クマもどき。
「し、静かにしなきゃ……」
ハァハァと呼吸の音が酷くうるさい。
このままだと気づかれるのではと、瑠奈さんは、ぐるぐる目眩がしました。
けれど、倒れるわけにはいきません。必死に心を落ち着かせようと試みます。
「……! 来た」
紫子さんが呟いた。
ヤツは、もうすぐそこに来ている……!
──ズズ、ズズ、ズ。
「「……っ!」」
音が、ピタリと止まる。
(ま、まさかまさか、ここの住人では……!)
瑠奈さんは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
もしそうなら一巻の終わり。もう、逃げ場がない。
──ガガ、ジジジ、ガガガガガ……
「!」
ラジオのスイッチが入った!
二人は顔を見合わせる。
なんで……! なんで、今!?
──ズズ……ズズズ……
再び、先程の、音がした。
二人は身を強ばらせる。
すると、ラジオの周波数が噛み合った。
──にゃあ!
『にゃあ!』
「「……!!」」
ラジオの音と、リアルの音が交差する。
にゃあ! と言う鳴き声と共に、大きな大きなクマのようにデカい猫がヌゥ……ッと顔を出した。
「「あ」」
ドキドキと目を丸くさせ、二人は唸る。
以前、ここで出会った、あの《クマもどき》。
「……」
紫子さんは大喜び。
瑠奈さんは、どっと座り込む。
大雨の後の地面は、さすがにビチャビチャだった……。
× × × つづく× × ×