プロローグ
暗闇の中、一人の執事の様な服装をした人物にスポットライトが当たる。
「はじめまして皆さん、私は皆さんに話を聞かせたり勧めたりする、『0を意味する言葉』と申します、どうぞ以後お見知り置きを」
ライトの元に照らし出された人物は男とも女ともつかない声色で、話しはじめた。
「さて、皆様は異世界は幾つあるとお思いですか?」
『ゼロ』はこちらに耳をを向けて、そこに手を添え聞く耳を立てるような素振りをした。
「はいはい、皆様わりと答えが分かれましたね……では、正解は………無限?もしくは星の数程?」
ゼロは勿体ぶって少し溜めるとこう答えた。
「答えは『人が想像した数だけ』です」
「……えぇ、意外な答えでしょう?え?そんなもんだろうと思ってた?それは素晴らしい……」
ゼロは暗闇に映し出されたモニターに向かい歩き始めた。
「例えばこんな話を考えた事は有りませんか?『魔法が使えて勇者達が魔王を倒す話』ええ、その世界、存在しますとも、『科学が発達し、宇宙へと人類が旅立ちエイリアンと戦う話』、存在します、『現代人が転生して現代人の時に身につけた知識を使って無双する話』?存在しますとも」
色々なシーンが映し出されているモニターの間をウロウロと歩きながらもゼロは話す事をやめはしなかった。
「この様に誰かが想像……ええ、この場合は創造といった方が適切ですね、創造した話はそれを元として存在するのですよ」
「『そんなメチャクチャな話があるもんか』ですって?まぁ、あるもんなのですから仕方ありませんとも」
「『誰か管理とかしているのか』と?えぇ、勿論」
あくまで冷たく突き放す様な言い方をし、背筋が凍る様な顔で笑いかけるゼロは、左手首に着けている腕時計を見ると先程とは異なる温かみを感じる微笑みをして、こちらを向いた。
「それではお待たせ致しました、最初のお話へと参りましょう」
するとゼロの背後に巨大なモニターが映し出された。
「このお話は、人殺しが人殺しに恋をするお話………」