよ」


 誰が褒めるかこんなの


「今、誰が褒めるかなんて思った?」


 マジかよ、エスパーじゃん。


「今、エスパーじゃんって思った?そしてあなたはこう思う、怖いって」


「怖〜い、」


 怖いを通り越して恐怖だな、芸能人ってすごい、


 翔吾はやっと起き上がり持ってきた、リュックからビニールシートを取り出し砂浜に広げて腰掛ける、


「座ります?」


「用意がいいわね、あと紅茶とお茶菓子が欲しいわね、ある?」


「あると思いますか?そんな上手く、あっ、潰れた煎餅なら入ってますよ入ります?」


 翔吾はリュックから煎餅を取り出そうとするがその手をがっちりと引き留められる。


「食べると思う」


 翔吾は玲那の顔を見れない、見てしまったら石にされる、


 その証拠に、翔吾は一切首を動かしていない、ゆっくりと手を煎餅から離し海を眺める、


「あはは、あははは、な、何にもありませんでしたね、家に置いてきたみたいですね、あはは、あはは」


「飲み物が欲しいわね。ほら、私なら待たされたでしょ。それで喉が渇いたのよね。」


「行ってきます!」


 翔吾は急いで自販機まで走っていく、






「えっとどっちが良いかな」


 翔吾は右のおでん缶とい〜いお茶の二つで迷っている、そして時期ハズレのお汁粉は幾ら翔吾といえど無視した。


 翔吾の左肩では悪魔が、囁く、


「よーよー、これしか残って無かったって言えばバレないぜ、やったれやったれ、このぐらい怒らないってあの大女優、如月玲那は、たまには痛い目合わせてやらないとよ、このままだど自惚れるぞ、止めるなら今だと思わないか?」


 右肩では天使がほっぺをつねる。


「ダメだって、さっき見た?手にペットボトル持っていたでしょ、それなら嘘ついてもバレるよ、もしかしたらここの自販機で買ってたかもよ、そんな博打する?ここは堅実にい〜いお茶の方が良いよって、そうすれば、好感度UP、そうすればピーな、ピーも出来るようになるかもよ、やりたいんでしょ芸能人、如月玲那と、あんな事やこんな事やりたいならい〜いお茶だよ、それ一択、」


 天使は見た目天使だがその中身は悪魔みたいなことを囁いている。


 ピーな、ピー、やりたい、


 空想の悪魔を潰してどっかに放り投げる、

 そしてい〜いお茶のボタンを押しすぐに玲那の元に持っていく。




 玲那は翔吾が持ってきたい〜いお茶を見て目を見開く、玲那は先ほど自販機でお茶を買ってきた時見ていた、時期ハズレのお汁粉とおでん缶にだから試してみた、翔吾の常識を。


「珍しいてっきり私はお汁粉か、おでん缶。買ってくると思った、」


「どこまで俺が馬鹿だと思ってんですか?これが冬ならお汁粉でも買ってきましたけどね、流石にお汁粉ガフ飲みしてる如月玲那の姿が思いつかないのでお茶にしましたよ、テストは合格ですか?玲那様?」


「不合格ね、最後にそう言うこと言わなければ合格だったけれどね」


「そうですか、はぁ、」


 翔吾はそう首を振る。


天使とは悪魔

悪魔とは天使


お茶と紅茶は同じ


不思議だ。

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