ネット情報の遊び方〜駅とホラーと胎内市〜
2020年の駅ホラー全読み全紹介をその他(その他)で連載しています。駅なので駅名や地名が頻出いたします。架空も実在もたくさん出てきます。ルビの無いものは適当に読んでも良さそうではあります。
しかし折角なので、だいたいは調べて「余談」として調査結果を掲載しております。ネットでざっくり調べるだけなので、たいしたことは書いてませんが。
架空駅名でも、実在駅が存在する/したものもあります。これを調べるとなかなかに面白いのです。地歴クラスタの方はとっくになさってる楽しみ方でしょう。
ですが、趣味の域までいかなくても、ネットだけでけっこう楽しめるのです。このエッセイでは、ネット情報で駅名等を調べた時に苦労したり、ネット特有の曖昧な情報に出会ったりして感じた事の記録です。
なお、明記のないものについては、ネット記事の最終閲覧日は2022/8/21の夕方です。
では、本題に入ります。
駅名の中には、正式な読み方が分からないものもあります。画像はたくさんあるのに、付近自治体の公式ページを初め鉄道関連のページを辿ってもわからない。廃線の情報もかなり見つかるのですが、駅名ルビなしのものも多い。
個人ページですと、誤記や誤認もあり得るので、やはり公式的な証拠が欲しい。
次に頼れるのが、郵便局の郵便番号案内。そこでも独立した番号が振られていない地区がある。国土地理院のホームページで見られる地図でもざっと見ただけでは確認できない。
国土地理院のホームページでは、さまざまな地図が収録されております。中には、「明治期の低湿地データ」なんてものも。ホラー愛好家ならドキドキしちゃいますよね。
でも、目指す駅名の読み方はわからない。資料が多すぎて、すぐに適切なツールが見つからない。そこまで探す気もない。各地の郷土資料館や民俗博物館などに行くほどの熱意もない。時間もない。
自治体に問い合わせれば概ね一発ですが、それもしなくていい。今はコロナ禍で、自治体担当者各位もお忙しいでしょうしね。他人様を煩わせるのは避けたい。思いがけず専門調査が必要になるケースもあり得ますし。クソ忙しいコロナ禍態勢のなか、気まぐれな好奇心で時間を取らせるのは気の毒過ぎます。
日本の地名を調べるツールなら、「角川日本地名大辞典」(全51巻)が最高権威です。図書館なら、「参考図書」「レファレンスブックス」などのコーナーにあるのではないでしょうか。これを確認に行くまでの情熱はないのです。腰悪いのです。重い本書架から取り出すのすらキツい。
書籍版:1978年10月27日~1990年7月18日
新版(大幅改訂版)はDVD-ROM版のみ
DVD-ROM版:2011年10月25日
デジタル版公開日 : 2018年4月1日
残念ながら一般個人利用者が無料閲覧できるツールは、当エッセイ投稿日現在確認できませんでした。デジタル版はとある有名データベースの有料コンテンツです。なろうは商用リンク掲載不可の為、ここでは正確な情報を記載しませんでした。
そんなこんなで、駅ホラー紹介連載では、ネットだけで得た情報を余談としてちょいちょい載せております。2020/8/22日に初回掲載された駅ホラーに、時々話題になる地名が登場したので少し深掘りしてみましたよ。では調査結果と感じたことを書いてみます。
お題は、新潟県胎内市の地名由来について。
ホラー好きが大好きな感じの地名。
民俗のかおりもするけど、どうなんだろう。
駅ホラーに登場したことをきっかけに調べてみました。
興味本位で調べるのは在住者に失礼という考え方もわかります。わかりますけど、デマやネガキャン目的ではないのでご容赦を。
市の名称は、自治体の合併により公募で決定したとのこと。真ん中に流れる胎内川から命名。当エッセイ投稿現在で見つけられた信頼できる情報としては、唯一FNNプライムオンラインが市担当者への取材を掲載しておりました。(2019年8月19日 月曜 午前11:40の記事、2022/8/21 17:27最終閲覧)。記事にある担当者インタビューによれば、記事掲載現在では、市に直接の問い合わせは一件もなかったとのこと。
記事によれば、胎内川の名前由来は、要約しますと「残雪が鯛頭/タイガシラに見えたら田植えすることから」「夏場に干上がり地下に潜る。江戸の絵地図に躰無川/タイナシガワとある」「アイヌ語でタイ、ナイは森、土、沢、川などの意味」の三つの説がある。有力なのは初めのふたつ。とのこと。
「胎内川」の項目について、Wikipediaでは出典を明らかにしてかなり詳しく記述があります。一次資料にあたる時間のある方は、妥当性の照査をしても面白いのではないでしょうか。
Wikipediaの遊び方は、その記述内容の妥当性照査や精査が醍醐味ですね。Wikipediaは、本物の専門家の記述があったとしても、誰でも編集できてしまう。愉快犯が出鱈目に改ざんすることも出来てしまうのがWikipedia。そもそも適当な記述を作成することも可能。そして、それを根拠にウソが出回るのがネット情報。
生命に関わるなどの深刻なウソ以外は、ウソじゃん!おもしれー。と観察するのが正しい遊び方ですね。
意図的なウソの場合は、さまざまな罪に問われるケースがあるようですよ。その場合は、削除してもダメなようす。誤認したなら必ず、元記事を明らかにしてお詫びと訂正を発表しないとですよね。自分の身を守る為にも。
つまり、初めてその項目を調べる場合には、時間のない人が孫引きひ孫引きするのは非常に危険。予備知識のある人が、安全な範囲で紹介するなら大丈夫ですけどもね。
ちゃんと調べるなら、孫引き(引用の引用、一次資料にあたっていない)は、信用のない言及の王道ですよね。
やるなら、分かった上で、わかるようにやりましょう。孫引きだぜ!うろ覚えだぜ!老人の昔語ネタだぜ!信用ならねーぜ!でもこの説面白いよね。てな調子で。
脱線しすぎましたよ。
さてさて。地名、胎内の話に戻って締め括りましょうかね。
現在参照回数上位のネット記事で人気らしいのが、アイヌ語説。これについては、先述の記事に収録された2019年の市担当者インタビューでも触れられております。
この説は、Wikipediaの参考資料では2006年と2014年に疑問視する声が名文化されていたと記録されております。こちらも一次資料に当たっておらず、また、執筆者の来歴も調べておりません。ご参考までに付記致しました。
アイヌ語の地名は、専門家の調査では主に山形県まで、新潟県にも僅かに認められるそうです。新潟県人によると、新潟弁と北海道弁には共通の単語や言い回しも存在するらしく、影響はあるのかもしれませんね。
ネットではこのほかに、2番目の説の由来となった伏流になる季節について、「地下に潜るから母の胎内」という説が散見されました。こちらはいつ何処から言われ始めたのか調べきれませんでした。
2番目の説が一番自然なように見えますが、言葉の変化は思いもよらない形に行き着くこともままあります。いつのまにか言葉が訛って地名が変化するのはよくあることですよね。
しかし、市の担当者が有力とするふたつの説が、ざっと検索した限りでは上記の記事以外で触れられていないのです。胎内市の公式ページにも観光案内にも載っておりません。ネット社会らしくて面白いですね。
ところで、調査のメインテーマ、胎内駅の実在調査。現在の胎内と名の付くなんらかの駅は、日本国内において、新潟県の「道の駅 胎内」だけのようです。地図を見ると近辺の鉄道駅はふたつあり、住所はどちらも新潟県胎内市でした。
中条駅(羽越本線)なかじょうえき
新潟県胎内市表町7-22
平木田駅(羽越本線)ひらきだえき
新潟県胎内市平木田1605
駅名ひとつで広がる世界。言葉の地平を越えて、妄想と虚言の渦巻くネットの海へ繰り出す楽しみがあります。ホラー好きが嬉しくなっちゃうような怪しい単語もそこかしこで見られます。ネット情報自体、オカルトマニアには楽しい陰謀論観察の窓口ですしね。
それでは、皆様も、めくるめく情報の間に間に遊ぶ愉悦をごゆっくりご堪能下さいませ。
くれぐれも闇に足を取られませぬよう。
お読みいただきありがとうございます
このエッセイは、拙作
検索可能な公式夏ホラー作品をひたすら読む
https://ncode.syosetu.com/n6118ht/
の余談が長くなり過ぎましたので独立させたという経緯があります。
直接のきっかけとなった作品はこちら
胎内駅行き
作者:宇奈月
https://ncode.syosetu.com/n4866gl/