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ブルーメイ  作者: 雄太
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ブルーメイ

 

 太陽が真上を向く頃、


 生徒にとっては歓喜の音色が鳴る。


 昼を知らせる、12回の甲高い微笑みが幻想に光る。


 鳴った瞬間、教室中が慌ただしく動き出す。


 女子3人組は弁当を広げ、携帯で会話する。


 スポ男5人は誰が1番に購買に着けるか毎日の如く争っている。


 2プラス2の男女キャキャウフフグループは拝借した鍵を持ち屋上に向かう。


 その他のモブは1人自分の気に入った誰もいない場所に歩く。


 1人は校舎裏へ、そうするとたまに告白現場に遭遇するそうだ。


 ある1人は弁当を持ち階段裏へ歩く日陰で涼しく誰も来ない、来るのはおこぼれを狙う猫のみ、いつしかキャットフードも一緒に持ち歩く。


 また、ある1人は校外に出て裏の河川敷で昼寝をしに行く。


 隣同士に座るカップル2人は険悪な雰囲気を広げてるいるがカップルにはよくある現象だった。


「なぁ、如月、飯行こうぜ、」


 隣に座る好青年が如月と呼ばれた女子の肩を叩く。


「?、何で?」


「昼だろ、飯食わないと、もしかして、食べると太る派?だったりするの?見た目に反して?そうか、そうか、そうだったのか」


 如月玲那、見た目にしたらスタイル抜群でモデルを思わせる。実際ファション紙の取材を受けることもある立派な芸能人であった。その収入は17にして1000万を超えるともクラスでは噂されている。あくまで噂であるが。


 かなりの運動神経もありテストではトップ10をキープ中、簡単に言えば容姿端麗、成績優秀な彼女だが、ある欠点がある。


「ギャァァ!足が!」


 何があったか、聞かない方が良いほどに好青年が大袈裟に悲鳴を上げる。


「うぅ〜俺の、俺の足が、おい、どうしてくれるんだ俺のサッカーでワールドカップ出る夢が今崩れたよ!」


「翔吾、サッカーなんてやってたの?初耳よ、」


「そうだよ俺は世界を目指してたんだよその夢が今崩れ去った!」


「そう、よかったわね、サッカーしてなくて、」


 如月は床でグルグル回っている翔吾をまるでGの如く、視線から外す。


 しかしグルグル回っている翔吾の瞳はピンクの布に視線が向いている。


「ピンク、か芸能人の如月玲那はピンクか」


 翔吾がそう玲那だけに聞こえるように呟くそのその瞬間、玲那の顔が一気にピンク、いや赤く染まる、そして先ほど踏みつけた患部にもう一撃強烈な刺激を入れる。


「ギャぁぁ!!」


 翔吾は床にめり込むかのように痛みに耐える。


「あんたなんか!もう知らない!」


 勢いに任せドアを思っ切り開け放ち玲那は教室から出ていく。


 残ったのは、静寂、ガラス片、倒れたドア、いつも通りと言うクラスの雰囲気、そして翔吾の声にならない痛みだけ。


 それでも翔吾は立ち上がり、足を引き摺りながらゆっくりと教室を後にすると、教室内は何事もなかったのように喋り声が戻る。


 ●


 玲那は絶対に翔吾が来ないであろう、場所つまり女子トイレにいた。


「最低、なんなのあいつ」


 玲那の細い拳が壁にヒビを入れる。何回も何回も同じ場所を叩いているのかそこだけがへっこんでいる。


「玲那、大丈夫?また井上くん?」


 隣の個室から心配する声が聞こえる。その声はトイレ独特の反響を響かせ、玲那の元に届く。


「ん、咲美、大丈夫また、翔吾の奴にやられたの」


 つまり下着を見られたと、


 今現在その翔吾は全速力でここに向かっている。


 玲那自身ファション誌で水着の撮影をすることもありある程度慣れているが、


 女子あるある、つまり、水着と下着は違う、馬鹿(男子)は同じ感性で持て囃すが

 女子にとっては全く違うものである。


「玲那、なんでそこまでされてあいつといるわけ?嫌ならゴミにでもすれば、」


 個室に座った咲美はそう助言する。


「わかってるそのぐらい、だけどなんかあいつが好きなの、」


 つまりごしれた関係か、如月はあんな翔吾のことが好きと思っている、だからあんな外道なこともある程度許せる、しかし玲那は芸能人、流石に学校内には入る事はないが下校途中、記者に尾行される事もしばしある。別に事務所自体はそう言うことを禁止はしていない。


「行くところ行けば、名前、貸してあげるから」


「揶揄わないで!」


「ごめんって、だけどそうなっても良いから付き合ってんでしょ?2人とも」


「わかんない」


 玲那はそうボソッと呟く。


「あ〜ぁ、ねぇ、お二人ってどんな関係なの?付き合ってる、でも結婚したくない、遊びたい、でも誘えない、そんな関係だから進まないんじゃないの?見て欲しいからあの馬鹿もあんなゴミみたいなことやってんでしょ?」


「知らない」


「そうですか、まぁ、良いけどズブズブの関係も私の守備範囲だから、ジュル〜」


 美咲は生粋の漫画ファン。それも少女漫画しか読まないある種の中毒症状が出ている。


 漫画脳になっている。漫画的な展開を愛している。しかし自分が主人公になることを夢見るのではなく他人がそう言う事をしているのを眺めているのが好きと言うかなり残念な性格をしている。


 他人のズブズブな関係を見るだけでご飯が進むと本人は過去に語る、他人の幸せ蜜の味、本人はそう断言している。


 見た目だけなら玲那に負けず劣らずだがこの性格のせいで男子どもは寄りつかない、

 男子避けに使っているのか、本物なのか誰にもわからない。


「そろそろ来るよ、あの馬鹿、どうする?、私は帰るけど」


 返事も聞かず、美咲はドアの鍵を開け、帰るふりをする。


「玲那!」


「「『キャゃゃゃゃゃぁぁぁ!!!!!!!!!』」」


 翔吾がドアを開け女子トイレに侵入すると洗面台で化けの皮、いやメイクをしていた女子達が悲鳴を開け、逃げ出す。


 個室にいた女子達も何事と、していることを切り上げ恐る恐る扉を開け、また悲鳴を上げる。


「ギャゃゃゃゃゃ!!!」


 2人を除き女子トイレには人が居なくなる。


(ジュルュジュルュ。また美味しいご飯が食べれる。)


「なに、翔吾、ここ何処かわかっている?」


 玲那の冷たい声がトイレ独特の反響でより冷たく感じられる。


「あぁ。わかっている、でも俺の心はこんな女子トイレだろうと超えてみせる!」


 訳のわからない事を口走り、玲那のいる個室を開けようとするが開くはずもなく、


「玲那、すまなかった、事故だっただから。俺を許してくれ」


 翔吾は冷たいタイルに膝を突き、ドアに頭を当てる。


 その時女子トイレのドアが開き。逆光と共に1人の女性が入っている。


「またか!井上!また女子トイレに入り込んで!出て来い!職員室まで来い!」


 そう言い翔吾は屈強な男性の先生に抱えられ連れ去られた。



「如月、お前も何回同じ事をする気だ、

 はぁ、好きなら好きって言えば良いじゃないか、記者がなんだあんな奴会社の権力で揉み消してやれ、」


「それ、先生が言って良いんですか?」


「良いんだ、私は先生だ記者じゃない、それに、またお前もか田口、また盗み聞きしてるのか、お前がいるところに必ず如月と井上の修羅場かあるな、ある意味疫病神だな」


 如月の隣の個室に息を潜めていた美咲が出てくる。


「先生違いますって私はただ単にお手洗いにいただけでしてそうしたらたまたま2人の修羅場を目撃して、おも、いえ、興味が、その、仲裁役として隠れてました。」


 先生は盛大にため息をつく。


「その言い訳は何回聞いたかな、こないだは木の上から覗いてて、で今日の飯はうまそうか?」


「えぇ、それもかなり美味しくいただけそうです。」


 そう目を光らせる。


「枝豆とビールが飲める合うぞ、それに冷奴つけてなそれだけで1週間の疲れが取れる、安上がりで良いぞ」


「生徒になに勧めてんですか」


「良いんだ、別に強要している訳じゃない3年後こう言うのもあるぞって言っているだけさ、さぁ田口、お前も出ろ、そこで如月が顔を真っ赤に染めて羞恥心に悶え苦しんでるからな、まさに穴があったら入ってコンクリで埋めて完全防音して声を上げたいだろうな」


「そうですね、まぁ、私にはこれがありますからあとも聴けますし、」


 美咲は耳につけたインカムを指差す。


「私はなにも見ていない」

「えぇ、先生そうですね、私たちはなにも知らない見ていない。」


 2人はそう利害を一致させトイレから出ていった。


 田口を教室まで送り届けた先生は1人呟く。


「私はもう1人のバカの説教をしなくては、あいつが女子トイレに入ったのはこれで何回目だ、


 それが青春だな、たった3年、短くも長い濃密で薄い、そして嫌な思い出、青春か、私にとってはまだ6年前だがな、」


 遠い、遠い、遠い、過去のように感じられる。



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