お届け物。
いやいやそれはないでしょう。……と瑠奈さん。
ううん。確かにここにあったもん。と紫子さん。
オマケに紫子さんは、ラジオの裏を見せてくれた。
──紫子さんへ。
「……」
刃物で引っ掻いたような文字。
瑠奈さんは、青くなる。
これは直ぐに、警察に行きましょう……! と瑠奈さん。
もう、図書館へ……なんて呑気なことは言ってはいられない。
紫子さんは、激しく嫌がって、パッと表に逃げ出した。
「あ!」
問題のラジオを抱えて一目散!
瑠奈さん慌てて追いかける。
全く運動しない紫子さん。
けれど何故だかその逃げ足は、ものすごく速くて捕まらない。
瑠奈さんは、すぐに見失った……。
「はぁ、はぁ、はぁ……ど、どこに行った……?」
すぐに息を切らした瑠奈さんは、近くの公園で休むことにしました。とても喉が乾いたから。
公園は、……けれどあまり人がいない。
みんな、午後の暑さにやられているのでしょう。
こんな暑い日は、公園よりもむしろ、図書館かな……と呟いて、瑠奈さんお水を一口飲みました。
──ジジ……ガガ、ザ……。
「……」
どこかで聞いたような音がしました。
そっと物陰に隠れて、音の方を見てみますと──
紫子さん!!
やっと見つけました!
桃色の優しい色合いのワンピースを着て、ちょこんとベンチに腰掛けています。
暑い真夏の午後だと言うのに、そこだけひんやり、何故だか涼しそう……。
それから手には、例のラジオ。ガガガガ、ジジジ……と電源を入れて、ガリガリ、がりがりとダイヤルを回す。
「もう! 紫子さ──」
《もう! いい加減にしなさいよ》って、怒鳴りつけようとしたその時に、ラジオの周波数が噛み合った。
──サラサラ……サラサラ。リン……リリ、リン……
「……」
涼しそうなその音に、瑠奈さん思わず足を止める。
「あ。瑠奈さん……」
紫子さんが気づいて頭を上げる。
「これはいったい、何の音……?」
可愛らしくそう言って、紫子さんは首を傾げました。
けれど、瑠奈さんは答えられない。
何かの番組ではなさそうだ。
それからラジオのノイズでもありません。
涼し気なその音は、少し興味をそそります。
瑠奈さんはポツリと呟いた。
「いいえ。私にも分かりません──」
セミがうるさい夏の午後、
少しずつ少しずつ、太陽は西に傾き始めている──。
× × × つづく× × ×