校舎。
ザーーーーーッ……
まさかの通り雨に会いました。
──ゴロゴロゴロ、ピシャッ……!!
「きゃあ!!」
二人は叫び声を上げながら、近くの学校に入り込みました。
そこは小さな学校でした。
草がぼうぼう生えていて、荒れ放題です。
雨のせいで辺りは薄暗く、荒れた木造のその学校は、酷く不気味に見えました。
キィーッと何かが軋みます。
いわゆる少子化の煽りを受けて、合併による廃校の憂き目に合った小学校の様でした。
──ザァーーーーー…………。
「「……」」
どうしよう?
雨は止みそうにありません。
それどころか、めちゃくちゃ降っています。
まるでバケツをひっくり返したかのよう……。
これは、雨宿りするしかありません。
二人は肩を寄せあって、学校昇降口の近くの渡り廊下に身を寄せました。
──ピカッ! …………ゴロゴロ、ゴロゴロゴロ……。
「こ、怖い……」
半べそをかいて、紫子さんが瑠奈さんを見ます。
「……」
瑠奈さんはお財布を持っていました。
けれどこれは、《傘を買って帰る》次元を超えています。
このものすごい土砂降りと、雷は、すぐに家に帰る可能性をことごとく押し流してくれました。
どう考えても、この雨の中、外に出るのは危険です。
視界も悪く、足場も悪い。おまけにこの雷では、到底帰ることは叶いません。
……ついでに言えば、スマホ持っていませんから、タクシーも呼べません。だってスマホ、充電切れているんですもの……。
「……すぐに、収まるから」
そう言う瑠奈さんは、震えている。
瑠奈さんは、大の雷嫌い。
まさかこんな目に会うとは、思いもよらなかった……。
──ガガガガ、ザ、ジジジ……
「「……」」
まさかのタイミングで、ラジオがつく。
──ザァーーーーー…………。
雨の音なのか、ラジオのノイズなのか、分からない。
──ガリッガリッガリッ。
──シュ──ッ、シュ──ッ、シュ──ッ……
「「……っ、」」
明らかに、雨の音でもラジオのノイズでもない音が、辺りに不気味に響きます。
二人は思わず顔を見合わせる。
「ゆ、紫子、さん……?」
上擦った声で瑠奈さんは、紫子さんをそっと見あげました。
「ど、どうしよう。どうしよう……」
言葉に出すと、どんどん怖くなる。
──ピカッ! ゴロゴロゴロ!!
「ぎゃあああ……あぁ、怖い、怖いぃぃぃ……」
「……」
遂に音を上げた瑠奈さんは、紫子さんに抱きついた。
「よしよし、よしよし、大丈夫ですよ……」
紫子さんは、優しくその頭を撫でてあげました。
雨はなかなか止みません。
けれど少しずつ、その勢いを弱めているのは確かです。
雷の音も、小さく小さくなりました。
「あ」
紫子さんが小さく小さく叫びます。
ビクッと瑠奈さん。
「ど、どうしたの……?」
恐る恐る尋ねました。
「……」
紫子さんは、一点を見つめて言いました。
「……ううん。なんでもないの。」
「……」
《なんでもない》……それがひどく、不安でたまらない……。
瑠奈さんは、少し震えながら紫子さんをギュッと握り締めました。そしてその腕の中から、そっと外を見たのです。
──ピカッ!
「!」
雷が光りました。
けれど音は、もうしません。
──!
けれど瑠奈さんは、見てしまいました。
渡り廊下のその奥の、離れた校舎の奥深く。
ナタを持った大きな影が、
ゆっくり、こちらを見たのでした……。
× × × つづく× × ×